第13回世界バレエフェスティバル <プログラムA>
8月5日(日)15:00開演 会場:東京文化会館
観た上での感想を少しずつ・・・・
■第1部■ 15:00~15:45
★「スターズ・アンド・ストライプス」
振付:ジョージ・バランシン/音楽:ジョン・フィリップ・スーザ
ヤーナ・サレンコ ダニール・シムキン
いやいや、可愛くて、そして頼りになるペアですね!
見た目は永遠の14歳、シムキンくん、前回のフェスで超絶技巧の天才少年として大ブレイクしましたが、今回はそれに加えて度胸のすわった役者っぷりも見せてくれました。
カーテンコールでもおもちゃの兵隊さんっぽく敬礼してくれたり、技を決めてのどや顔もチャーミング。
11月に予定されている彼の座長公演「ダニール・シムキンの全て」の良いプロモーションになったのでは^^?
サレンコは、前回の赤毛のイメージが強いのですが、今回はシムキンくんと似たト―ンの黄色っぽい金髪に。
並みいるインターナショナルスター、各バレエ団の名花たちと比べるとやや地味ではありますが、地に足のついた誠実な踊りとしっかりとしたテクニックが観ていて心地よいダンサーではあります。
2人とも空中姿勢が完璧でした
★「モペイ」
振付:マルコ・ゲッケ/音楽:C.P.E. バッハ
フリーデマン・フォーゲル
急遽追加された理由は何でしょう?
わかりませんが、嬉しい御配慮
舞台袖からセンターに、前を向いたり後ろ姿だったり、平行移動で出入りするたびに、手足を痙攣させたり、顔をはたき続けたりのどことなくコミカルな動きを取り入れた振りが付き、暗めの照明がむき出しの上半身の美しい逆3角形を引き立てて。バッハの軽快な音楽とピタリとハマったムーブメントが心地よい。
ダンサーらしい引き締まった肉体と甘めの顔立ちのフォーゲルくんの持ち味であるオフビートな感覚が活かされていますね。
★「幻想~『白鳥の湖』のように」より第1幕のパ・ド・ドゥ
振付:ジョン・ノイマイヤー/音楽:ピョートル・I.チャイコフスキー
エレーヌ・ブシェ ティアゴ・ボァディン
ハンブルグバレエのお家芸、ドラマチックな演目。ノイマイヤー版「白鳥の湖」は狂王ル―ドヴィヒが主役。
ボァディンはリアルにル―ドヴィヒ。色濃く彼の苦悩を表現。
ブシェは派手さはありませんが、リアリティと大人の情感に溢れていました。
★「ドリーブ組曲」
振付:ジョゼ・マルティネス/音楽:レオ・ドリーブ
上野水香 マシュー・ゴールディング
この衣装は、アニエス・ルテステュデザインのパリオペ版ですね。
男性の衣装は大きな白い襟が特色的ですぐにわかりましたが、女性のビスチェの胸元の紫のヴェルベットとスカートのシフォンの重なりの加減が、ちょっと違うような気がしたり・・・。
着る人によってイメージが変わる、ということでしょうか。
ゴールディングは昨年2度東バに客演していて、上野さんとはもうお馴染み。
わたくしは初見でしたが、しなやかな粘りと安定感は素晴らしいと思いました。
オランダ国立バレエ・・・とはマイナーですが、カナダ出身、ABT~マドリッドのコレ―ラ・バレエという経歴なのですね。高品質なダンサーです。
上野さんは・・・初めて出演されたときのドキドキ感を思えば立派になられて・・という感じ。
最初のPDDの最後で、ちょっと後ろにぐらついて心配しましたが、その後は立て直されていました。
<休憩15分>ロビーでは、バレフェスGOODSコーナーが賑わっていました。
あまり可愛くないかも?ですが(コラ)
■第2部■ 16:00~16:45
★「扉は必ず...」
振付:イリ・キリアン/音楽:ダーク・ハウブリッヒ(クープランの「プレリュード」に基づく)
オレリー・デュポン マニュエル・ルグリ
前々回のバレフェスの話題作。
信号音の中に時折ハープシコードのような旋律が挿入される。
フラゴナールの絵画(『閂』)そっくりの冒頭から、スローモーションのような一連の動きが男女の関係性を表現?
一度、冒頭のポーズに戻ってからの後半は信号音にノイズが混じり、振りも、花束を無愛想に投げあったり、乱調風に。
オレリーは艶やかな美貌がサテンドレスに映えて、クラシックも似合うコンテダンサーとしてのクォリティを兼ね備えた充実のオペラ座エトワールっぷり。
ルグリは 顔にこそ年齢相応の大人の男性の歴史が刻まれているが、ダンサーとしての肉体と精緻なサポート力に衰えは全く感じられない。
最後椅子を持ち出して並んでかけて、青いリンゴを一口齧っては、顔を見ずに渡し合う。
キリアンならではのミステリアスで感覚的な一幕。
客席にフレッシュな青リンゴの清冽な香りが流れてきた・・・ような気がしました。
ルディエールのあとのルグリの相手役として抜擢されたばかりのころのオレリーから、今まで、2人がともにそれぞれどれほどバレエ界にとって大きな存在になってきたかを複雑な振りの中で一瞬の迷いもない息の合ったムーブメントに技術を完全に忘れさせるほどの表現力とともにしみじみと思い起こさせる完成度の高い一幕。
堪能しました。
★「海賊」
振付:マリウス・プティパ/音楽:リッカルド・ドリゴ
ポリーナ・セミオノワ イーゴリ・ゼレンスキ
ロシア正統派王子として長年名を馳せてきたゼレンスキーは、なんと、今回がバレフェス初登場。
全盛期は90年代からの15年くらいでしょうか。
2006年からはノヴォシビルスク・バレエの芸術監督、昨年からモスクワ音楽劇場バレエの芸監を兼任されているとか・・・。
の割には、出てきた瞬間、凄い現役感!
「海賊」のアリなので上半身をさらしたお姿で、ターコイズブルーがまぶしいハーレムパンツ姿に規視観が・・・。
きれいな身体のラインをなんと保っていたばかりか、オーソドックスで大きな踊りもそのままで・・・。
しかし、彼がアリってありなんですかね?(洒落に非ず^^;)
最小限の演技しかしない、真っすぐな踊りを旨とする芸風のお方なので、散々大根(失礼)・・とか反面ノーブルとか言われ続けてきた彼のアリは、やっぱり生粋の奴隷には見えませんでした。
奴隷コスプレで今宵の仮装舞踏会に出てみました~的な王様のお戯れ?
