新宿少数民族の声

国際ビジネスに長年携わった経験を活かして世相を論じる。

味なことをする世界陸連

2022-07-25 15:41:47 | コラム
「脱ペットボトル」だったとか:

当方は、あのTBSが織田裕二と中井美穂を使って懸命に中継放映に励んでいる、このアメリカはオレゴン州ユージーン(Oregon州Eugene)で開催されている世界陸上は申し訳ないことで、それほど熱心には見ていない。だが、女子のやり投げで北口榛花さんが3位に入賞された快挙も録画で見ていた、偉いものだと感心しながら。

ところで、何処のニュースだったかで「選手たちがゴールした後に取り出して飲んでいる白い容器には何が入っているのか。牛乳では?」という話を採り上げていた。私は永年の経験からして、あの開閉可能な口栓が付いた容器は、その形状からして一目でTetra PakのTetra Brik(テトラブリック)ではないかと読めた。だが、まさか牛乳ということはあり得ないだろうと思っていた。

すると、その続報のような形で「あれは紙パックであり、中身は水である」と報じられていた。私はそれほど気にも止めていなかったが、あれは明治乳業が「おいしい牛乳」の900mlのパックに使っているテトラブリックと同じ紙パックだろうと見ていた。テトラブリックならば、冷蔵輸送乃至は冷蔵ケースを使わないで常温で野外に置くことも可能なので、面白い着眼点かと思っていた。だが、報道によれば「時節柄、PETボトルを避けて紙パックを採用した」そうだった。

「なるほど。それならばユージーンの隣のワシントン州バンクーバーに俗称アメリカテトラパック(Tetra Pak Inc.)の紙パック加工工場があるではないか」と思いついた。この工場はそもそもウエアーハウザーの工場だったものを、アメリカに進出したテトラパックに譲渡したのだった。念の為に申し添えておくと、ワシントン州に隣接するカナダのブリティッシュコロンビア州には著名な風光明媚のバンクーバー(Vancouver)があるので、屡々混同されていた。

紙パックに話を戻せば、嘗ての業界や一般の消費者の常識では「紙パックに水を充填すれば、紙に水が浸透してしまうだろうから、ものの役には立たないだろう」と懸念されていた。だが、この水が滲んでいくことを防止する紙パックの加工技術は、1970年台後半に既に開発されていた。だが、その加工コストと需要が何処まで伸びるかに疑問があったので、余り急速には普及していなかった。

しかしながら、我が国の高度な技術水準では水よりも困難だと見られていたアルコール類(日本酒やワイン)の紙パックは、1980年代にはその技術をアメリカに逆輸出する(ライセンスを降ろす)までに至っていた。紙パックはそこまで広い範囲に応用されていたのだから、今回のようにテトラブリックが世界陸上の会場で使われていても何の不思議もないと思う。

だが、アメリカは未だにヤードポンド法に固執しているので、あのパックは恐らく1,000mlでも900mlでもない、クオート(quart)の0.9461リッター入りではないかと考えていた。ではあっても、世界陸連も味なことをしてくれるものだと感心している。

確かにペットボトル(ポリエチレンテレフタレート=polyethylene terephthalate)の使用を回避したのは、プラステイックスのゴミ削減に貢献するだろう。だが、アメリカで「水をペットボトルよりも高価だろう紙パックに入れて販売して、需要があるのだろうか。費用対効果が期待できるのだろうか」との疑問は残るのだ。でも、永年紙パルプ産業界で過ごしてきた者から見れば「脱ペットボトル、大いに結構」と言いたくなるのだ。



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