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お着物Enjoy生活からバレエ・オペラ・宝塚etcの観劇日記に...

第14回世界バレエフェスティバル Aプロ初日・8月6日

2015-08-09 10:26:23 | BALLET
NBSが世界に誇る名企画、「世界バレエフェスティバル」
優劣をつけたり順位を決定したりするものではないが、その世界中から超一流ダンサーを集め、一同に会して踊るというバレエファンなら胸踊るその企画こそ、3年に一度の”バレエのオリンピック”と称される通称”バレフェス”。
第14回の今年もまた、東京文化会館に新たな記憶が刻まれるのだと赴いた初日8月1日14:00公演、そしてAプロ2度目の8月6日18:00公演の感想をさっくりと。



◆第1部◆

■「チャイコフスキー・パ・ド・ドゥ」 振付:ジョージ・バランシン
ヤーナ・サレンコ-スティーヴン・マックレー

オープニングを任されたのは安定のテクニックを誇る小柄で若々しい2人。サレンコは登場するたびに若く、ダンサーとしての品も安定感も向上しているように思えます。
この日もマックレー、シムキン2人のパートナーを務める盤石ぶり。
サーモンピンクの薄物衣装の女性と水色の男性・・が定番なのですが、スティーブンはアイボリー系のお衣装で。その分背景がブル―で、チャイコパワールドからのバレフェス、盛り上がっての開催です。
小柄な2人で思いだされるのは2003年のアリーナ・コジョカルとアンヘル・コレ―ラ。世にも愛らしい容姿のテクニシャン2人が揃ったら(しかもバレエ団違いで共演も多分初めて)いったいどうなってしまうのだろうと期待MAXで観たら、音を早取りするコジョカルが走り気味なのに加えてアンヘルが爆走するように加速度をあげて、最後大きく反った女性の背中を高々とリフトして掃けていく・・・ラストはもうグチャグチャでした(笑)
今回の2人は全くそのようなことはなく、落ち付いて爽やかに余裕さえ感じる出来栄えでした。

■「3つのグノシエンヌ」 振付:ハンス・ファン・マーネン
マリア・アイシュヴァルト-マライン・ラドメーカー

サティのグノシエンヌを生ピアノで。今回バレフェス参加のピアニストはフレデリック・ヴァイセ=クニッテル氏。
バレフェスピアニストといえば、某東バプリンシパルダンサー嫁という暗黒時代もありましたが(ありえないミスタッチの多さで本当にストレスでしたxxx)良い時代になりました。
シンプルなスカート付きレオタードのアイシュヴァルトとレギンス姿のラドメ―カ―がとてつもなく高い身体能力を必要とする振付を静謐な音楽のテンションとリンクするように淡々と(と見える)こなす。音楽と振付の一体感が素晴らしく、ドラマチックヒロインの印象が強いアイシュヴァルトの新しい(いえ、わかっていましたけれど)一面を見られた演目。
Bプロもモダンだとエッとなりますが、Bプロでは「椿姫」が観られるとわかっていてのこういう作品選びは良いですね。

そうそう、8月6日公演で特筆すべきことが!
静謐な音楽に合わせての超絶技巧で2人の男女の関係を描くこの作品、会場が水を打ったように静まり返っている中、軽度の地震があったのです。
ピアノが中断され、2人は並んで揺れがおさまるのを一呼吸待ち、会場は静まり返ったまま、ほんの10秒もなかったかもしれません。おさまったと判断したのはピアノかダンサーか。自然に再開される音楽とダンスにまた会場が引きこまれていき、最後は中断されたことすら忘れさせてしまう集中力、でした

■「お嬢さんとならず者」 振付:コンスタンティン・ボヤルスキー
アシュレイ・ボーダー-イーゴリ・ゼレンスキー

面白い作品。無声映画をバレエの小品に仕立てたという作品で、あの白地に金刺繍の王子衣装をさんざん着てきたノーブルなゼレ様が、モスグレーの半袖シャツにモカ茶のズボンでハンチングのならずものを演じます。
冒頭、大げさな音楽に合わせてのならず者踊りがダイナミック。
そこに通りかかったアメリカの良いところのお嬢さん、ボーダーが思わずベンチの後ろに隠れるも、ならず者に見つかって・・・一目で恋に落ちた彼は強引ながらも紳士的に振舞い、彼女もとまどいつつもペースを取り戻して膝を揃えて坐り彼にお行儀よくするのよ、的に説得して去るまでの一連の流れ。
あのゼレ様が、胸元をバッとはだけてアピールし、お嬢さんが思わずドン引きするところなどコミカルでもあり、大型犬のようにおとなしくお嬢さんの言うことをきくならず者が可愛くもあり。
ボーダーが初日はアメリカンスリーブ気味に内に入ったノースリーブで襟もとのつまったフワッとしたシルエットの黄色いミニワンピで、6日では白い大きめの襟と前立てがスポーティなテニスドレスのような淡いピンクのノ―スリワンピとお衣装を変えての登場。金髪の編み込みヘアと健康的なスタイルと相まって如何にもアメリカのGOOD GIRL風。芝居心もテクニックもある方とお見受けしたので、他の作品でも見てみたいと思ったのですが、Aプロだけのご出演なのですね。

