ヒトリシズカのつぶやき特論

起業家などの変革を目指す方々がどう汗をかいているかを時々リポートし、季節の移ろいも時々リポートします

長野県佐久市の東端にある佐久荒船高原では、ズミの花が咲き始めています

2016年05月17日 | 佐久荒船高原便り
 長野県佐久市の東端にある佐久荒船高原では、白いズミの花が咲き始めています。例年の開花に比べて、10日ほど早い気がします。

 標高が1100メートルから1200メートルある佐久荒船高原の最上部は、5月初めに春になり、約3週間で夏景色に変身します。

 山麓が新緑に染まる象徴が、各地で咲き始めたズミの花です。



 ズミの木は別名“コナシ”とも呼ばれるように、ナシの花に似た小さな白い花が枝を隠すぐらいに多数咲きます。

 現在、ズミの木は太陽光がよく当たる南向きの尾根沿いでよく咲いています。

 場所を少し変えると、ここのズミの木は少し赤みがかった蕾を膨らませ始めたばかりです。



 雑木林の中では、これからもうすぐ木陰になる地面で、ニホンサクラソウ(日本桜草)がよく咲いています。最初に開花した場所から、少し遅れて咲く部分に開花は移っています。



 こんな所でも、ニホンサクラソウは群生するのだと驚かされます。

 その近くでは、シロバナエンレイソウが群生していました。ここでシロバナエンレイソウが咲くとは予想していませんでした。



 佐久荒船高原では、シロバナエンレイソウが群生する場所が減っています。

 佐久荒船高原の北斜面の林道沿いでは、木々の新緑の芽生えの中で、ミツバツツジと思われるピンク色の花が咲いています。



 このミツバツツジと思われるピンク色の花を咲かせるツツジは点在しています。場所によって、植生はすいぶん異なるものです。

 新緑に染まり始めた山麓です。



 この葉を芽生えさせ始めた雑木林の中では、野鳥が飛び交っています。

 出てきたヤマガラです。くちばしに虫ではないかと思われるものをくわえています。



 このヤマガラは、この虫を食べ終えると、のんびりとし始めました。周囲をなんとなく見渡すだけで、飛び去りません。





 背の高い木の上部に留まった野鳥です。野鳥の種類は不明です。



 キビタキのメスのようにも見えますが、自信はありません。

 野鳥の種類は、双眼鏡でよく見ないと、種類はしっかり同定できません。

 これから1週間程度でぱっと咲いて、散って行くズミの木々があちこちで開花し、佐久荒船高原は春真っ最中です。

 ズミ(酸実)は、バラ科リンゴ属の1種です。リンゴに近い野生種の落葉低木です。

 ズミと呼ばれる語源は、木の幹の破片が染料となることから“染み(そみ)”と呼ばれるからです。秋には小さな実をつけます。

ミステリー作家の桐野夏生さんの最新作「バラカ」は素晴らしい失敗作です

2016年05月17日 | 
 ミステリー作家の桐野夏生さんの最新の単行本「バラカ」を読み終えた話の後編です。

 この単行本は2016年2月16日に集英社から発行されました。かなり面白い部分もありますが、最終的に伝えたかった原子力発電所事故以降の世界の変化を伝える点では失敗作です。



 部分的には、前半部分の主役の一人の木下沙羅(きのしたさら)がドバイの人身売買市場で日系ブラジル人夫妻の娘のバカラを買って、飛行機に乗せて、日本に連れて帰るという破天荒な話の流れは興味深い内容です。

 日本で、この女の子を養子縁組によって、自分の娘にし、生活を始める辺りは狂気の世界です。そして、再婚し、仙台市に引っ越した途端に、天罰が下り、東日本大震災に会い、津波に流され、行方不明になります。

 この時に木下沙羅と一緒にいて、津波に流された娘のバカラ(薔薇香)は、群馬県T市で高い放射線を計測するボランティアの男性老人たちに発見され、その一人の豊田吾郎(とよだごろう)が連れて帰ることになります。警察などは原子力発電所の爆発による対応で手一杯で、「だれも面倒を見る者がいない孤児一人では避難所では引き取らない」といわれた結果でした。

 この小説の舞台は、2011年3月11日の東北大震災に際に、福島原子力発電所4基が爆発し、放射能をまき散らし続けているために、東京都を含む東日本各地は放射能汚染によって、住めない地域になっている世界です。

 バカラを引き取った豊田は、東京都にマンションを持っていましたたが、放射線量が高くなり、警戒区に指定されたために住みにくくなり、バラカのために一回は大阪市に引っ越します。その後は、ぼろいバンで移動し始めます。この豊田は、原発反対派の人々に支援を受け、北海道の旭川市や長崎県平戸市などに滞在します。

 2011年から8年後の主に東日本の世界が後半編の舞台です。豊田はバカラの教育を考え、時々、小学校に転校させます。その東日本の岩手県の北にある“学校”と呼ばれる施設には、事故後にアジアから日本に移住してきた家族の子供が教育を受けています。近くにできた巨大な電子産業工場で働く親の子供たちです。

 バカラの首には、甲状腺ガンを削除した手術の傷跡があります。

 こうしたことから経緯はよく分からないのですが、バカラはネット上では「棄民の象徴」に祭り上げられます。この結果、原子力発電所推進派も反対派も、象徴になったバカラを利用しようとします。

 「棄民の象徴」に祭り上げられたバカラは、勝手にイメージをつくられ、拡散されていきます。この辺が、物語が生煮えな気がします。

 話をかなり飛ばして、前半部の3人の主役の一人だった本当の小悪党である川島は、原子力発電所推進派の手先として、バカラを狙います。川島については、弊ブログの2016年5月16日編をご参照ください。

 川島は原子力発電所推進派の手先として、バカラと一緒に暮らす男の子の双子兄弟を犯罪者に仕立てます。この犯罪者に仕立てる際には、警察が犯罪容疑者に仕立てます。つまり、時の政府・権力側は原子力発電所推進派であり、超法規的措置を執ります。

 この原子力発電所推進派と反対派の組織を、夏野さんはあまりはっきりと表現せず、それによって不気味さを表現しようとしています。

 でも、全体像がつかめません。原子力発電事故によって、事実上日本ではなくなった東日本で生きることが断片的に描かれています。でも、話の流れがよく分からす、この点では意欲的だが失敗作だと感じました。

 後半でも、川島という男性の小悪党の世界が描かれています。この単行本「バラカ」は、前半部が面白く、後半部は構想が先行し、よく分からない生煮えの世界になっていると感じました。