ヒトリシズカのつぶやき特論

起業家などの変革を目指す方々がどう汗をかいているかを時々リポートし、季節の移ろいも時々リポートします

東京都台東区の東京都美術館で開催されている「若冲展」に行って来ました

2016年05月16日 | 日記
 東京都台東区上野公園の東京都美術館で開催されている「若冲展」に行って来ました。やはり並びました。

 この「若冲展」のキャッチフレーズは「ひと月限りの、この世の楽園」です。この「若冲展」は、東京都美術館だけで、4月22日から5月24日まで開催されます。他の展示会のように、大阪市や名古屋市などには巡回しません。





 主催者に日本経済新聞社とNHK(日本放送協会)が入っています。特に、番組NHKスペシャル「若冲 天才絵師の謎に迫る」などで盛り上げた効果は大きかったようです。

 実は、数日前に一度、午後に東京都美術館で開催されている若冲展に行ったところ、入り口にいた係員から「現在、160分待ち」といわれて、諦めて帰りました。その日の夕方の約束に間に合わないからでした。

 このため、今日は午前8時に上野公園に入り、係員の指示に従って並びました。開場は午前9時30分ですので、1時間30分は並ぶ覚悟です。



 この時点で、東京都美術館の「若冲展」の最初の入場人数を超えていそうなので、いくらか並ぶ覚悟でした。

 実際には、午前10時に展示会のゲートを通り過ぎました。合計2時間=120分並んだのでした。

 「若冲展」の館内は、ものすごい人数で、その絵の前から離れない方が多く、絵の下側の細部は見えません。

 個人的には、好きな森羅万象を対象に、ウメやマツ、ボタン、ユリ、シャクヤク、アジサイなどの様々な木や山野草を描き、ツルやカメ、クジャク、オウム、アゲハチョウなどを好きなように気にいるまで“動植さい絵”を絢爛豪華に描いています。

 野鳥は想像のものですが、オオルリやジョウビタキなどを基に変化させたと感じたものがありました。スズメ以外は写実ではないと感じました。

 個人的には、「釈迦如来像」「文殊菩薩像」「普賢菩薩像」の釈迦三尊像がポップな出来映えで、抹香臭くなく、現在でもイラストレーターで通用する気がしました。

 どんどん入場させているので、約1時間で押し出されました。

 東京都美術館の外に出ると、入館待ちの方々の最後尾では「210分待ち」との表示でした、少し日射しが出て、蒸し暑くなり、熱中症の方が出たようで、救急車が1台来ていました。

 ふだんは並ぶことが大嫌いなので(たとえば、有名ラーメン店には行きません)、いろいろな奇手を考えるのですが、今回は諦めて並びました、まったく別のイベントに行くことを重視したためです。

 なお、人気小説家の澤田瞳子(さわだとうこ)さんが上梓した単行本「若冲」を読んだ話は、弊ブログの2015年9月9日編をご参照ください。

ミステリー作家の桐野夏生さんの最新作「バラカ」を、何とか読み終えました

2016年05月16日 | 
 ミステリー作家の桐野夏生さんの最新作の単行本「バラカ」を、何とか読み終えました。

 この単行本は2016年2月16日に集英社から発行されました。かなりの問題作です。



 部分的には、圧倒されるほど面白く、話の展開にのめり込みます。全体としては読後感はよくありません。

 本ミステリーに登場する人物の多くは、バラカ(薔薇香)という少女以外の登場人物の半数以上は、小悪党でわがままな人生を歩んでいて、呆れかえります。

 まず、この小説の舞台は、2011年3月11日の東北大震災の際に、福島原子力発電所4基が爆発し、東京都を含む東日本各地は放射能汚染によって、住まないことを薦められる地域になったという世界です。

 深刻な原発事故によって、日本は首都機能を大阪市などに移転し、経済活動の中心も関西になり、西日本側でこれまでの生活を維持する考えを、多くの日本人は持ちます。その挙げ句に日本にオリンピックを招致し、日本が元気であることを国内外にアピールします。

