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お着物Enjoy生活からバレエ・オペラ・宝塚etcの観劇日記に...

庭園美術館で「ティファニー展」

2007-11-11 11:41:38 | ART
11月10日の土曜日は昨夜からの雨が降り続き、お着物での集いにはどうかしら・・・と気をもんでいたのですが、展覧会鑑賞には良い日和となりました。

目黒の庭園美術館で、10月6日に始まった「世界を魅了したティファニー The Jewels of TIFFANY  1837-2007」展。
連日大盛況・・・と聞いていましたので、キモノで人ごみか・・と気にしていたのですが、この日は大雨とあって客足が伸びず、静かな朝香宮邸で、美しい宝飾品で眼を楽しませることが出来ました。



まずこの展覧会の代表作、「バード・オン・ザ・ロック」
女性の胸元を飾ったのはわずか2回のみ。ティファニーダイヤで知られる巨大なダイヤモンドを可憐な意匠で見せる美しいブローチです。

今回はティファニー社の作品のレトロスペクティブで、アーカイブスからその時代時代を代表する作品を時代別に見せていく趣向で大変わかりやすく、また興味深い展示でした。



実際にリンカーン大統領夫人が身につけたというセットは当時の大きく刳られた襟元にネックレス、その下のドレスの衿の縁のセンターにブローチ、というつけ方がされていたことがわかります。
リンカーン夫人の質素なスタイルにマッチする、ケシパールだけを使ってシンプルにまとめたデザインがこの時代のアメリカと夫人の人柄を偲ばせます。



対照的に非常に華麗なこの衿飾りは、
ドレスの胴着の上につけるもので、華やかな雰囲気の世紀末ならではのファッションアイテム。
とても美しい淡いピンクのコンク・パールがプラチナ台のダイヤモンドで清楚な美しさを見せているもので、センターのパールはとりはずしてペンダントトップとしても使える仕様。



ヨーロッパでの流行よりいち早く取り入れられていたジャポニズムの影響を感じさせる、小物類や、万博に出品して賞を取ったという虹色のガラスを使った香水ビンなど、その時代時代の雰囲気を敏感に感じ取った作品群も。
宝飾品の枠にとどまらず、傘の柄、シガレットケース、などの工芸品的な小物類にも美意識を行き渡らせ、ラリックを招いたり、デザイナーの起用も大胆に行うなど企業としてセンスを感じさせる当時のティファニーからは、わたくしたちの世代で実感する、エルサ・ペレッティの大ヒット作「オープンハート」のネックレスでブランドイメージを維持しながらも大衆化に成功した現在のティファニーの姿を予感させて・・・。



時代別、デザイナー毎に展開される個性豊かな世界は、いずれティファニースタイルとして、確立していく・・・。それはヨーロッパを常に意識しながらも、文化的に新興国であるアメリカが模索していた文化の変遷、ジュエリー界における大きな世界的な流れを通奏低音としてふんだんに提供された作品群を見ながら堪能できる、贅沢な時間です。

12月16日まで。
大変混み合う展示だそうですので、是非、雨の日など、日をお選びになってなるべくゆっくりとご覧になれるタイミングでいらっしゃることをお奨めします。


村上三島展とPONIA

2007-11-05 05:15:57 | ART
11月4日日曜日、日本橋高島屋で6日まで開催中の、
20世紀書壇の巨匠「村上三島展」に行って参りました。



ご紹介の作品は1987年「高靑邱詩」

大正元年1912年に生まれ2005年にお亡くなりになるまで、
明清時代の文人、王鐸の連綿草書体に傾倒、古典の各書体を極めた上で、晩年は仮名交じりの読める書、「調和体」を提唱するなど、古典に立脚した端正な独自の書を確立。
初期から晩年に至るまでの氏の作品の全容が展示されています。

皇太子ご成婚を記念して書かれた非常に調和のとれた書、「飛翔」から始まり、
1952年日展特選を取られた2x8作品の陸放翁詩「曉歎」4曲屏風などの大作まで充実の内容です。
ちなみにこの特選作品を書くために、2ヶ月で3000枚を書かれたそう・・・。
大作は、奥様が端を引っ張りながらの二人三脚の作業で、その製作風景やご本人へのインタビューなど、書家の創作のエッセンスに迫る9分のドキュメンタリーも会場で見られます。

愛用の筆を初めとする道具の展示なども・・・。
また、初孫を得た喜びをご自身の言葉で綴られた作品や語録など、お人柄が滲み出るような心温まる作品もあり、興味深く拝見しました。

