18日は12時からの静岡県清酒鑑評会一般公開、16時からの同表彰式を撮影後、しずおか地酒サロンを開催する静岡市葵区常磐町の「竹島」へ移動しました。
しずおか地酒研究会で、松崎晴雄さん(酒類ジャーナリスト・日本酒輸出協会理事長)を毎年定期的にお招きして鑑評会の裏話や全国の日本酒動向、海外市場の様子などを聞くサロンを始めたのは1999年から。99年しずおか地酒塾「異郷人が楽しむ静岡の酒」は、松崎さんとジョン・ゴントナーさん(SAKEジャーナリスト)を招いて、日米SAKE談義を楽しみ、70名以上の聴講者で大賑わいでした。
2000年には、6月開催でしたが、やはりこの2人をお招きし、静岡市国際交流協会の協力で地酒サロン「しずおかの酒で国際交流」を開催。市内在住の外国人の方に静岡酒を楽しんでいただきました。
2001年から静岡県清酒鑑評会の審査方法が変わり、松崎さんも民間代表で審査員に加わったこともあって、9月に松崎さんをお招きしてしずおか地酒サロン「どうなる、どうするお酒の評価」を開催。
02年からは県鑑評会一般公開&表彰式の夜、松崎さんと、県知事賞受賞の蔵元を招いて「新酒鑑評会を振り返る」と題したサロンを恒例開催しています。松崎さんが仕事の都合で一般公開表彰式の日に来静できない年は、少し日をずらすなどして、地酒研会員からも「毎年この日が楽しみ」と期待されるサロンに成長しました。受賞を逃した蔵元も、「松崎さんの話を聞きたいから」と自費参加してくれるようになりました。これも、静岡へ来たら地酒研の皆さんに会うのが楽しみ、とおっしゃってくださる松崎さん&蔵元の皆さんのご協力あってのこと。ほんとうにありがたく思います。
さて、今年の“松崎サロン”は、ブログでもご紹介したとおり、静岡県の大吟醸を40年前、客に初めて呑ませた伝説のすし職人・竹島義高さんのお店を会場に、竹島さんには静岡吟醸の歴史を、松崎さんには最新の動向をうかがう特別企画。
いつもどおり松崎サロンの開催店を探していた時、病気療養中だった竹島さんがお店に復帰しているらしいと聞き、なんとしてでも竹島さんのお元気な姿と貴重なお話を『吟醸王国しずおか』の映像に残したい、竹島さんの功績を若い蔵元が受け継ぐという画を撮りたい…という思いと、松崎さんという日本を代表する酒類評論の雄が静岡吟醸の発展にこれだけ寄与している姿を残したいという思いがクロスしたのでした。
17時過ぎに「竹島」へ着いたら、参加者のお一人・染色画家の松井妙子先生に出迎えられました。竹島さんは松井先生が30年ほど前、作品を展示販売し始める前からコレクターとなった、松井先生にとっては“初めての大切なお得意様”。JR静岡駅前のホテル地下にあった入船鮨ターミナル店の壁絵、暖簾、座布団類は、すべて松井先生の作品で統一されました。そんな間柄だったので、松井先生も今回は自宅療養中のお母様の体調を気にしながらも「なんとか参加したい」とおっしゃり、この夜はいの一番に来てくださったのでした。
ない松井先生とこなみ先生に来ていただけるのは感無量で、お2人にはお隣同士で座っていただきました。
静岡酒に特別強いというわけではないお2人の両脇には、青島孝さん(喜久醉)と片山克哉さん(かたやま酒店)に座っていただきました。
19時まで開かれていた県もくせい会館の関係者による懇親会を中座してきてくれた松崎さん、青島孝さん、日比野哲さん(若竹)が到着し、サロンがスタート。まずは今年の県知事賞の開運に祝意を込め、竹島さんのお店にしかない開運(本醸造1合徳利)で乾杯し、竹島さんのお話。お話が始まるとついつい止まらなくなる竹島さんですが、今も治療中の身で、長い時間話し続けると口が乾くため、やや強引に途中で区切って、参加蔵元2社と酒販店主4社が持参した“隠し酒”の試飲に移らせてもらいました。ラインナップは以下のとおり。
◆小夜衣純米大吟醸 平成8酒造年度(ときわストア)
◆鎮国之山(高砂)吟醸 平成8酒造年度(すずき酒店)
◆白隠正宗純米大吟醸 平成17酒造年度(篠田酒店)
◆喜久醉大吟醸 平成19酒造年度県知事賞(青島酒造)
◆初亀 岡部町限定若宮八幡宮千百年祭記念ラベル(ときわストア)
◆開運 初蔵純米粋酔倶楽部限定ラベル(かたやま酒店)
◆若竹 静大そだち(大村屋酒造場)
◆若竹 純米大吟醸(同)
ホスト役の私はまったく呑めなかったので、詳しくは参加酒販店さんのブログ等をご覧いただくとして、参加者からは「持参酒の銘柄がダブらないのはさすが地酒研会員店」と喜ばれました。
この日参加してくれたのは、蔵元2人、酒販店4人のほか、『吟醸王国しずおか』の製作を精神的にも資金的にも支えてくれた、私と成岡さんにとって救世主のような人々ばかり。この日の夜は静岡市内に多くの酒造関係者が集まる年に1度の機会でもあり、他にも酒の会やらお誘いやらたくさんあったと思いますが、この会を選んでくれて、感謝の気持ちでいっぱいでした。東京からは、この会のためだけに里見美香さん(dancyu plus 編集長)が駆けつけてくれて、終了後は「来た甲斐があった」と喜んでくださいました。
松崎さんや里見さんのように情報感度の高い方に、「静岡は酒もいいけど、人もいいね」と感じていただけるようなサロンにしたい、その姿を映像に残したいと願っていた私を、会員さんたちの笑顔と紳士的な態度が支えてくれました。誰かが話を始めると自然に静かになり、メモを取る人も。お酒を乱暴に呑む人や騒ぎ立てる人は皆無です。
この会のことを「酒蔵や酒屋に酒をたかっている会」とか、「お高くとまっている」「レベルが高くて気軽に呑めない」と誤解する人もいる中、「静岡で一番、静岡の酒を大切に呑む会」と言われるようになりたいと努力し続け、この日はそれを心から実感できました。本当にありがとうございました。
サロンの様子は『吟醸王国しずおか』でご覧いただくまでお楽しみ、ということで、竹島さんと松崎さんのお話で心に残った言葉をご紹介しておきます。
「入船鮨ターミナル店は客単価が4万5千円ぐらい。とにかく静岡で最高の鮨を出すことにプライドをかけていた。しかし帰り際にお客さんから“酒がうまかった”と言われると、自分の料理は静岡の酒に負けたのか、と思い知らされた」(竹島さん)
「今年の県鑑評会の審査員を務めた東京農大の進藤先生が、“全国にはいろいろな吟醸造りの流儀があり、酵母開発もさかんになったが、〇〇吟醸と聞いて一番しっくりくるのが静岡吟醸だ。静岡にはそれだけのスタイルがあ り、吟醸といえば静岡とイメージできる力がすでに確立されていると思う”とおっしゃっていた。石川県などが白山周辺の“菊”が付く酒銘の蔵元の集合体を“白山菊酒”と称して、コニャックやシャンパーニュのように産地名イコール銘酒のイメージングを進めているが、静岡吟醸こそ日本で最初にそう評価されるべき」(松崎さん)。