18日(水)は静岡県清酒鑑評会の一般公開&表彰式が静岡市葵区の県もくせい会館で行われました。
昨年に引き続いて、『吟醸王国しずおか』の撮影を行いましたが、今回は撮影スタッフに新メンバーが加わりました。フリーディレクターの井内雲二彦(いうち・くにひこ)さん。カメラマンの成岡正之さんが信頼している映像作家で、一緒にテレビ番組や企業ビデオなどを制作しています。
吟醸王国しずおか映像製作委員会の会員だけ先行告知してあったのですが、実は、『吟醸王国しずおか』パイロット版を観たSBS静岡放送の幹部社員から、成岡さんを通じてテレビ特番(1時間番組)の制作をオファーされました。成岡さん曰く「コンテンツの良さもさることながら、一年以上に及ぶ取材の質が評価された」とのこと。…無理もありません、1年以上かけて一つのテーマを映像で追いかける番組作りなんて、NHKならまだしも、地方の民放局では不可能でしょう。
『吟醸王国しずおか』は、私が個人的に追い続けた20年あまりの地酒取材をベースにしたドキュメンタリーで、特定のスポンサーに頼らず、純粋に支援してくださる個人・グループの出資をもとに製作しています。作品が目指すものも実際の撮り方も、根本的にテレビの番組作りとは違うので、最初に聞いた時は正直、尻ごみしたのですが、通常、民放のテレビ番組は提供スポンサーや番組の時間帯の電波料など多額の金が必要で、厳しい経済状況の中、時間枠を出してくれるスポンサーなど早々に見つかりません。それを、内容を評価し、テレビ局側から時間枠を用意してくれて、番販(番組販売=局側が営業してスポンサーを探す)扱いするという。番組制作の下請けで苦労してきた成岡さんからしてみたら、「夢のような話」でした。
手弁当で協力してくれる成岡さんが、映像カメラマンとして、また映像制作会社の経営者として内外に「これが自分の作品だ」と胸を張って示すことができるというのは、私にとってもありがたいこと。過日のSBSテレビ夕刊のニュースでは、私ばかりが目立ってしまって成岡さんの周辺から不評を買ったことを思うと、少しでも成岡さんの顔が立つことなら…と、このオファーをお受けすることにしました。
ただし、局が提示したオンエア時期は3月中旬。話を聞いたのはその2週間足らず前だったので、「そんな短期間に出来るものなのか…」という不安が立ち、「3月12日に県清酒鑑評会があり18日に一般公開と表彰式があるので、目玉の映像になりますよ」と局側にそれとなく相談をかけ、調整してもらって、いったんは4月5日に決まって映像製作委員会の皆さんにも告知したのです。
ところが、年度替わりの改編期で単発の特番が変動されやすい時期にあたり、とりあえず今のところ決まっているのは4~5月中の日曜午後オンエアということだけです(吟醸王国しずおか映像製作委員会の皆さん、すみません、先延べになりましたので、ブログ等で紹介済みの方は訂正してください)。
タイトルは仮題ですが「しずおか吟醸物語」。映画版とはあえてタイトルを変えさせてもらいました。テレビ版はテレビ版で、独立した作品として楽しんでいただければ、と思います。
私自身はテレビ番組の作り方はまったくの素人で、不特定多数の視聴者向けに、このコンテンツを分かりやすく噛み砕き、なおかつ作品が目指すものを損なわずにひと月足らずの間に編集加工するなんて不可能。そこで成岡さんが助っ人に呼んだのが井内さんというわけです。
で、昨日18日の一般公開&表彰式から、井内さんが撮影に立ち会うことになり、私は少し離れたところから成岡さんと井内さんの撮影風景を眺めることに。私が側からああだこうだ口を出すと、井内さんがやりにくいだろうと配慮したつもりでしたが、井内さんが会場で試飲中の人にインタビューを取ろうとすると、ついつい「その人は業界関係者だからダメ」とか「あの人はオタクだからやめといたほうがいい」とか、余計な口をはさんでしまいました(苦笑)。
写真は、私が口出しをして「この人のコメントをもらったほうがいい」と推した英君の望月裕祐さんを撮影中の2人。鑑評会の蔵元代表審査員を今年初めて務めた望月さんのコメントは、地酒ファンなら気になるところだと思ってのことですが、井内さんにはピンとこなかったかも…。
話はそれますが、12日の審査会で、望月さんが香水をつけた女性新聞記者を煙たがってたことをブログに書いたところ、同じく蔵元審査員を務めた小夜衣の森本均さんが「香水も言語道断だが、審査員のすぐ脇に近寄って手元や口元をズケズケ撮影してたテレビ局の連中はけしからん。審査会場を何だと思っているんだ」とおかんむりでした。ずっと外側のポジションから撮影していた私も成岡さんも、気になっていたのですが、会場にいた酒造組合の会長・副会長・事務局長が何も言わないので、私たちが出しゃばって注意するのも…と躊躇したのがいけなかった。私たちまで「けしからんマスコミの連中」扱いされると困りますから、これからは遠慮なく注意させてもらいます!
話はもどり、そのうち、あんまり成岡さんと井内さんの動きを気にしていたら、自分がこの会場でなすべきことを見失いそうになると思い、今年は昨年よりも人数が多いとか、女性も多いとか、蔵元で誰が一般公開に来ているかとか、どんなモチベーションで来ているのかなど、ひたすら来場者の観察に努めました。直接、撮影という行為にはかかわらなくても、鑑評会の一般公開という会場がどういう性格のものか、年によって変わるのかをしっかり取材することが、いざ、映像を編集するときにモノを言うんですね。
ただ現場映像が撮れればいいというニュースや情報番組ではなく、私が作りたいのは、メッセージ性のあるドキュメンタリーですから、どんなナレーションを付けるか、テロップにどんなトーンの言葉を持ってくるか等は、現場をどれだけしっかり取材したかにかかわってきます。
会場には顔見知りの方がたくさんいましたが、私が仏頂面でいたので、たぶん声をかけにくかったと思います。こちらから挨拶もせず、失礼をしちゃってすみません。
12時から14時までの一般公開は、出品酒を一滴も試飲できず、人の顔ばかり凝視する2時間でした。昼食を済ませて14時30分に戻り、2階に用意された関係者だけの試飲会場(製造技術研究会会場)におじゃまして、ひととおり試飲を済ませ、1階ロビーにもどると、蔵元さんたちがテレビの前に釘付け。WBCの対韓国戦の中継に見入っています。高校球児だった井内さんは、劣勢の試合状況に「観ちゃいられない…」と背を向けていました。
…この先、オンエアになる「しずおか吟醸物語」も、こんなふうに大勢が見入ってくれるような作品になればいいなぁと思いますが、どうなりますか。