 この単行本のタイトル「バラカ」は、日系ブラジル人の夫妻に産まれた女の子です。この女性の子供は、原子力発電事故以降に、原発推進派と原発否定派のそれぞれ象徴として利用されることになります。この単行本「バラカ」のあらすじは、かなり複雑なので、さわりをお伝えします。

 日本語の達者な日系ブラジル人の夫は、リーマンショック後の日本企業の不況でも、首にならずに済んでいます。しかし、女癖の悪い夫に嫌気がさした妻は、治安がよく、待遇もいい、アラブ首長国連邦の首長国の一つであるドバイ首長国の首都のドバイに移り住みます。

 ドバイに移住した日系ブラジル人の妻は、ドバイで職を得ていたトルコ人男性にだまされ、そのトルコ人男性と駆け落ちします。その時に、バラカも一緒に連れていかれます。

 このトルコ人男性は悪党で、日系ブラジル人の妻と娘をそれぞれ、奴隷市場に売って逃走します。日本では想像もできない展開です。

 さて、この単行本の前半部の進行役である田島優子(たじまゆうこ)と、その親友の木下沙羅(きのしたさら)、田島優子の学生時代の恋人の川島の3人が話を進めます。大学生時代から約20年経って、この3人が再会する飲み会のシーンから話は始まります。

 田島優子はテレビ局に就職し、ドキュメンタリー部門で活躍する一方、木下沙羅も大手出版社で活躍するキャリアウーマンです。二人とも、男性には負けないとの自負から仕事に打ち込んだ結果、独身です。でも、二人もに、結婚もせず、子供がいない“お一人様”であることが重荷に感じ始めています。

 ある日、木下沙羅は結婚するよりも、独身生活の張り合いを得るためには、子供がほしいと思いつきます。自分の子供を産む機会も時間もないことから、ドバイにある子供の人身売買機関から子供を買うことを思いつきます。

 この話の展開は、桐野夏生さんが描く小悪党の世界です。

 木下沙羅は日本人に見える日系ブラジル人夫妻の娘を買い、飛行機に乗せて、日本に連れて帰ります。日本では、この女の子と養子縁組によって、自分の娘にします。

 ここで、本当の小悪党である川島が裏の顔をさらけ出します。川島は大学卒業後に、大手広告代理店に就職し、結婚し、二人の子供を持つ順風満帆(じゅんぷうまんぽ)な人生を歩んでいました。しかし、この会社を辞め、葬儀屋に就職します。

 実は、川島は“種付け馬”と揶揄(やゆ)されるほどの女遊び好きで、実は学生時代に、田島優子と木下沙羅をそれぞれ妊娠させ、子供をそれぞれ堕ろさせていたのです。

 その川島は、葬儀屋でも女性社員に“種付け馬”として動いていました。この話の流れでは、はっきりとは描かれていませんが、川島の妻と二人の子供は火事で焼け死にます。その犯人が川島であることがなんとなく描かれています。

 その川島は、20年ぶりに再会した木下沙羅の東京都内にある実家の不動産資産に眼をつけ、巧みに口説いて、木下沙羅と再婚します。ドバイで買ってきたバカラという少女との見かけの3人家族の魅力を訴えた結果です。

 その川島は、葬儀屋の仙台支店に転勤になります。そして、木下沙羅は仙台市の住居に引っ越しするために、東北新幹線で仙台に向かい、新しく借りた住居に入った途端に、東日本大震災が起こり、津波で行方不明になります。

 ここまでが、バラカという2歳の女の子が仙台市で地震に会い、その後の福島原子力発電所の事故によって放射能被曝した経緯です。

 ここまでが、バラカがある運命に翻弄される前提の展開です。でも、日本の独身女性の中には、結婚しなくても子供はほしい・・だから子供を買えばいいと考える人が出始めるかもしれないとの、桐野夏生さんの虚構は刺激的でした。

 その後の東北大震災8年後の世界は、続きで解説します。