可憐で小顔の長身ポーリーナちゃんのメドゥ―ラをエスコートする紳士でした。
ポーリーナちゃんは、胸元がVにウエストまで切れ込んだシンプルなデザインの水色のクラシックチュチュに小さなティアラの清楚な姫。
ポーリーナちゃんについては後で語るとして、ゼレンスキーの美しい踊りに今でも現役大丈夫じゃない?と思った矢先、ソロの始め、マネージュに入る前の2回転ジャンプ連続の初っ端で軸がかすかにズレ・・・マネージュもいつものダイナミズムが突出しないまとまった感じで。
さすがに真夏の4日連続公演の最終日ともなるとお疲れもあったのかもしれませんね。
若い姫をエスコートするゼレ様をバレフェスで観られた、という喜び、がフェスらしい祝祭感があって良かったです。
★「セレナータ」
振付:マウロ・ビゴンゼッティ/音楽:アメリゴ・シエルヴォ
ナターリヤ・オシポワ イワン・ワシーリエフ
超絶技巧を誇る、ロシア随一の体育系カップル・・・が選んだ演目は・・・。
ビゴンゼッティが彼らのために作ったという、宛書き作品。
もともとワイルドな風貌のワシ―リエフが、醒めたオレンジのヘンリーネックシャツに焦げ茶のタックパンツという労働者階級っぽさの漂うガッチリとしたお姿で舞台中央に仁王立ち。
そこに絡む、黒髪をラフにお団子にした黒いミニスリップドレスのオシポワと2人、ヒリヒリするような朴訥で情熱的な愛の姿を超人的なリフトを交えながら踊ります。
・・・ただの曲芸師に非ず、表現者としての自分たちも観てくださいね、アピールでしょうか。
なんだかスラブっぽい粗っぽさと素朴な情熱が前後の洗練されたロシアバレエの狭間にあって完全に浮いていましたが^^;、2人の個性が強烈に感じられました!
★「瀕死の白鳥」
振付:ミハイル・フォーキン/音楽:カミーユ・サン=サーンス
ウリヤーナ・ロパートキナ
きゃー
ロパートキナ様、降臨!!(←ファン)
多分、ボリショイはNBS、マリインスキーはJapanArts,レニングラード国立バレエは光藍社、という暗黙の住み分けがなされていたせいでしょうか、マリインスキーの女神、ロパートキナ様も、バレフェス初登場!
・・・で、何を踊られるのかと期待しましたが、思いっきり王道の「瀕死」を持ってきましたね。
白鳥といえばロパートキナにとどめを刺す、と思っているので、悪くない選択だとは思いますが。
・・・それにしても、美しい。
白鳥そのもの、それも、ルードヴィヒが、チャイコフスキーが、サンサーンスが、イメージとして神格化し、高みに登らせて象徴化した、芸術作品のなかにしか存在しえない”白鳥”なのですよね・・・。
品格漂う白鳥のヘッドドレスと白いチュチュ。
これぞバレエの美の権化。と、作品の表出だけでも美しいのにロパートキナ様のロパートキナ様である所以は、そのステージマナーにもあり・・・。
共演のチェロとハープのソリストの女性お二人に、王様に対するような最上級のレヴェランスを。
カーテンコールでも左右にお二人に並んでいただいて、それぞれに、美しく称えるポーズを・・・。
今回、カーテンコ―ルが3回だったのは、彼女だけですね。
別格感とオーラが凄かったです。
11月のマリインスキー公演のよいプロモーションになりましたねって、JapanArtsさんですが^^;
NBSの度量の広さに感謝します!
<休憩15分>
■第3部■ 17:00~17:55
★「ロミオとジュリエット」より第1幕のパ・ド・ドゥ
振付:ジョン・クランコ/音楽:セルゲイ・プロコフィエフ
マリア・アイシュヴァルト マライン・ラドメーカー
クランコ版のバルコニーのPDD.
金髪で少年のようなお顔立ちのラドメーカーはリアル・ロミオ。
白いふんわりとしたお袖だけの様なシャツと白タイツで、マントをなびかせ登場。
ジュリエットを観て走り寄る様も、青年の一心な恋心、という感じで素直なロミオです。
対するベテラン、アイシュバルトのジュリエットは・・・一回り小さくて華奢で小顔。大きな瞳を見開いてはいますが、ほぼ無表情で、所謂恋に恋する乙女ジュリエット・・・とはちょっと違ったアプローチ。
エキゾチックな美貌とほんのりさした赤口紅。シュツットガルドのジュリエット衣装は、ハイウエストの胸元に赤いリボンが垂らされ、素材も裾と胸元に金糸のビーズ刺繍が施されたオフホワイト~ベージュ系なので、ちょっと異国の姫風味。大事に扱わないと壊れてしまう金細工のよう。
この2人のロミジュリは、可愛い真っ白な大型犬と、高貴な瞳のシャム猫の恋のようでした^^;
アイシュバルトの凄さは、ともに踊り出してから・・・素晴らしいまっすぐな脚が難易度の高いリフトの連続の中で屹立し、クールな姫の自分でも気づいていない情熱が突然ほとばしる感じで・・・圧巻。
別れを切り出すのはジュリエット。
もう、もどらなくては・・・。
もう、これではロミオは命をかけて、この恋に突き進むしかありませんね^^
ちょっと珍しい味わいの、でも説得力のあるバルコニー・シーン、でした。
★「ジュエルズ」より"ダイヤモンド"
振付:ジョージ・バランシン/音楽:ピョートル・I.チャイコフスキー
アニエス・ルテステュ ジョゼ・マルティネス
あぁ、オペラ座の華!
