ムチウチみたいに硬直した首と偏頭痛にムチ打って、26日(火)は中伊豆へ、27日(水)は湖西へ、取材で東奔西走しました。カメラや取材バッグが、痛みで肩に掛けられないので、電車は使わず車で移動。ガソリン高騰の折、少しでも低燃費の運転をしようと制限速度厳守で走るつもりが、伊豆も浜名湖も道はガラガラです。もう夏休み渋滞が終わったのか、それとも車両の数がガソリン高の影響でほんとに減っているのかよくわかりませんが、ついついスピードが出てしまって、週明けに満タンにしておいたガソリンタンクは、2日間ですっかり底をついてしまいました・・・。
中伊豆は、赤ちゃん連れでも泊まれるファミリー向けのペンション『ピノキオ』の取材です。シダックス中伊豆ワイナリーの近くにあり、天城連山の素晴らしい眺望が楽しめます。
オーナーの高橋軍記さんは東北出身のエネルギッシュなアウトドア人で、子どもたちにいい空気と自然の恵みと生き物の大切さを教えようと、釣りや昆虫採集などさまざまなレクリエーションメニューを提供しています。20年前、湯ヶ島で1号館をオープンしたときは、バブリーな時代で伊豆高原あたりの高級リゾート風ペンションが流行っていた頃。高橋さんは当時では珍しい子連れ歓迎のペンションを開き、10年前に中伊豆へ移転し、2000坪の敷地をフルに生かして自分でバンガローや露天風呂や体験農園を作って、都会からやってくるファミリー層から厚い信頼を得ています。
消費低迷の昨今、子連れファミリー層を毛嫌いしていた旅館や居酒屋などが、手のひらを返したように子連れウエルカムになっていますよね。以前、テレビでキッズルーム付きの居酒屋を観て、これが居酒屋かと目を疑ってしまったことがありました。
ピノキオの高橋さんのように、子どもの健やかな成長と家族の和づくりのために、信念を持って活動する人に比べると、なんと志の薄いことか・・・。客を増やすためには酒の席に平気で子どもを連れ込めるような場を作ってしまうなんて、親も親ですが、店側もよくないなぁと率直に思いました。もっとも、そんな店には、本当の酒好き・酒呑みは足が遠のいてしまうでしょうね。
昼食に立ち寄った修善寺駅前のごはん屋「也万波(やまんば)」は、10年近く前、修善寺町役場の杉山健太郎さんに紹介された手作り料理の店。オーナー遠藤温子さんに聞けば、地元の人しか知らない伊豆のマル秘情報をゲットできます。
息子さんが修善寺駅前の商店主と協働で作った「えきまえマップ」は、行政が作った観光パンフとは一味違い、各店のオーナーのキャラやお勧めポイントがイラスト付きでコンパクトに紹介された必見マップ。当初は商工会の補助金を使うことも考えたそうですが、使用目的や条件がうるさく、地元の真の声が反映できないとわかって、自主制作で作ったとか。“ナガイものにマカれろ”的な業者や行政マンからはイチャモンをつけられても、このマップは利用客には大好評。自分の映画づくりに重なる話だったので、ついつい私も「ようは、行動するかしないかなんですよ」と力説してしまいました。
マップに紹介されていた三田鮎店にさっそく立ち寄って、能登の波瀬正吉さんに、鮎の甘露煮を送りました。
この時期の落ち鮎の味はぴか一。釣具店でもあるこの店では、プロの鮎釣り御用達の絶品鮎を、炭火焼きにし甘露煮にしています。先刻、さっそく波瀬さんから「いやぁ、うまいっけよ~、昼飯にペロッと食っちまった」と電話をいただき、味覚鋭いプロの杜氏のお墨付きなら間違いなし、と安堵しました。
まだ8月なのに道がずいぶん空いていました、と遠藤さんに話したら、「お盆連休の頃は渋滞したけど、伊豆は道路がよくなって、便利になりすぎて、首都圏から日帰りドライブできる場所になってしまった。家族連れなんかは、サーって車で来て、コンビニで弁当を買って済ませる。ゆっくり移動し泊って遊ぶという人が減ってしまった。落とすのは、お金ではなく、ゴミと排気ガスだけ」と浮かない顔。道路がよくなって却って景気が悪くなるなんて、観光経済の予測ってホントに難しいんだなぁと実感しました。
いずれにしても、利用者に支持され、信頼され、顔の見える商売をしなければ、地域資源は活かされないでしょう。
『吟醸王国しずおか』で、私は当初、静岡県の富士山・南アルプスの景観や水の良さなど、観光ビデオにありがちな映像を入れるプロットを書きました。しかし、酒蔵なら水がいいのは当たり前で、王国の証明にはならないと気づき、吟醸の意味をトコトン突き詰めて、やっぱり行きつくのは人の技であり、人の志だと腹をきめ、人物中心でカメラを据えました。・・・観る人に信頼され、支持される映像になっているかどうか、結論が出るのはまだ遠い話ですが、とりあえず今週末のパイロット版試写会、これが最初の試金石になりそうです。ぜひ皆さん、観にきてくださいね!