今日(9日)は朝一で歯医者。歯肉炎の治療中に右上奥の虫歯の詰め物が2回も取れてしまい、その真下の奥歯がかみ合わせの悪さからか、一部が欠けてしまい、治療が長引いています。虫歯の詰め物が外れてしまったのは、歯の土台である歯茎が歯肉炎の影響で軟弱になっていて、歯そのものがずれるからだそうです。
歯ブラシに加え、歯間ブラシや糸ようじなどを使うようになって、たぶん生まれてこのかた、こんなに鏡をのぞく経験はないってぐらい、こまめに鏡をよく見るようになり、愕然としています。…今更ながらですが、いつの間にか増えてるんですねぇ、頬のシミ。洗顔料、化粧水、美容液、日焼け止めなどの基礎化粧品はわりときちんと使っているほうだと思っていたのに、45歳を過ぎてから急に目立ち始めました。
肩こりや目の疲れやお腹の出っ張り・・・加齢を意識せずにはいられない現象は、身体のあちこちにとっくに出ているのに、顔という、鏡にもろに映る隠しようのない部位に出ると、ほんとショック。歯にこんなに急激にガタが来始めたのも、ショックです。
先週末、映画『ベンジャミン・バトン~数奇な人生』を観ました。以下は、ネタバレの部分もありますので、これから観る予定の人は読まないでください。
80歳の容姿で生まれて、歳を取るにつれて若返り、最期は0歳の容姿で死ぬ主人公は、童顔のブラッド・ピットの適役でした。もともと年齢より大人びて見えるケイト・ブランシェットも、相手役にピッタリ。加齢&削齢(こんな熟語あるのかな?)メイクもパーフェクト。この映画の成功は、まず登場人物の「見た目」にまったく違和感を感じさせない映像技術の高さにあると思いました。技術的にこれだけハイレベルのモノを観てしまうと、テレビドラマのいかにも…の老けメイクや、老人期には別の役者を使う安直さが辛くなってしまいますよね。いずれはこの作品のメーキャップ技術が一般のドラマや映像作品の制作現場にも普及するんでしょう。
作品の価値は、もちろん「見た目」だけではありません。脚本が『フォレスト・ガンプ~一期一会』と同じライターの手によるようで、なるほど、似たような寓話的テイスト。“障害者”である主人公を深い愛情で受けとめる母親、主人公の純粋さを純粋に理解する恋人や仕事仲間など、主人公の周りには“いいひと”がたくさんいるという構図もフォレスト・ガンプに似ています。主人公がいじめや差別に合う話を入れていたら、別のテイストになってしまうでしょう。
ありえない人物設定と、清濁併せ持つリアルな人間が出てこないストーリーで、170分近い長尺ながら、観終わった後は清々しい気持ちになりました。ありえないお話なのに、共感できるシーンがとても多かったからです。
たとえば自分は年齢相応に老けていくのに、恋人はどんどん若返って輝くばかりの青年になる…そんなシチュエーションに置かれた女性の心情は、年下の男性を好きになった経験があれば痛いほど伝わるし、しかも見た目の年齢差はどんどん広がるわけだから、救いようがありません。そんな救いようのない相手でも最後はまさに慈愛の塊になったかのように受けとめる。
以前、父が入院した時、看病する母とダダをこねる父をみて、夫婦というよりも母子に見えたものでしたが、逆は絶対にないなぁ、やっぱり最後に男は女に母性を求めるんだ、などと感じたことを思い出しました。
その一方で、見た目は50代のブラピ(実年齢は20代か)が情事を交わした人妻は、若いころ英仏海峡遠泳に挑戦し寸前で断念した経験があるという。30年後、見た目は20代になった(実年齢50代)のプラピが、レストランのテレビで英仏海峡遠泳に史上最高齢で成功した女性(その人妻)のニュースを偶然見かける。「いくつになっても夢をあきらめない」と語った画面の中の彼女に、彼が笑みを送ったとき、ホロッときました。
主人公が育ったのが、孤児院ではなく老人ホームだったというのも、主人公がキワモノにならずに済んだ一因だと思いました。ホームで暮らす人々は、見方によっては「見た目は老人、中身は子ども」の主人公と何ら変わらない。主人公がどんどん若くなっても、入居者は順に亡くなっていくから、主人公の“障害”に気づく人も指摘する人もいない。彼にとっては居心地のよい我が家だったと思います。そういうホームって現実にありそうだし、自分の父を見ていたら幼児化する老人も確かにいると思う。…この作品の舞台は、限りなくリアルなんですね。
ありえないストーリーであっても、老いること、身近な死を受けとめることなど、人が避けて通れない普遍的なテーマが、俳優たちの穏やかな表現でつづられているので、しみじみ味わって受けとめることができました。監督はプラピとのコンビで『セブン』や『ファイトクラブ』を撮った人なのに、こういう作品を作るようになったとは、監督・役者は、やっぱり年齢相応の人になったのかな(笑)。
ほんのり気分で映画館を出た後、書店に寄って、『マリソル』という女性ファッション誌を手にしました。ファッション誌の類はとんと読まないのですが、マリソルの副編集長と先日、藤枝の酒プレスツアーでお会いし、杉錦のみりんを気に入ってくださってその場でお買い上げもしていただいたのに、まったく知らない雑誌だったので(すみません)、こりゃいかんと思ったのです。
目に留まったのは美容整形に関する記事。…映画の余韻がいっきに冷め、シミや歯痛にさいなまれる現実に引き戻されてしまいました(苦笑)。