長年当たり前のように、バレフェスではもちろん、観続けてきたこの2人。
長身で美しいカップルで、クラシック作品からちょっとチャーミングなコンテンポラリーまで、ほっそりとした柳のような黒髪のジョゼ、女優かTOPモデルのようなクラッシ―な陰りのある美貌がゴージャスな金髪のアニエス。
大好きな2人でしたが、ジョゼがオペラ座エトワールを勇退したのは一年前。
今はもう母国スペインでスペイン・国立・ダンスカンパニーの芸術監督。
Aプロだけのカップル復活なので、今日が本当のFINALなんですよね・・・。
音感の素晴らしいアニエスにバランシン作品はピッタリ。
上半身にラインストーンを散りばめたオフ白地、チュチュとタイツは白、というゴージャスなクラシック衣装で、青空に白い雲が小さくたなびく背景を背に、チャイコフスキーの交響曲第3番のちょっと憂愁を湛えた音楽が流れる中、2人が踊るバランシン・・・。
ジョゼは全く現役の頃と変わらず、優しい眼差しでアニエスを支え、クール・ビューティ、アニエスが時折見かわす眼の表情をオペラで追っているうちに、うっかり涙で視界がぼやけそうになりました;;
ずっと観てきた2人の、素晴らしい共演。多分最後。
しっかりと見届けなくては、と気持ちを立て直して。
東フィルの演奏が(特に管!)素晴らしく、音楽にも酔いました。
★「ディスタント・クライズ」
振付:エドワード・リャン/音楽:トマゾ・アルビノーニ
スヴェトラーナ・ザハロワ アンドレイ・メルクーリエフ
先の演目で感情が高ぶって疲れたのか、ここはあまり集中できませんでした。
彼らのせいではありません。
ザハロワは美しくなだらかな身体のラインを活かす、シンプルなライトグレーの短いレオタードドレスで、完全なサポート振りが頼もしいメルクリエフの流麗な踊りも相まって、心地よいコンテンポラリー作品でした。
★「パガニーニ」
振付:マルセロ・ゴメス/音楽:ニコロ・パガニーニ
マルセロ・ゴメス
ヴァイオリニストとダンサーの掛け合いのような小品。
ノリノリで掛け合うヴァイオリンのフレーズに呼応して、ジャズのインプロビゼーションのように踊りで音楽に応えるゴメス。
登場時から、そのスポーツ選手のような長身でたくましい肉体美と黒髪で精悍な顔立ちにざわめく客席。
今回のAプロ最終日、日曜日だったせいか、バレエ初心者の方も多かったような・・・。
ダンサーに対するリスペクトが多少なりともあれば、言えないような表現で感想を述べ合う声も幕間にちらほら・・・^^;
そういった方々も含め、客席の受けは非常に良かった演目でした。
カーテンコールまでずっと、ヴァイオリニストの方と、肩を組んでいたゴメスが微笑ましかったです^^
★「ラ・シルフィード」第2幕より
振付:ヨハン・コボー オーギュスト・ブルノンヴィルに基づく/音楽:ヘルマン・S.レーヴェンスヨルド
タマラ・ロホ スティーヴン・マックレー
タマラでシルフィード?と思いましたが、これはスティーヴンの技量をいかんなく見せるための彼女の配慮、でしょうか?
勿論、軽々とブルノンヴィル版の脚技を決めてみせるマックレーの素晴らしさを堪能出来ましたし、
スコットランドの森の中の場面を多層になった背景でGALA公演なのに作り込んできた主宰者側のこの作品に対する手厚いリスペクトにもさすがと思ったのですが、なんといっても、誘惑のシルフィードとそれをイギリス人らしく飄々といなしながらも、でも彼女に惹かれて行く・・・という2人の呼吸に感心しきり!でした。
タマラのシルフィードはただのいたずら好きの無邪気な妖精ではなく、切なげに眉をひそめて見つめてみたり、さりげなくボディタッチしたり。そしてスルリと手から抜ける・・・ちょっとどこの小悪魔?!と突っ込みたくなるような(笑)人間味溢れたCUTEなシルフィードでした。もちろんバランスや回転の素晴らしさは持ち味ではありますが、それ以上に彼女の演技者としての優れた資質を再確認。
ロイヤルバレエ団代表らしい演目・・・というサービス精神もいいですね!
<休憩15分>このあたりで、もう、お腹一杯胸いっぱい・・・となるのですが、最後に超弩級のベテランスターを固めているのが、バレフェスクォリティですね!観る方も頑張らなくては!!です。
■第4部■ 18:10~19:10
★「ブレルとバルバラ」
振付:モーリス・ベジャール/音楽:ジャック・ブレル、バルバラ
エリザベット・ロス ジル・ロマン
最高のベジャール・ダンサーによる「ブレルとバルバラ」
2001年初演を務めた2人です。この作品を他の人が踊ったのは見たことがないので、2人のための作品、なのでしょうか。
いつも最初の抜粋だけで、この作品をフルで観たのは初めてかも?
赤毛サイドパーツショートボブに黒いロングのスリップドレスのエリザベット・ロスは、
いつものショー・ダンサー的な圧倒的な華やかさ、が影をひそめ、素の彼女から感じられる柔らかな優しさが滲みでるような踊りでした。
後半では白い表に黒い裏の打ちかけのようなものを羽織ってスリ足で動くのですね。
ベジャールさんの日本趣味と、日本公演(特に今回のバレフェスは震災復興チャリティも含めていますから)への思いが伝わる演目選びかと。
ジル・ロマンは・・・あるときを境に年を取ることをやめたのかと。
ある意味柔らかな円熟と悲しみをまとったロスとは異なり、ジルの彼特有のムーブメントは本当に変わらず・・・。
ジル・ロマンもバレフェス常連で、コピエテルスとの共演など、数々の名演が瞼に浮かびますが、今回はAプロだけの出演というのが寂しいです。
★「明るい小川」よりパ・ド・ドゥ
振付:アレクセイ・ラトマンスキー/音楽:ドミートリイ・ショスタコーヴィチ
アリーナ・コジョカル ヨハン・コボ
「明るい小川」といえば、ボリショイ、それもマリア・アレクサンドロ―ワとセルゲイ・フィーリンの名演でFIXされているので、他の人が踊る、というのが想像できない・・・と思っていたら、CUTEな黒白のワンピースにお揃いのヘッドドレスのコジョカルと、白シャツ黒パンツの飾り気ない姿ながら、堅実なテクニックを隙なくみせるコボーの2人の美質をしっかりとアピールできるナイス・チョイス、2人に似合った演目でした。
一応ロシアのコルホーズ(ソ連時代の集団農場)が舞台なのですが、コボーは農民っぽさ皆無でしたね(笑)
軽快で、最後2人シンクロして爆転も挿入されてのスピーディなラストで、ふと、コジョカルのローザンヌの演目「三銃士」(クロード・ド・ヴォルピアンさんが、こんな安手のキャバレーの出し物のようなものを踊らされて、この子が気の毒です!と激高していらした・・・)が思い出されました^^;
ショスタコーヴィチが好きなのか?、東フィルの演奏がこれまた良かったです。
★「カンタータ」 (世界初演)
振付:ナチョ・ドゥアト/音楽:ヨハン・セパスティアン・バッハ
ディアナ・ヴィシニョーワ ウラジーミル・マラーホフ
ヴィシニョ―ワさまが美しい・・・。
センターパーツの黒髪をスリークなシニヨンにまとめ、上半身がトランスペアレントと市松になった首の詰まったレオタードと揃いの透け感のある黒タイツ。
対するマラーホフは黒いノ―スリTとショートパンツでこれまたシンプル・・・なのですが。
芸術監督としてのキャリアはウィーン、ベルリンと長くはありますが、つい先日も自らも踊りつつで、カンパニー選抜隊を率いて公演していたような・・・気がするのですが。
来年、ファイナルと銘打って、「マラーホフの贈り物」公演も予定されていますが?!
