新宿少数民族の声

国際ビジネスに長年携わった経験を活かして世相を論じる。

福島の処理水排出を考える

2023-08-23 07:45:05 | コラム
排出する前から「風評被害」とは何事:

「岸田総理が明24日からの排出を閣議決定した」と報じられていた。「やるべきことをやられた」と受け止めている。この件についての世論調査も、実施する機関で結果が異なっているのはおかしいと思う。一部には逆風もあるが、総理の決定は「あるべき姿」であると受け止めている。

中国が垂大使を呼びつけて「怪しからん」と抗議したことに対して、我が国は今後とも正々堂々と我が国の正当性を申し出られれば良いがと願っている。

ところで「風評被害」である。如何なる報道でも、論調でも、反対意見でも、全国と福島県の漁連の方々も、野党が唱える異論でも、全てにおいて「風評被害」の危険性を取り上げている。言葉の使い方に敏感であると自負している当方には「何故、排水が始まっていないこの時期に、風評の被害が出るとの心配を言い出すのか。早すぎるのではないのか」と言いたくなるのだ。

何処かで誰かが「処理水から健康障害が生じた」とでも、意図的に流しているのか。中国が我が国の水産物などを「放射能検査にかけているのは間違いである」と官房長官の談話だけではなく、報道機関をしてキチンと否定させておいても良かっただろう。でも、彼らは中国が怖いのか。

屁理屈かも知れないが「風評」を広辞苑に見れば「世間の評判、うわさ、とりざた、風説」となっている。「風評被害」は「風評によって売り上げ減などの被害を受けること」ともある。当方には、未だ実際に排出が開始された訳でもなく「福島県の魚類や農作物には放射線が出るので危険だ」との風説やうわさが流布されてはいないにも拘わらず「風評被害か怖い」と騒ぎ立てるのは、時期尚早か矛盾ではないかと思えてならないのだ。

岸田内閣の重要な役目は23日よりも前に公式に「我々内閣は処理水に含まれているトリチュームは何物にも害を与えない程度にまで薄められているからこそ、排出を決定したのである。その処理の仕方もIAEAの承認済みである。ここに危険性はないと宣言するし、漁連には排出が終わるまでの保証を、自信を持って約束した」くらいのことを、国民全体が知るように報じておいて欲しかった。同時に海外の諸国にも告知を徹底して置けば良かったこと。

この件で官房長官が記者会見をして「安全性の確認」をしたとの記憶もない。マスコミは「安全であると政府が言う」程度の報じ方。これだけでは不十分だと思って見てきた。望むらくは「岸田総理が安全宣言の記者会見」を外国の記者も招いて行うことなのである。自転車のヘルメット着用を「努力義務」としたような曖昧な言い方で表明した方式は踏襲して欲しくないのだ。言うべきことは明確にすべきだし、安全だと言って何かを失うことなどないと思う。

しかしながら、現実には泉健太のように「風評被害があるから」のような不正確な表現で反対を唱える輩が出てきているのだ。だから、総理は毅然とした姿勢で「処理水が危険であるかのようなデタラメな風評や風説をまき散らすな」と、泉を始めとする野党に申し入れておいて欲しかった。但し、私でさえ、ここから先には岸田内閣だけではなく我が国にとっても苦難の時期になると覚悟を決めておく必要が生じると思っている。

難しい時が来ると予測できる以上、「我が国が排出する処理水は世界中のどの国が出しているものよりも安全なのである」との趣旨の広報活動に力を注いでおく必要があると思うのだ。これこそが外務省の重要な仕事だと思うので、彼らがその任を恙なく完遂してくれることを期待したいのだ。