新宿少数民族の声

国際ビジネスに長年携わった経験を活かして世相を論じる。

8月22日 その2 続・甲子園の野球に思うこと

2023-08-22 14:39:12 | コラム
冷静なる評論家は言う:

大学附属高校対独立の私立高校の争い:
ここでも、日大高校アメリカンフットボール部監督・故清水之男氏の言を引用しよう。それは父兄たちに向かって「私は全国制覇(現在はクリスマス・ボウルになっている)を目指して子供たちを鍛えていない。飽くまでも日本大学フェニックス篠竹幹夫監督の役に立つように彼らを鍛えて進学させることを第一義に考えていると理解して欲しい」と断言されたのだった。そして、1980年代のフェニックスには、実際に多くの日大高校出身者が中心選手として活躍していた。

私はこの形が「大学附属高校の運動部の一つのあるべき姿だ」と認識している。当時の日大高校のフットボール部には大学のレギュラーメンバーである選手たちがきて指導していたし、フェニックスが使うような高度なフォーメーションも教えられていた。言いたいことは「森林監督は甲子園での優勝を目指してきたのか、それとも大学の野球部の強化を意図してきたのか」なのである。

この度の決勝戦には慶応大学の附属高校が独立系の仙台育英高校と対戦する。私が見てきた限りでは、慶応大学の野球部は高校の森林監督が就任された2015年以降には附属高校出身の選手が圧倒的に多いのである。しかも、NPBで一本目を張っているようなソフトバンクの柳町やヤクルトの木沢や広島の矢崎のように慶応高校から慶応大学出身者が大活躍なのだ。

私は慶応高校の野球部の在り方と歴史が変わったのではなかったのかと見ている。森林監督は慶応高校出身だそうだ。余談だが、前任者の上田誠氏は湘南高校出身者だった。

一方の有力な優勝候補として前評判が高かった仙台育英高校の須江航監督は、有名な選手ではなかったような経歴だと聞いている。だが、今回の甲子園での連覇を狙っての登場でも、高校生たちに「君らにとっての初めての優勝を目指そう」と言い聞かしていると聞く、中々端倪すべからざる指導をされている人物であると見た。だからこそ、既に優勝の実績があるのだ。

その結果として、今すぐNPBに行っても通用しそうな150kmを投げる投手を3人も育て上げたし、高校生の域を脱した強力な打者も育成してある。単なる「勝利至上主義者」ではなく「子供たちの将来を考えた指導法」を採用しているのも知れないかとも見える。だが、NPBでレギュラーの座を確保している選手は意外にそう多くはないのだ。

上述のような見方をしてくると、明日の決勝戦は相異なる高校生の育て方をしてきた両校の争いになる点に、大いなる興味を感じている。先ほども仙台育英高校に分があると予測したが、その根拠としてここに掲げておきたいことは「須江監督は一度全国制覇をして『勝ち方』を心得ている点に、森林監督と比べた場合に『一日の長がある』と見えるから」なのである。

湘南高校を忘れないで貰いたい:
朝から仙台育英高校と慶応高校とユニフォームとストッキングが似ているとの報道がある。「ひるおび」では仙台育英高校の慶応大学出身の校長先生(だったか?)が慶応大学と同じ形にすることの了解を取られたと報じていた。それならば、79年前にたった一度だけ出た甲子園で優勝した湘南高校も、慶応大学と同じストッキングを履いていたし、監督が慶応大学野球部出身の佐々木氏だったことも取り上げて欲しいものだ。

私は仙台育英を見た時に、ユニフォームの色は違うが、ストッキングは湘南と同じではないかと、一瞬だけ一寸懐かしくなった。あの優勝メンバーからは東大に進んで東洋紡で専務になり、後に日本高野連の会長に就任した脇村春夫君や、慶応大学からトンボユニオンズのショートストップになった佐々木信也君や、東大の左腕のエースになった三菱化成常務の原田康男君が出ていたのだ。最近ではNPBで今はヤクルトに宮台康平もいる。マスコミは何時も片手落ちで、冷静ではなくなるのだと指摘して終わる。


甲子園野球に思うこと

2023-08-22 08:01:51 | コラム
つい、主催社を批判したくなってしまうので:

昨日まで外気にも触れず、新聞も読まず、ただただ温泉に浸かって体調を整えることに一意専心していたので、甲子園の野球観戦だけが唯一の娯楽だった。とは言っても、沢山の試合を見ていたわけでもなかったが、その中から思い浮かんできた事柄を思いつくままに書き記しておこうと思う。

髪の毛のこと:
慶応高校を始めとして、土浦日大高校もそうだったか、数校が普通のヘアースタイルだった。これをマスコミは何を思ったのが、今頃になって云々し始めた。笑止千万であると言いたい。古くは我が湘南高校が昭和24年に最初で最後に夏の甲子園に登場して優勝してしまった時にも「湘南は長髪だ」と少し騒いでいた。その後でも、神奈川県からは坊主頭ではなかった慶応高校が何度か出場していた。その辺りに全く触れずに、今回は「慶応高校が・・」とは不可解だ。