一瞬我が目を疑うお姿にビックリ。
なんだか胴周りがしっかりされているような。
ただ、今までは、ほっそりとしたマラーホフが生命感溢れるヴィシにエネルギーを吸い取られているような印象がぬぐえなかったのに、今回は、いつものようにサポートに徹しつつも、安定感があったのは、意識しての作戦だったとか?
あ、せっかくの世界初演なのに、作品そのものに対する感想がなくてスミマセン^^;
★「オネーギン」より第1幕のパ・ド・ドゥ
振付:ジョン・クランコ/音楽:ピョートル・I.チャイコフスキー
ポリーナ・セミオノワ フリーデマン・フォーゲル
レンスキー役者のフォーゲルくんによるオネーギン。
え、まだ早いのでは?と思いましたが、彼も若いとはいえダンサーとしては円熟してきた頃。
こういう手応えのある大作に挑みたいお年頃なのかも、ですね。
クランコ作品をレパートリーとするシュツットガルトにいれば、それは挑戦したくもなりますよね~。
しかし、オネーギンと言えばあのルグリ先生ですら、オペラ座エトワール引退が見えてきた頃にようやく、踊ってみたいと手がけた作品なのに・・・。
まぁ、今回踊るのはタチアナもオネーギンもまだ若いときの「手紙のPDD」ですから、まだ大丈夫かも。
ポリーナちゃんがお部屋の机で手紙をしたため、時折ウットリしています。
小さなお顔、スラリとした筋肉質の四肢でうっかり忘れそうになるのですが、こういう衣装だと そういえば、案外バレリーナには珍しいナイス・バディだった☆と思い出しますね。
胸下で一度絞ったゆったりとした白いお部屋着。ちょっと身体だけボリューミーに見えるし気になるので変えてあげてほしいかも?
それに青白い文学少女というには、白い歯で爽やかに微笑むテニスコートの恋がリアルに似合いそうな美少女なので、勘違いさん、と振られるような気がしないですし、色々な意味でタチアナっぽくないなぁ・・・と
思っていたら、鏡の向こうからオネーギン登場!
勿論彼女の夢の中・・・なのですが、このフォーゲル君、いつもなら爽やかな笑顔が長めのモミあげの撫でつけた髪の効果か、黒シャツ黒ベスト黒タイツのコスチュームが怪しいのか、なんだかホントにアブナイ感じのちょっとナルシーなオネーギンでした。
この役のインテリ風のイヤミな感じもそこはかとなく感じられて、意外とピッタリかも??
難易度の高いリフト連続の振りも、身長バランス、踊りの感覚が合うと常々言っている2人だけあって息がピッタリ。
・・・しかし、このPDDのあと、また鏡の向こうに消えたオネーギンに当てて手紙を書き上げ、胸に当てて明日が待ちきれない風情のポーリーナちゃんを観ていると、この恋があっさり成就してしまいそうな気が・・・してなりません^^;
鏡に映ったタチアナを上野水香ちゃんが演じていたのがさりげなく贅沢でした^^
★「ドン・キホーテ」
振付:マリウス・プティパ/音楽:レオン・ミンクス
オレシア・ノヴィコワ レオニード・サラファーノフ
オオトリを務めるのは、マリインスキーの王子から、脱皮を図って?ドゥアト作品をレパートリーとするミハイロフスキーバレエに移籍したのは一年半前。
マリインスキー公演に帯同しない、ということは日本で観られる機会が激減?と本人に聞いたら、すぐに東バへの客演が決まっているから、HPを観て!と意外なPR上手さん。
さて、今宵は・・・。
彼はちょっと顔全体でのおでこの比率が高いので、笑顔がチャーミングな割にハンサム、という感じがないのですが(失礼)、踊るとロシア・バレエの王子らしさがにじみ出て、持ち前の爽やかさと相まって大変観ていて気持ちの良いダンサー。
その上品な持ち味が災いして(?)バレフェスのトリを飾る歴代のバジルで観客の度肝を抜くような大技を繰り出してきた先達と比べるとやや大人しめ?
最後の方で、トゥールザンレ―ルとダブルのピルエットを切れ目なく(4連続?凄かった!)繰り出してきたときには流石におぉ~となりましたが。
マリインスキーのノヴィコワは、黒髪でバランスの良い肢体の可愛らしいダンサー。
赤いふんわりとした衣装が良くお似合い。
初々しいけれども余計な緊張感はなく、ムリなくきれいに演じたキトリでした。
・・・が、しか~し。
キトリのピルエットのさなか、未だかつてバレエ会場で聴いたことのない現象が!
ピルエットに合わせて(のつもり?)の手拍子。
かつて関西でそのようなマナー違反をする輩がいて嘆かわしい、と、却ってダンサーやオケのリズムを崩す原因となるから厳に慎むようにキャンペーンがはられてから、当然、だれも行ったことのない所業をここ、バレエの聖地東京文化会館で行うのは、誰??
わたくしもバレフェスきっかけでバレエ熱が・・・でしたし、バレフェスでバレエに開眼してほしいとバレエ初心者をお誘いするのは悪いことではありませんが・・・。今回、けっこう幕間だけじゃなくて曲と曲の合間でもおしゃべりする人が多かった気がします。
余談ですけど^^;
・・・そしてFINALE
これだけのスター、序列などつけようがない・・・、で、女性ダンサーの姓のABC順に登場、ということで、案外と大物が最初のほうで、さっさと出てきてしまい、なぜか最後にザハロワさまに連れだってメルクリエフが〆ると言う不思議な現象が^^;
1人だけ2人のパートナーと踊ったポーリーナちゃんだけ、ゼレ様とフォーゲルくんを従えての両手に花^^
本当に誰を見たらいいのやら・・・の豪華な舞台上、でした。
このバレフェスを「世界芸監フェスティバル」と称した友人がいましたが、上手い!!^^
往年の大スター、今は芸術監督として活躍中・・・の大物がこれだけ揃った舞台という贅沢感は今回まで・・・かもしれませんね。
次回3年後に、どれだけのメンバーの顔ぶれが変わるのか・・・。
世代交代が進むのか・・・。
今回の現役組は強力芸監チームに見劣りしない実力者揃いなので、良かったですけど。
それにしても、ギエムの不在を寂しく思いながらも、ロシアチームが充実した分、世界バレエフェスティバルの名にふさわしい内容の濃いプログラムに、バレエファンとしての幸せを感じたAプロでした。
超・私見の長文、最後までお付き合いいただきまして、ありがとうございました
8月5日(日)15:00開演 会場:東京文化会館
観た上での感想を少しずつ・・・・
■第1部■ 15:00~15:45
★「スターズ・アンド・ストライプス」
振付:ジョージ・バランシン/音楽:ジョン・フィリップ・スーザ
ヤーナ・サレンコ ダニール・シムキン
いやいや、可愛くて、そして頼りになるペアですね!