この展覧会には、MINXお着物部でお世話になっています宮本さんからご紹介いただきました「西洋美術史講座」で講師を務めてくださっている美術史研究家の佐藤よりこ先生のお父様でいらっしゃるということで、ご招待いただいてお伺いいたしました。
佐藤先生には会場でご挨拶させていただけましたが、改めてこの場でも御礼を申し上げたいと思います。

さて、その後・・・。
夏着物のお直しをお願いしにうかがったときに出会ったアルルカン柄(?)のお召しのお直しを取りに、根津のPonia-Ponへ。
オリジナルのコートを用意されているという情報をmiwaさんからいただいていたので、まずはコートチェック。ちょっと1960年代の昭和レトロをコクーンシルエットに仕立てた感じでとても好み。
柄は水玉3色、ピンク系のチェック、黒のフェルト地にブルー系の薔薇の毛糸刺繍のような素材、赤白のモヘアっぽい毛足の長い生地の6種。うち、黒白の水玉、ピンクチェック、黒地に青薔薇の3枚が気になっています・・・
着丈のあるキモノがありますよ、とお奨めされたのが、白地にミントブルーと薄茶のストライプの袷。着てみるとピッタリ。あわせる帯は・・とご提案いただいた淡いブルー地にはんなりライトピーチの牡丹が咲き乱れる、部分使いの刺繍がツボだった丸帯に一目惚れ。
ん?このキモノと帯って10日のTiffany展にピッタリでは・・・?と閃き、ともに即決。
3点連れて帰ることに相成りました。
何事もなければ、10日の会のあと、ご紹介できる・・・はず
その前に丸帯で2重太鼓の練習をしておかなくては・・




ミッシャ・マイスキー バッハ無伴奏全曲演奏

2007-11-02 04:26:05 | MUSIC
昨夜、11月1日、木曜日、19:00開演。
東京OPERA CITYコンサートホールにて、20世紀の3大チェリストの一人と言われる、ミッシャ・マイスキーの60歳記念プロジェクト、2夜完結の企画「バッハ無伴奏組曲 全曲演奏」の第一夜に行って参りました。



J.S.Bach
無伴奏チェロ組曲第1番 ト長調 BWV1007
Suite for Solo Violoncello No.1 in G major,BWV1009
無伴奏チェロ組曲第4番 ホ長調 BWV1010
―intermission―
無伴奏チェロ組曲第5番 ハ短調BWV1011
 
アンコール曲
・無伴奏チェロ組曲第3番 ブーレ
・無伴奏チェロ組曲第2番 サラバンド

Mischa Maisky

ラトビア出身のユダヤ人、叙情的で深い人間の肉声をそのまま音色にしたような独特の演奏と雰囲気のある風貌、アルゲリッチとの競演でも知られる名チェリスト。
伝説のチェリスト、ロストロポーヴィチとピアティゴルスキーに師事した唯一のチェリストである彼自身、伝説のチェリストへの道をあゆんでいるとも言えましょう。

この日、19:00から、ということで余裕を持って到着できると思っていた初台のオペラシティ、帰り際に発生した仕事上のトラブル処理でやや余裕がなくなってきたところに都営新宿線の人身事故によるダイヤの乱れで、初台着が19:00!改札からオペラシティ3Fのコンサートホールまで文字通り駆け抜けてギリギリ着席とともにマイスキー登場・・・という綱渡りを演じて息も絶え絶えのわたくし。
第一音から、別世界に連れて行かれました。

チェロの音色そのものの響きがこんなにも美しいなんて・・。
深山の峡谷から立ち上る霧の彼方から吹く風のような香気を孕んだ音色は爽やかで陰影に富み、軽やかに歌うようでいて深いメランコリーも感じさせ、テンポも自在。

人間の肉声にもっとも近い楽器といわれるチェロを語るかのように奏でる姿は前半はアイボリーベージュの光沢のある細やかなプリーツの素材で作られたルパシカのようなチュニック、後半は身体につかず離れずのスキッパータイプの衿の墨黒のマットサテンのプルオーバー(ともにイッセイミヤケと思われる・・・)に豊かな白髪が映えるステージ姿も、1974年にファンから贈られ以降愛用の艶やかな1720年製のモンタニアーナのチェロに似合って眼福。

高い天井から空がオブジェの隙間から漏れ見える構造のコンサートホールと、舞台に置かれた金色のヴァイオリンをかたどった背もたれの椅子がリリカルな舞台そのものも、シンプルながら美しく、心地よい時空を堪能した夜でした。