思うに彼らは高野連や主催社の朝日新聞に刃向かう勇気がないので、こんなことを21世紀の今日になって細々と指摘し始めたのではないか。敢えて言うが、NHKが番組中に過去の名場面を放映しているが、湘南を取り上げたことがない。あの時には「2死満塁、2-3スクイズ」をやって得点していたのだ。当時でも話題になったが、残念なことにあの時の録画が残っていないようだ。要するに「彼らは何時も片手落ちで不公平」なのである。(当時はボールを先にカウントしていた、念のため)

暑さ対策:
試合中に10分間の何とかタイムを設けていた。これは少なくとも批判する材料ではない。だが、そこまで配慮したのならば、準決勝戦の第一試合を午前9時から始めたのは解るが、第二試合の慶応高校対土浦日大高校を11時から開始した神経と感覚は不可解だ。異常な酷暑の真っ盛りに午後2時頃までだったか試合をさせたのをおかしいと思わない感覚に疑問を呈したい。観客や応援している方も並大抵ではなかっただろう。

だが、彼らのためを思って現実を考えれば、仮に第二試合を午後4時頃かでも開始すれば、その間に折角入場して下さった観客はどうすれば良いかという問題になるだろう。甲子園には屋根もなく待合室だってないいのだ。まさか、入場券を2試合に分けて前売りでもして置くことも出来まい。敢えて言うが、暑さ対策を考えるのならば、もっと根本的にこの大会の在り方から再検討すべきではないか。酷暑は来年以降にも続くのだろうから。

審判の判定の問題:
高野連と朝日新聞は四の五の言わずに、「ヴィデオ判定」を取り入れるべき時が来たと考えるべきではないのか。神奈川県の予選でも慶応高校対横浜高校のあのダブルプレーで2塁ベースを踏んだか踏まなかったが大きな話題となった。野球においての我が国の審判の方々の技術は、MLBのような粗雑さがなく信頼するに十分だとみている。だが、所詮は人の目で見て判断することで、間違えてしまうことだってあると思う。

人の目での判定に限界があり、疑問を感じたのならば、次の手を打つべきではないのか、高校生たちのためにも。

但し、NPBでは「チャレンジ」の濫用が目立っていると感じている。あそこまで言い出すのであれば、いっそのこと全部をヴィデオに任せたらどうかとすら言いたくなる。特に、H監督は「貧すりゃ鈍す」か、と言いたくなるほど、チャレンジしたがるのは如何なものかと思う。確認しておくが、アナウンサーたちが「リクエストを求めました」というのは醜態だ。「ヴィデオ判定を求めました」であるべきだ。あの行為は「判定に異議を申し立てる」のだから、英語は「チャレンジ」なのである。

戦評:
先ず、日大高校アメリカンフットボール部監督の故清水之男氏の至言を取り上げておこう。日頃の練習通りにも、指示されたプレー通りにも動かない高校生たちを評して「何分にも、子供たちがやることだから」と言われたのだった。神村学園対おかやま山陽の試合は見た。両校とも良くもこれでここまで勝ち上がってこられたものだと、悪く言えば「呆れていたほど未熟」だった。これでは勝ち上がって神村学園が仙台育英と当たれば大負けするだろうと予測した。

ところが、昨日の準決勝戦では神村学園の子供たちは、清水監督の至言の「硬貨の裏面」を物の見事に出して、優勝候補最有力で自信に満ちた試合振りを見せてきた仙台育英の超高校級の投手たちから2点を取って堂々と競り合って見せていた。私の目にはあのおかやま山陽との試合で全く体を為していなかった試合をしたのと同じ高校かと疑いたくなったほど立派に挑戦して、育英を苦しめていた。高校生のすることは解らないものだと思わずにはいられなかった。

慶応高校についてだが、サッカーでは今を去ること75年ほど前に何度か対戦していたし、愚息たちがフットボールの試合で3年間というか2人で6年間対戦してきて、その強さと弱みをずっと見てきた。大学からも指導を受けているだろうと察するに足るほど、キチンと纏まったサッカーとフットボールが出来るように仕上げられていた。今回もあの野球を見ていれば、出てくる者全員がむらなく基礎を固めて育て上げられていて、目立った長所も欠陥も見えない。

仙台育英高校は昨年でも既に高校の水準を超えた段階の選手を揃えていたし体格も揃っていて、良く鍛え上げられていると思わせられていた。今年のティームにはその時の者たちが数名残っているし、超高校級で150km台の速球を投げる投手を3人も揃えているにも拘わらず、鎧袖一触と見ていた神村学園に気が緩んでいたのか、手子摺っていた。ではあっても、全員が気を引き締めて出てくれば慶応高校も苦しい試合になるだろう。

決勝戦の予想:
要するに、慶応高校が持てる力以上のものを出せて、仙台育英が持てる力を出せないような試合運びが出来れば、非常に緊迫した良い試合になるだろう。一寸気になるのが、慶応の小宅投手が日大土浦高校戦で完投した後で中一日しか空いていないという点である。村林監督が小宅投手を先発させて、使い切ってから交代させるか、他の投手の先発に賭けるが鍵になるような気がする。

結論としては「仙台育英の優位は後かない」とは思うが、そこはそれ「子供たちがやること」なのだ。言い方を変えれば「育英と慶応の何れが子供のままか、大人に成長しているか」に懸かっているのではないかと思っている。