見た目は永遠の14歳、シムキンくん、前回のフェスで超絶技巧の天才少年として大ブレイクしましたが、今回はそれに加えて度胸のすわった役者っぷりも見せてくれました。
カーテンコールでもおもちゃの兵隊さんっぽく敬礼してくれたり、技を決めてのどや顔もチャーミング。
11月に予定されている彼の座長公演「ダニール・シムキンの全て」の良いプロモーションになったのでは^^?
サレンコは、前回の赤毛のイメージが強いのですが、今回はシムキンくんと似たト―ンの黄色っぽい金髪に。
並みいるインターナショナルスター、各バレエ団の名花たちと比べるとやや地味ではありますが、地に足のついた誠実な踊りとしっかりとしたテクニックが観ていて心地よいダンサーではあります。
2人とも空中姿勢が完璧でした
★「モペイ」
振付:マルコ・ゲッケ/音楽:C.P.E. バッハ
フリーデマン・フォーゲル
急遽追加された理由は何でしょう?
わかりませんが、嬉しい御配慮
舞台袖からセンターに、前を向いたり後ろ姿だったり、平行移動で出入りするたびに、手足を痙攣させたり、顔をはたき続けたりのどことなくコミカルな動きを取り入れた振りが付き、暗めの照明がむき出しの上半身の美しい逆3角形を引き立てて。バッハの軽快な音楽とピタリとハマったムーブメントが心地よい。
ダンサーらしい引き締まった肉体と甘めの顔立ちのフォーゲルくんの持ち味であるオフビートな感覚が活かされていますね。
★「幻想~『白鳥の湖』のように」より第1幕のパ・ド・ドゥ
振付:ジョン・ノイマイヤー/音楽:ピョートル・I.チャイコフスキー
エレーヌ・ブシェ ティアゴ・ボァディン
ハンブルグバレエのお家芸、ドラマチックな演目。ノイマイヤー版「白鳥の湖」は狂王ル―ドヴィヒが主役。
ボァディンはリアルにル―ドヴィヒ。色濃く彼の苦悩を表現。
ブシェは派手さはありませんが、リアリティと大人の情感に溢れていました。
★「ドリーブ組曲」
振付:ジョゼ・マルティネス/音楽:レオ・ドリーブ
上野水香 マシュー・ゴールディング
この衣装は、アニエス・ルテステュデザインのパリオペ版ですね。
男性の衣装は大きな白い襟が特色的ですぐにわかりましたが、女性のビスチェの胸元の紫のヴェルベットとスカートのシフォンの重なりの加減が、ちょっと違うような気がしたり・・・。
着る人によってイメージが変わる、ということでしょうか。
ゴールディングは昨年2度東バに客演していて、上野さんとはもうお馴染み。
わたくしは初見でしたが、しなやかな粘りと安定感は素晴らしいと思いました。
オランダ国立バレエ・・・とはマイナーですが、カナダ出身、ABT~マドリッドのコレ―ラ・バレエという経歴なのですね。高品質なダンサーです。
上野さんは・・・初めて出演されたときのドキドキ感を思えば立派になられて・・という感じ。
最初のPDDの最後で、ちょっと後ろにぐらついて心配しましたが、その後は立て直されていました。
<休憩15分>ロビーでは、バレフェスGOODSコーナーが賑わっていました。
あまり可愛くないかも?ですが(コラ)
■第2部■ 16:00~16:45
★「扉は必ず...」
振付:イリ・キリアン/音楽:ダーク・ハウブリッヒ(クープランの「プレリュード」に基づく)
オレリー・デュポン マニュエル・ルグリ
前々回のバレフェスの話題作。
信号音の中に時折ハープシコードのような旋律が挿入される。
フラゴナールの絵画(『閂』)そっくりの冒頭から、スローモーションのような一連の動きが男女の関係性を表現?
一度、冒頭のポーズに戻ってからの後半は信号音にノイズが混じり、振りも、花束を無愛想に投げあったり、乱調風に。
オレリーは艶やかな美貌がサテンドレスに映えて、クラシックも似合うコンテダンサーとしてのクォリティを兼ね備えた充実のオペラ座エトワールっぷり。
ルグリは 顔にこそ年齢相応の大人の男性の歴史が刻まれているが、ダンサーとしての肉体と精緻なサポート力に衰えは全く感じられない。
最後椅子を持ち出して並んでかけて、青いリンゴを一口齧っては、顔を見ずに渡し合う。
キリアンならではのミステリアスで感覚的な一幕。
客席にフレッシュな青リンゴの清冽な香りが流れてきた・・・ような気がしました。
ルディエールのあとのルグリの相手役として抜擢されたばかりのころのオレリーから、今まで、2人がともにそれぞれどれほどバレエ界にとって大きな存在になってきたかを複雑な振りの中で一瞬の迷いもない息の合ったムーブメントに技術を完全に忘れさせるほどの表現力とともにしみじみと思い起こさせる完成度の高い一幕。
堪能しました。
★「海賊」
振付:マリウス・プティパ/音楽:リッカルド・ドリゴ
ポリーナ・セミオノワ イーゴリ・ゼレンスキ
ロシア正統派王子として長年名を馳せてきたゼレンスキーは、なんと、今回がバレフェス初登場。
全盛期は90年代からの15年くらいでしょうか。
2006年からはノヴォシビルスク・バレエの芸術監督、昨年からモスクワ音楽劇場バレエの芸監を兼任されているとか・・・。
の割には、出てきた瞬間、凄い現役感!
「海賊」のアリなので上半身をさらしたお姿で、ターコイズブルーがまぶしいハーレムパンツ姿に規視観が・・・。
きれいな身体のラインをなんと保っていたばかりか、オーソドックスで大きな踊りもそのままで・・・。
しかし、彼がアリってありなんですかね?(洒落に非ず^^;)
最小限の演技しかしない、真っすぐな踊りを旨とする芸風のお方なので、散々大根(失礼)・・とか反面ノーブルとか言われ続けてきた彼のアリは、やっぱり生粋の奴隷には見えませんでした。
奴隷コスプレで今宵の仮装舞踏会に出てみました~的な王様のお戯れ?