■「白鳥の湖」より"黒鳥のパ・ド・ドゥ" 振付:マリウス・プティパ
タマラ・ロホ-アルバン・レンドルフ

変化球が続いたところに正統派。
背景もロイヤルブルーにシャンデリア。そこに黒に金のチュチュの艶やかなるタマラオディールが得意のフェッテで王子と観客を魅了します。
タマラに選ばれた王子はデンマーク・ロイヤル・バレエのレンドルフ。彼女が芸監を務めるイングリッシュ・ナショナル・バレエに客演しての縁なのですね。
金襴緞子のノ―カラ―ジャケットから伸びる脚はとても立派な太腿とすっとした膝下。パワフルで安定したテクニックを持つダンサーで、タマラのお眼鏡にかなったのも納得の実力派。華やかさには欠けるかも。

■「フェアウェル・ワルツ」 振付:パトリック・ド・バナ
イザベル・ゲラン-マニュエル・ルグリ

フェスの陣容が発表されて一番驚き興奮したのがイザベル・ゲランの出演決定。
ヌレエフ時代のオペラ座全盛期、古典演目のドラマチックヒロインとして君臨したゲラン。。。
その後大カンパニーの芸監、バレエマスター、バレエ学校長と活躍の場を移した同時代のエトワールたちとは異なりその後の活躍が聞こえてこなかった彼女が、まさかの出演。しかもルグリと!
もう、出てきたところから佇まいが変らず、ドラマチックヒロイン、でした。
仕立ての良い白シャツ黒パンツのルグリ先生と黒のロングのスリップドレスのゲランは如何にも大人のイイ男イイ女。そんな2人が織りなす求愛とためらい、抑制と情熱のドラマに、タメ息しかでませんでした。
ふと腕を上げるだけでその腕と手首から指先までと横顔の角度に至るまで、さりげない仕草が美しく、日常的なドラマなのかもしれないのですが、全ての瞬間に「素」が見えない、真にプロフェッショナルなダンサーの成熟し、えも言われぬ香りを醸し出す様を堪能しました。

◆第2部◆

■ 「アザー・ダンス」 振付:ジェローム・ロビンス
アマンディーヌ・アルビッソン-マチュー・ガニオ

ショパンのマズルカとワルツをピアノの生演奏で。音楽にピッタリとあった若い二人の踊りは生の喜びと一抹の哀愁を漂わせる・・・ステキな作品ですが、とても美しいマチュー・ガ二オの淡いグレーの濃淡のお衣装とピッタリ合ったブーツ、そしてしとやかで控え目なアルビッソンがストライプの地模様の入った薄いラベンダーグレーのハイウエストのドレスで合わせる様子を観ながら、なんとも不思議な感覚に陥っていました。
マチューはこんなにバレエに愛された容姿を持っていて高名なダンサーである両親譲りのテクニックもあるのに、どうしてこんなに発散しない芸風なのだろう・・・。
舞台を降りた彼は美しい容姿で笑顔の絶えない華やかなスターなのに、舞台だとなぜか内にこもると言うかなんだか地味に見えてしまうのですよね・・・。アルビッソンも同じ演目を過去のバレフェスで踊ったオレリー・デュポンの艶やかさと時折煌めく生命感がデフォルトになっているので、おとなしい優等生みたいで物足りない・・・。
美しい音楽と美しいダンサーの姿をうち眺めつつ、贅沢を言ってみました^^;

■「マンフレッド」振付ルドルフ・ヌレエフ 音楽チャイコフスキー
マチアス・エイマン

そこでエイマン!実際の容姿の好みで言うと、わたくしはマチュー派なのですが、白い襟元を緩やかにしたぺザントブラウスに淡グレータイツの簡素な姿で、1人激情を炸裂させる姿が・・。
ジャンプ一つに閃光が走る。軽やかさと内から発するエネルギーが共存している。
非常に強い光を放つダンサーであり、やはり彼はモノが違う・・と実感せざるを得ませんでした。
最後床をゴロゴロと転がって・・・までの流れが一瞬のような。
鮮烈な舞台でした。

