いよいよ明日、『吟醸王国しずおか』パイロット版のお披露目会です。静岡新聞夕刊に告知記事を出してもらえる予定が、アフガン事件や豪雨などのニュースでボツにされたようで、ちょっぴり拍子ぬけ…。ですが、鑑賞者の判断を仰ぐ前に大々的に報道されて、冷やかし半分の人が来たりして後々批判されるより、きちんと趣旨を理解して参加申し込みをしてくれた鑑賞者が、落ち着いた雰囲気の中で観て、きちんと批評してくれる環境を大事にしようと思い直しました。
よくよく考えてみると、明日の試写会に事前申し込みをしてくださった人は、自分にとって一生忘れられない宝物のような人たちです。
いくら地酒取材の実績があるとはいえ、映像制作は素人同然の私が作った未完成の映像を、8月の週末夜、時間を作って観に来てくださる。もう、これだけでスゴイことです。本当に心から感謝します。
31日に東京で開催する松崎さん企画の試写会は、パーティー料理と静岡吟醸10銘柄(うち7銘は蔵元持参)呑み放題の豪華版ですから、映像があってもなくてもそれなりに楽しめると思います。一方、明日30日の試写会は上映のみ。にもかかわらず来てくれるというのは、このプロジェクトを直球で受け止めてくれる人たちなんですね。
本や雑誌づくりだったらどうでしょう。執筆途中の原稿や、印刷前のゲラを見せます、と言って、何人集まるでしょうか。映画を作るということが、それだけ多くの人を巻き込み、そのエネルギーを肥やしにできるプロジェクトなんだって実感します。
私はこれまで一匹狼的な立場で、取材に苦労してもしなくても、書いたものだけで判断されるドライな世界で生きてきました。下請け業務が多いので、読者の反応を直接キャッチできる機会は少なく、クライアントが「次もよろしく」と言えば問題なかったのかなと推し量る程度。20数年、そんな世界に浸かって、どこか、書くことへの情熱や緊張感が薄れていたのは事実です。
静岡の酒はライフワークとして、それなりに信念を持って追いかけてきたわけですが、この20年、静岡を飛び出して日本のトップブランドになる銘柄が続出し、地方のライターが地方で細々書くより、東京で活躍するジャーナリストや酒通ライターが全国区の出版社から出す本や雑誌で次々と紹介される。情報発信力ではどう転んでもかないません。
今、改めて振り返ると、映画づくりのきっかけは、『朝鮮通信使』の制作経験だったのは確かですが、その裏には、東京で出来ないことをやろうという対抗意識があったのかもしれません。
自分が下請け慣れし、地方でそれなりに食べていければいいと思っていたら、いくら映像の仕事を経験したからといって、そう単純に映画を作ろうなんて思わなかったでしょう。映画づくりは、自分自身への“喝!”だったんだ…と今更ながら思います。
明日は、酒の映画に関心があるというよりも、「真弓さんの頑張りに刺激を受けたから」という理由で来てくれる人もいます。本当にうれしいことです。
私が誰かに刺激を与えているとしたら、私自身が、静岡の蔵元の頑張りに刺激を受け、同様に刺激を受けた東京のジャーナリストやライターからも、大いに刺激をもらえたから。
モノを生み出すエネルギー、競争相手に挑むパワーというのは、万人に刺激を与えてくれるんですね。もらった刺激は、ちゃんとカタチにして、他の誰かに伝えないと。
静岡が吟醸王国になったのは、それを実践したからだ、と実感を込めて思います。
明日の試写会、2回目(18時30分)、3回目(19時30分)はまだお席が十分ありますので、この夏の最後の思い出に、ぜひ刺激を受けにいらしてください。
◆『吟醸王国しずおか』予告パイロット版試写会のお知らせ
2008年1月から6月まで撮影した一部を仮編集した予告パイロット版をいち早くご覧いただき、制作過程のご報告と、会員増強を目指す試写会を開催いたします。<入場無料、要予約>
○日時 8月30日(土) 1回目上映17時30分 2回目18時30分 3回目19時30分
○会場 静岡市クリエーター支援センター 3階プレゼンテーションルーム(静岡市葵区追手町4-16 TEL 054-205-4759 *静岡県庁南隣、旧青葉小学校)
○申込み しずおか地酒研究会(鈴木真弓) msj@quartz.ocn.ne.jp