可憐で小顔の長身ポーリーナちゃんのメドゥ―ラをエスコートする紳士でした。
ポーリーナちゃんは、胸元がVにウエストまで切れ込んだシンプルなデザインの水色のクラシックチュチュに小さなティアラの清楚な姫。
ポーリーナちゃんについては後で語るとして、ゼレンスキーの美しい踊りに今でも現役大丈夫じゃない?と思った矢先、ソロの始め、マネージュに入る前の2回転ジャンプ連続の初っ端で軸がかすかにズレ・・・マネージュもいつものダイナミズムが突出しないまとまった感じで。
さすがに真夏の4日連続公演の最終日ともなるとお疲れもあったのかもしれませんね。
若い姫をエスコートするゼレ様をバレフェスで観られた、という喜び、がフェスらしい祝祭感があって良かったです。
★「セレナータ」
振付:マウロ・ビゴンゼッティ/音楽:アメリゴ・シエルヴォ
ナターリヤ・オシポワ イワン・ワシーリエフ
超絶技巧を誇る、ロシア随一の体育系カップル・・・が選んだ演目は・・・。
ビゴンゼッティが彼らのために作ったという、宛書き作品。
もともとワイルドな風貌のワシ―リエフが、醒めたオレンジのヘンリーネックシャツに焦げ茶のタックパンツという労働者階級っぽさの漂うガッチリとしたお姿で舞台中央に仁王立ち。
そこに絡む、黒髪をラフにお団子にした黒いミニスリップドレスのオシポワと2人、ヒリヒリするような朴訥で情熱的な愛の姿を超人的なリフトを交えながら踊ります。
・・・ただの曲芸師に非ず、表現者としての自分たちも観てくださいね、アピールでしょうか。
なんだかスラブっぽい粗っぽさと素朴な情熱が前後の洗練されたロシアバレエの狭間にあって完全に浮いていましたが^^;、2人の個性が強烈に感じられました!
★「瀕死の白鳥」
振付:ミハイル・フォーキン/音楽:カミーユ・サン=サーンス
ウリヤーナ・ロパートキナ
きゃー
ロパートキナ様、降臨!!(←ファン)
多分、ボリショイはNBS、マリインスキーはJapanArts,レニングラード国立バレエは光藍社、という暗黙の住み分けがなされていたせいでしょうか、マリインスキーの女神、ロパートキナ様も、バレフェス初登場!
・・・で、何を踊られるのかと期待しましたが、思いっきり王道の「瀕死」を持ってきましたね。
白鳥といえばロパートキナにとどめを刺す、と思っているので、悪くない選択だとは思いますが。
・・・それにしても、美しい。
白鳥そのもの、それも、ルードヴィヒが、チャイコフスキーが、サンサーンスが、イメージとして神格化し、高みに登らせて象徴化した、芸術作品のなかにしか存在しえない”白鳥”なのですよね・・・。
品格漂う白鳥のヘッドドレスと白いチュチュ。
これぞバレエの美の権化。と、作品の表出だけでも美しいのにロパートキナ様のロパートキナ様である所以は、そのステージマナーにもあり・・・。
共演のチェロとハープのソリストの女性お二人に、王様に対するような最上級のレヴェランスを。
カーテンコールでも左右にお二人に並んでいただいて、それぞれに、美しく称えるポーズを・・・。
今回、カーテンコ―ルが3回だったのは、彼女だけですね。
別格感とオーラが凄かったです。
11月のマリインスキー公演のよいプロモーションになりましたねって、JapanArtsさんですが^^;
NBSの度量の広さに感謝します!
<休憩15分>
■第3部■ 17:00~17:55
★「ロミオとジュリエット」より第1幕のパ・ド・ドゥ
振付:ジョン・クランコ/音楽:セルゲイ・プロコフィエフ
マリア・アイシュヴァルト マライン・ラドメーカー
クランコ版のバルコニーのPDD.
金髪で少年のようなお顔立ちのラドメーカーはリアル・ロミオ。
白いふんわりとしたお袖だけの様なシャツと白タイツで、マントをなびかせ登場。
ジュリエットを観て走り寄る様も、青年の一心な恋心、という感じで素直なロミオです。
対するベテラン、アイシュバルトのジュリエットは・・・一回り小さくて華奢で小顔。大きな瞳を見開いてはいますが、ほぼ無表情で、所謂恋に恋する乙女ジュリエット・・・とはちょっと違ったアプローチ。
エキゾチックな美貌とほんのりさした赤口紅。シュツットガルドのジュリエット衣装は、ハイウエストの胸元に赤いリボンが垂らされ、素材も裾と胸元に金糸のビーズ刺繍が施されたオフホワイト~ベージュ系なので、ちょっと異国の姫風味。大事に扱わないと壊れてしまう金細工のよう。
この2人のロミジュリは、可愛い真っ白な大型犬と、高貴な瞳のシャム猫の恋のようでした^^;
アイシュバルトの凄さは、ともに踊り出してから・・・素晴らしいまっすぐな脚が難易度の高いリフトの連続の中で屹立し、クールな姫の自分でも気づいていない情熱が突然ほとばしる感じで・・・圧巻。
別れを切り出すのはジュリエット。
もう、もどらなくては・・・。
もう、これではロミオは命をかけて、この恋に突き進むしかありませんね^^
ちょっと珍しい味わいの、でも説得力のあるバルコニー・シーン、でした。
★「ジュエルズ」より"ダイヤモンド"
振付:ジョージ・バランシン/音楽:ピョートル・I.チャイコフスキー
アニエス・ルテステュ ジョゼ・マルティネス
あぁ、オペラ座の華!