■「ジゼル」 振付:ジャン・コラーリ/ジュール・ペロー
サラ・ラム-ワディム・ムンタギロフ

うーん、ロイヤルバレエの衣装って昔はなんて趣味の良い!と思っていたのですが、このところ、現代的なアリスとかは素晴らしいのに「眠り」やこの「ジゼル」はちょっとどこかズレているんですよね・・・。
サラ・ラムの金髪耳隠しにワイン系のシャープなチーク、そしてゴージャスに光りもののついたアイボリーベージュのロマンチックチュチュのお衣装が、全体のバランスからすると村娘の精霊に見えない。
どこのハリウッドセレブのレッドカーペットですか?といった風情。なので、「ジゼル」の2幕としては観られませんでした。
ムンタギロフはノーブルな小顔にスラリとした長身の今どき得難い王子的な外見に確かなテクニックを兼ね備えた逸材であると確認できました。

■「ライモンダ」 振付マリウス・プティパ
マリーヤ・アレクサンドロワ-ウラディスラフ・ラントラートフ

白と青の2トーンカラ―のお衣装が金ベースのイメージの強い「ライモンダ」としては珍しい。
酷暑の東京での一服の清涼剤として考えてくれたのかな?などと思うほど、このペアは観客に対するサービス精神が素晴らしい。
マ―シャはラインストーンを編みこんで耳上でリング上にした装飾的なヘアスタイルと鉄壁の笑顔で観客を魅了。
ラントラ―トフさんは冒頭のPDDのみマント付きのお衣装で。勿論お二人とも、軽快で勇壮な、これぞボリショイの姫と王子!な演技を見せてくれました。
アレクサンドロワが大好きなわたくしはもう大喜び(笑)
本当にひまわりのようなバレリーナですね。

◆第3部◆

■失われた純情「いにしえの祭り」 振付:ジョン・ノイマイヤー 音楽:リヒャルト・シュトラウス
シルヴィア・アッツォーニ-アレクサンドル・リアブコ
アンナ・ラウデ―ル、エドウィン・レヴァツォフ

背景にテーブルと黒執事2人。飲み散らかされたシャンパングラスを彼らが静かに片付ける中 前景で、ワインカラ―のロングドレスのラウデ―ルと素肌に直接黒スーツを着た短髪のレヴァツォフが踊る。
レヴァツォフ掃けて、戻ると上着がカ―キのア―ミ―シャツに。
長身の2人が硬質な踊りを見せて掃けると、今度は小柄で熱情的に踊る2人が。
ア―ミ―シャツをボタンを留めずに素肌に着たリアブコと、ホットピンクのドレスにすっぴん風の薄い顔立ちながらその踊りに感情の全てを表出するアッツォー二が圧巻。
第2次大戦出兵前夜という設定の一幕で胸に迫る作品でした。

■「シンデレラ」 振付:フレデリック・アシュトン 音楽:セルゲイ・プロコフィエフ
アリーナ・コジョカル-ヨハン・コボー

小柄でキラキラした笑顔ながらどこかいたいけな風情がただようアリーナは星空のもとつかの間の舞踏会を夢のような気持ちで楽しむシンデレラにピッタリ。コボーはキラキラ王子、ではなく、そんなアリーナをしっかりと支え、影に徹した演技でした。

■「オールド・マン・アンド・ミー」 振付:ハンス・ファン・マーネン
ディアナ・ヴィシニョーワ-ウラジーミル・マラーホフ

ヴィシニョ―ワとマラーホフの長年のパートナーシップによりなんともいえないこのコミカルな作品が選ばれたのでしょう。白シャツ臙脂ベスト黒パンツのマラーホフが冒頓と立っている周りを紫ベルベットロングドレスのヴィシが時に動物のように、時にあだっぽくアピールして回るが彼は無反応。空気がキレてペタンと横たわるヴィシの傍らでマラーホフが空気を入れるジェスチャーをするとその息に合わせて空気人形のように蘇ったり、その逆パターンを見せたり・・の、クスリと笑わせるコミカルな小品。
2人のセンスの良さは堪能できたのですが、今、超絶技巧でどんな作品でも踊れる踊りざかりのヴィシニョ―ワにはちょっと物足りないかも。
Bプロでゴメスと組むのが本番で、これは贅沢な前座と受け取ります^^

■「パリの炎」 振付:ワシリー・ワイノーネン
ヤ―ナ・サレンコ-ダニール・シムキン

白シャツライトグレータイツにトリコロ―ルのカマーバンドのシムキンくんと、白チュチュに斜めがけのリボンと髪飾りをトリコロールにしたサレンコが繰り広げる超絶技巧を見せるガラ・ピース。
既視感ありありではありますが、やはりシムキンくんの540を始めとする体いっぱいに使ったダイナミックで軽やかな跳躍は素晴らしいし、サレンコの安定したフェッテもステキ。
ただ、テクニックは万全、小柄で童顔・・な男性ダンサーが成長に従ってふさわしい作品を踊っていくのって難しいのだなと改めて余計な心配をしてしまいました。

