新宿少数民族の声

国際ビジネスに長年携わった経験を活かして世相を論じる。

アメリカで発生している人種差別問題に対する抗議デモ

2020-06-10 08:52:30 | コラム
何故白人があのデモに参加しているのだろう:

このミネアポリスで白人警官がアフリカ系アメリカ人のジョージ・フロイドさんを逮捕する際に死に至らしめたことに対する抗議のデモンストレーションが、報道によればアメリカ全土で行われているようだ。当の警官は解雇されて訴追されるようだが、その程度ではアフリカ系アメリカ人たちの人種差別に対する抗議デモが収まるものではなかった。

私はこれまでに何度も22年以上ものアメリカの会社勤務の間に、一度もアフリカ系アメリカ人と膝つき合わせて語り合ったこともなく、社内で人種差別問題などを誰とも語り合うというか語り合いの中で話題にしたか、話題に上ったことなどなかった。とは言うが、勿論アメリカには人種差別問題がある事は承知していたし、世界史では奴隷をアフリカから連れてきたことくらいは知識として持ち合わせていた。言わば、この問題については、ほとんど確たる知識も意見もないと同様だと思っている。

ところが、テレビのニュースを見ていると、ニューヨークやその他の都市でデモに白人が参加していたし、店舗のショウウインドーのガラスを破壊して略奪している群衆の中にも白人がいたので、不思議なことだと大いに違和感を覚えていた。私に推察できたことは「あのデモに参加している白人はローワーミドル(=lower middle、中流以下)乃至はそれ以下の層に属する者たちで、日頃抑圧された生活をしてきたことに対する不満、乃至はフラストレーションの解消を企図しているのかな?」程度だった。だが、「そういうことがあり得るのか」と自分の「閃き」を信じにくかった。

そこで、これまでに何度か採り上げたきた、アメリカで出会った数多くのご婦人方の中で最も知性的で教養もあるMBAでコンサルタント事務所を運営しておられた方に、私の疑問を解消して頂くべくEmailでお願いしてみた。結果的には速効で長文の返信が来た。その全部を和訳しようという勇気が出てこないのだが、折角の機会なので「何故白人が」という辺りだけを言わば「意訳」して紹介しようと思うに至った。

抄訳:
貴方の「何故白人があのデモに加わっているのでしょうか」に答えてみます。私たちはアメリカ合衆国はその市民全部に対して十分に報いていないことに気が付き、その問題の複雑さを認識して恥ずかしいことだと思っているのです。そして、不当に扱われている人たちに大いなる同情心を持っています。最早、警察官の暴力的な振る舞いを終わりにすべき時が来ています。だが、この点に目覚めるのに余りに時間をかけすぎました。その為に多くの市民はアフリカ系アメリカ人、その他の有色人種の抗議デモに参加する以外の手段を見いだせなかったのだと思います。

この件は肌の色だけの問題ではありません。私はあのデモが示していることの中には「格差社会」の問題もあると考えています。多くの中流以下の白人たちは今世紀に入ってからも、不当に低額な給与しか与えられないというように粗略に扱われてきましたし、彼らの将来に対する見通しは悪化してしまったようです。私が特に問題ありとして採り上げるのは、中西部の州です。この地方の経済は主として石炭、鉄鋼、自動車等の産業に依存しています。だが、これらの業界は最早アメリカにとっては嘗てのように重要な地位を占めていなくなったし、海外からの輸入に押されて失業者が増えてしまったのです。

彼等白人たちはアフリカ系アメリカ人たちには「食事券」が給付されているし、所謂「積極的優遇処置」(=affirmative action)が採られてアフリカ系アメリカ人は優先的に雇用されるとか、大学に進学できるような特権が与えられていることを快くは思っていないのです。白人たちのプライドが“food stamp”(困窮者の為の食料費補助対策)を貰うことを許さないという要素もあります。デモに参加している白人たちはその怒りをそこで表現しようとしていると考えられます。私は少なくとも彼等がデモに参加する理由の中心には、これらの不満の表明だと思って見ています。

以上

なお、彼女からは「これは飽くまでも私個人の見解であり、アメリカ人全体の総意ではないとご承知の上で読んで下さい」と注意されています。しかしながら、私には「なるほど、そうだったか」と思わせられるだけの内容でしたので、敢えて紹介する次第。



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