長年当たり前のように、バレフェスではもちろん、観続けてきたこの2人。
長身で美しいカップルで、クラシック作品からちょっとチャーミングなコンテンポラリーまで、ほっそりとした柳のような黒髪のジョゼ、女優かTOPモデルのようなクラッシ―な陰りのある美貌がゴージャスな金髪のアニエス。
大好きな2人でしたが、ジョゼがオペラ座エトワールを勇退したのは一年前。
今はもう母国スペインでスペイン・国立・ダンスカンパニーの芸術監督。
Aプロだけのカップル復活なので、今日が本当のFINALなんですよね・・・。
音感の素晴らしいアニエスにバランシン作品はピッタリ。
上半身にラインストーンを散りばめたオフ白地、チュチュとタイツは白、というゴージャスなクラシック衣装で、青空に白い雲が小さくたなびく背景を背に、チャイコフスキーの交響曲第3番のちょっと憂愁を湛えた音楽が流れる中、2人が踊るバランシン・・・。
ジョゼは全く現役の頃と変わらず、優しい眼差しでアニエスを支え、クール・ビューティ、アニエスが時折見かわす眼の表情をオペラで追っているうちに、うっかり涙で視界がぼやけそうになりました;;
ずっと観てきた2人の、素晴らしい共演。多分最後。
しっかりと見届けなくては、と気持ちを立て直して。
東フィルの演奏が(特に管!)素晴らしく、音楽にも酔いました。
★「ディスタント・クライズ」
振付:エドワード・リャン/音楽:トマゾ・アルビノーニ
スヴェトラーナ・ザハロワ アンドレイ・メルクーリエフ
先の演目で感情が高ぶって疲れたのか、ここはあまり集中できませんでした。
彼らのせいではありません。
ザハロワは美しくなだらかな身体のラインを活かす、シンプルなライトグレーの短いレオタードドレスで、完全なサポート振りが頼もしいメルクリエフの流麗な踊りも相まって、心地よいコンテンポラリー作品でした。
★「パガニーニ」
振付:マルセロ・ゴメス/音楽:ニコロ・パガニーニ
マルセロ・ゴメス
ヴァイオリニストとダンサーの掛け合いのような小品。
ノリノリで掛け合うヴァイオリンのフレーズに呼応して、ジャズのインプロビゼーションのように踊りで音楽に応えるゴメス。
登場時から、そのスポーツ選手のような長身でたくましい肉体美と黒髪で精悍な顔立ちにざわめく客席。
今回のAプロ最終日、日曜日だったせいか、バレエ初心者の方も多かったような・・・。
ダンサーに対するリスペクトが多少なりともあれば、言えないような表現で感想を述べ合う声も幕間にちらほら・・・^^;
そういった方々も含め、客席の受けは非常に良かった演目でした。
カーテンコールまでずっと、ヴァイオリニストの方と、肩を組んでいたゴメスが微笑ましかったです^^
★「ラ・シルフィード」第2幕より
振付:ヨハン・コボー オーギュスト・ブルノンヴィルに基づく/音楽:ヘルマン・S.レーヴェンスヨルド
タマラ・ロホ スティーヴン・マックレー
タマラでシルフィード?と思いましたが、これはスティーヴンの技量をいかんなく見せるための彼女の配慮、でしょうか?
勿論、軽々とブルノンヴィル版の脚技を決めてみせるマックレーの素晴らしさを堪能出来ましたし、
スコットランドの森の中の場面を多層になった背景でGALA公演なのに作り込んできた主宰者側のこの作品に対する手厚いリスペクトにもさすがと思ったのですが、なんといっても、誘惑のシルフィードとそれをイギリス人らしく飄々といなしながらも、でも彼女に惹かれて行く・・・という2人の呼吸に感心しきり!でした。
タマラのシルフィードはただのいたずら好きの無邪気な妖精ではなく、切なげに眉をひそめて見つめてみたり、さりげなくボディタッチしたり。そしてスルリと手から抜ける・・・ちょっとどこの小悪魔?!と突っ込みたくなるような(笑)人間味溢れたCUTEなシルフィードでした。もちろんバランスや回転の素晴らしさは持ち味ではありますが、それ以上に彼女の演技者としての優れた資質を再確認。
ロイヤルバレエ団代表らしい演目・・・というサービス精神もいいですね!
<休憩15分>このあたりで、もう、お腹一杯胸いっぱい・・・となるのですが、最後に超弩級のベテランスターを固めているのが、バレフェスクォリティですね!観る方も頑張らなくては!!です。
■第4部■ 18:10~19:10
★「ブレルとバルバラ」
振付:モーリス・ベジャール/音楽:ジャック・ブレル、バルバラ
エリザベット・ロス ジル・ロマン
最高のベジャール・ダンサーによる「ブレルとバルバラ」
2001年初演を務めた2人です。この作品を他の人が踊ったのは見たことがないので、2人のための作品、なのでしょうか。
いつも最初の抜粋だけで、この作品をフルで観たのは初めてかも?
赤毛サイドパーツショートボブに黒いロングのスリップドレスのエリザベット・ロスは、
いつものショー・ダンサー的な圧倒的な華やかさ、が影をひそめ、素の彼女から感じられる柔らかな優しさが滲みでるような踊りでした。
後半では白い表に黒い裏の打ちかけのようなものを羽織ってスリ足で動くのですね。
ベジャールさんの日本趣味と、日本公演(特に今回のバレフェスは震災復興チャリティも含めていますから)への思いが伝わる演目選びかと。
ジル・ロマンは・・・あるときを境に年を取ることをやめたのかと。
ある意味柔らかな円熟と悲しみをまとったロスとは異なり、ジルの彼特有のムーブメントは本当に変わらず・・・。
ジル・ロマンもバレフェス常連で、コピエテルスとの共演など、数々の名演が瞼に浮かびますが、今回はAプロだけの出演というのが寂しいです。
★「明るい小川」よりパ・ド・ドゥ
振付:アレクセイ・ラトマンスキー/音楽:ドミートリイ・ショスタコーヴィチ
アリーナ・コジョカル ヨハン・コボ
「明るい小川」といえば、ボリショイ、それもマリア・アレクサンドロ―ワとセルゲイ・フィーリンの名演でFIXされているので、他の人が踊る、というのが想像できない・・・と思っていたら、CUTEな黒白のワンピースにお揃いのヘッドドレスのコジョカルと、白シャツ黒パンツの飾り気ない姿ながら、堅実なテクニックを隙なくみせるコボーの2人の美質をしっかりとアピールできるナイス・チョイス、2人に似合った演目でした。
一応ロシアのコルホーズ(ソ連時代の集団農場)が舞台なのですが、コボーは農民っぽさ皆無でしたね(笑)
軽快で、最後2人シンクロして爆転も挿入されてのスピーディなラストで、ふと、コジョカルのローザンヌの演目「三銃士」(クロード・ド・ヴォルピアンさんが、こんな安手のキャバレーの出し物のようなものを踊らされて、この子が気の毒です!と激高していらした・・・)が思い出されました^^;
ショスタコーヴィチが好きなのか?、東フィルの演奏がこれまた良かったです。
★「カンタータ」 (世界初演)
振付:ナチョ・ドゥアト/音楽:ヨハン・セパスティアン・バッハ
ディアナ・ヴィシニョーワ ウラジーミル・マラーホフ
ヴィシニョ―ワさまが美しい・・・。
センターパーツの黒髪をスリークなシニヨンにまとめ、上半身がトランスペアレントと市松になった首の詰まったレオタードと揃いの透け感のある黒タイツ。
対するマラーホフは黒いノ―スリTとショートパンツでこれまたシンプル・・・なのですが。
芸術監督としてのキャリアはウィーン、ベルリンと長くはありますが、つい先日も自らも踊りつつで、カンパニー選抜隊を率いて公演していたような・・・気がするのですが。
来年、ファイナルと銘打って、「マラーホフの贈り物」公演も予定されていますが?!