◆第4部◆

■「白鳥の湖」より第2幕アダージオ 振付:マリウス・プティパ
ウリヤーナ・ロパートキナ-ダニーラ・コルスンツェフ

いきなり会場の空気が高原の朝のような白い靄と冷涼な空気に変ったような・・・。
白鳥にして高雅なる姫、姫にして魔法にかけられた白鳥・・という幻想的な世界が当たり前のようにそこに繰り広げられているのをひそやかに息をつめて見守る東京文化会館客席。
異次元空間を一瞬にして作り上げるロパートキナの至芸。

■「トゥギャザー・アローン」 振付:バンジャマン・ミルピエ
オレリー・デュポン-エルヴェ・モロー

とてもとても楽しみしていた、オペラ座アデュー公演にモローの怪我で実現しなかったというこの2人の並び!
なのに・・・。ミルピエ作品の振付はまだしも、お衣装の設定がこの2人には似合わないと思うのですけれども・・・。
白いレーサーバックのタンクトップのオレリーと白Tシャツのエルヴェはふたりともブルージーンズ。
滴るようなゴージャスな美貌が活きない。エルヴェの美丈夫ぶりも・・・。
という不満で悶々としながら観てしまいました。

■「オネーギン」第1幕のパ・ド・ドゥ 振付:ジョン・クランコ
アリシア・アマトリアン-フリーデマン・フォーゲル

第一幕、手紙の場面ですね。都会から来たクールな青年オネーギンに夢中になった田舎の文学少女タチアナの夢に出てきた彼の姿・・・。タチアナが部屋の姿見に自らを映すと、その背後に彼の姿が・・なぜ?すると鏡から彼が飛び出して彼女と激しくPDDを踊る・・という少女の妄想の中の冷たく、でも情熱的なオネーギンはカリスマティックかつドラマティックに踊って男性的な魅力をアピールできる場面。ガラでよく踊られる人妻になったタチアナに再会したオネーギンが求愛する場面は人生経験がにじみ出るような演技が必要だけれど、ここは若いフォーゲルくんでもOKかと思いきや・・。
うーん、なぜ笑顔なのかしら?ニヤニヤしたオネーギンというのがなんとも違和感で、どうも素敵に見えず・・・。
演技プランを見直してほしいと思ってしまいました。
アリシアのタチアナは彼が去り、猛然と恋文を認め始めるラストまで、完璧だったので、勿体ない限りです。

■ドン・キホーテ」 振付:マリウス・プティパ
ヴィエングセイ・ヴァルデス-オシール・グネーオ

バレフェス名物、CUBAのペアによる、見たことのない超絶技巧、あり得ない身体能力の発露に会場大興奮!のコーナーです。
ヴァルデスは2006年のバレフェスでもこの演目を踊っているのですよね。お衣装がかなり強烈で、驚いたことを覚えています。
今回は随分と洗練され、長~いバランスやアティテュ―ドから脚のポジションチェンジをするなど、今回もまたあり得ない!超絶技巧で会場を沸かせました。グネ―オもジュテやフェッテなど自身の見せ場もさることながら、遠く離れた位置にいたヴァルデスが後ろ向きに飛び込み一瞬でフィッシュのポーズにおさまるとか、目がテンになるような美技を繰り出し、フェスのラストを華々しく決めてくれました。

ただ・・・あり得ないことが客席でも起こってしまいました。
8月1日の初日、コ―ダのフェッテをヴァルデスが延々とダブルトリプル取り交ぜて繰り出す中、ノリノリの音楽に合わせて手拍子が・・・。
10列目で見ていたわたくしの前のお席の御婦人も手拍子されていたので、え~、普段バレエを観慣れている観客にはありえないのだけれども・・・。追加席でとったお席だったので、お友達に頼まれてと会員が手配して他の方が座ってらしたゾーンだったのかもしれませんが、かなりショックでした。
音楽が聞こえなくなるし、自分の感覚でバランスを取っているダンサーにとっては迷惑であるというのが周知のはずなのに^^;
8月6日のAプロ最終日に行った時には、配役・演目表の「ドン・キホーテ」のところにご注意が書かれていましたので対応早い!と思いましたが^^;

フィナーレ、踊り終えたダンサーが次々とセンターに走り込んで登場、拍手を浴び、全出演ダンサーが舞台いっぱいに広がる・・この場面、どれだけのスターダンサーがこのフェスに出演しているのか一望できて、本当に感動します。
Bプロ、ガラも楽しみです





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