一瞬我が目を疑うお姿にビックリ。
なんだか胴周りがしっかりされているような。
ただ、今までは、ほっそりとしたマラーホフが生命感溢れるヴィシにエネルギーを吸い取られているような印象がぬぐえなかったのに、今回は、いつものようにサポートに徹しつつも、安定感があったのは、意識しての作戦だったとか?
あ、せっかくの世界初演なのに、作品そのものに対する感想がなくてスミマセン^^;
★「オネーギン」より第1幕のパ・ド・ドゥ
振付:ジョン・クランコ/音楽:ピョートル・I.チャイコフスキー
ポリーナ・セミオノワ フリーデマン・フォーゲル
レンスキー役者のフォーゲルくんによるオネーギン。
え、まだ早いのでは?と思いましたが、彼も若いとはいえダンサーとしては円熟してきた頃。
こういう手応えのある大作に挑みたいお年頃なのかも、ですね。
クランコ作品をレパートリーとするシュツットガルトにいれば、それは挑戦したくもなりますよね~。
しかし、オネーギンと言えばあのルグリ先生ですら、オペラ座エトワール引退が見えてきた頃にようやく、踊ってみたいと手がけた作品なのに・・・。
まぁ、今回踊るのはタチアナもオネーギンもまだ若いときの「手紙のPDD」ですから、まだ大丈夫かも。
ポリーナちゃんがお部屋の机で手紙をしたため、時折ウットリしています。
小さなお顔、スラリとした筋肉質の四肢でうっかり忘れそうになるのですが、こういう衣装だと そういえば、案外バレリーナには珍しいナイス・バディだった☆と思い出しますね。
胸下で一度絞ったゆったりとした白いお部屋着。ちょっと身体だけボリューミーに見えるし気になるので変えてあげてほしいかも?
それに青白い文学少女というには、白い歯で爽やかに微笑むテニスコートの恋がリアルに似合いそうな美少女なので、勘違いさん、と振られるような気がしないですし、色々な意味でタチアナっぽくないなぁ・・・と
思っていたら、鏡の向こうからオネーギン登場!
勿論彼女の夢の中・・・なのですが、このフォーゲル君、いつもなら爽やかな笑顔が長めのモミあげの撫でつけた髪の効果か、黒シャツ黒ベスト黒タイツのコスチュームが怪しいのか、なんだかホントにアブナイ感じのちょっとナルシーなオネーギンでした。
この役のインテリ風のイヤミな感じもそこはかとなく感じられて、意外とピッタリかも??
難易度の高いリフト連続の振りも、身長バランス、踊りの感覚が合うと常々言っている2人だけあって息がピッタリ。
・・・しかし、このPDDのあと、また鏡の向こうに消えたオネーギンに当てて手紙を書き上げ、胸に当てて明日が待ちきれない風情のポーリーナちゃんを観ていると、この恋があっさり成就してしまいそうな気が・・・してなりません^^;
鏡に映ったタチアナを上野水香ちゃんが演じていたのがさりげなく贅沢でした^^
★「ドン・キホーテ」
振付:マリウス・プティパ/音楽:レオン・ミンクス
オレシア・ノヴィコワ レオニード・サラファーノフ
オオトリを務めるのは、マリインスキーの王子から、脱皮を図って?ドゥアト作品をレパートリーとするミハイロフスキーバレエに移籍したのは一年半前。
マリインスキー公演に帯同しない、ということは日本で観られる機会が激減?と本人に聞いたら、すぐに東バへの客演が決まっているから、HPを観て!と意外なPR上手さん。
さて、今宵は・・・。
彼はちょっと顔全体でのおでこの比率が高いので、笑顔がチャーミングな割にハンサム、という感じがないのですが(失礼)、踊るとロシア・バレエの王子らしさがにじみ出て、持ち前の爽やかさと相まって大変観ていて気持ちの良いダンサー。
その上品な持ち味が災いして(?)バレフェスのトリを飾る歴代のバジルで観客の度肝を抜くような大技を繰り出してきた先達と比べるとやや大人しめ?
最後の方で、トゥールザンレ―ルとダブルのピルエットを切れ目なく(4連続?凄かった!)繰り出してきたときには流石におぉ~となりましたが。
マリインスキーのノヴィコワは、黒髪でバランスの良い肢体の可愛らしいダンサー。
赤いふんわりとした衣装が良くお似合い。
初々しいけれども余計な緊張感はなく、ムリなくきれいに演じたキトリでした。
・・・が、しか~し。
キトリのピルエットのさなか、未だかつてバレエ会場で聴いたことのない現象が!
ピルエットに合わせて(のつもり?)の手拍子。
かつて関西でそのようなマナー違反をする輩がいて嘆かわしい、と、却ってダンサーやオケのリズムを崩す原因となるから厳に慎むようにキャンペーンがはられてから、当然、だれも行ったことのない所業をここ、バレエの聖地東京文化会館で行うのは、誰??
わたくしもバレフェスきっかけでバレエ熱が・・・でしたし、バレフェスでバレエに開眼してほしいとバレエ初心者をお誘いするのは悪いことではありませんが・・・。今回、けっこう幕間だけじゃなくて曲と曲の合間でもおしゃべりする人が多かった気がします。
余談ですけど^^;
・・・そしてFINALE
これだけのスター、序列などつけようがない・・・、で、女性ダンサーの姓のABC順に登場、ということで、案外と大物が最初のほうで、さっさと出てきてしまい、なぜか最後にザハロワさまに連れだってメルクリエフが〆ると言う不思議な現象が^^;
1人だけ2人のパートナーと踊ったポーリーナちゃんだけ、ゼレ様とフォーゲルくんを従えての両手に花^^
本当に誰を見たらいいのやら・・・の豪華な舞台上、でした。
このバレフェスを「世界芸監フェスティバル」と称した友人がいましたが、上手い!!^^
往年の大スター、今は芸術監督として活躍中・・・の大物がこれだけ揃った舞台という贅沢感は今回まで・・・かもしれませんね。
次回3年後に、どれだけのメンバーの顔ぶれが変わるのか・・・。
世代交代が進むのか・・・。
今回の現役組は強力芸監チームに見劣りしない実力者揃いなので、良かったですけど。
それにしても、ギエムの不在を寂しく思いながらも、ロシアチームが充実した分、世界バレエフェスティバルの名にふさわしい内容の濃いプログラムに、バレエファンとしての幸せを感じたAプロでした。
超・私見の長文、最後までお付き合いいただきまして、ありがとうございました