3月30日開催の『しずおか地酒サロン~松崎晴雄さんの静岡県清酒鑑評会2011うらなばし』のつづきです。
しずおか地酒サロンは、ただ酒を飲んで終わり、ではなく、酒縁をつなげる異業種交流を目的としています。私自身、長年酒の取材や会の活動を通して実感していることですが、静岡酒を愛する人は、ブランドやネームバリューに左右されることなく、地元で造られるものを理解し、愛用し、周りの友人や家族に口コミで広めてくれる素晴らしいカスタマーです。
静岡酒の造り手は、どちらかといえば上手に自己アピールするタイプではなく、実直で口べたで、打ち解けるまでちょっぴり時間がかかる人が多いので、それだけに顔と顔をつきあわせ、直接語り合う時間を大切にしようと活動を続けてきました。
「よけいなお世話」と迷惑がっている蔵元さんや酒屋さんもいると思いますが(苦笑)、当会のように川下の末端にいるような場所に集まってくれる人は、目先の利益ではなく、人として、ほんとうに“酒縁”を大切にしてくださる方々です。そんな思いもあって、会ではいつも自己紹介タイムを設けています。
ここでは参加者のみなさんのコメントをかいつまんで紹介します。長くなりますので、何回かにわけて、少しずつ紹介していきますね。
◆望月正隆さん/『正雪』神沢川酒造場(静岡市清水区)
今日はお招きありがとうございました。当社では今期、兵庫県山田錦35%精米の大吟醸を3本仕込みまして、そのうちの県知事賞受賞のタンク1本の斗瓶取り(火入れ殺菌済み)を今日、お持ちしました。
大吟醸3本のうち2本は静岡酵母HD-1で、総米300キロの小仕込みの斗瓶、全量つるしのような仕込みです。受賞したのはそのうちの2本目です。鑑評会直前に搾ったので、滓がひいている状態での出品でした。
秋に行われる名古屋国税局鑑評会で、昨年から『伝統型酵母の部』というのが設けられ、昨年は出品できませんでしたが、今年はこのタンクの酒を火入れをして秋まで取っておいて出品しようと思い、県の鑑評会後、すぐに火入れ処理をしました。今日お持ちしたのは火入れをした状態の、いわば名古屋局の出品酒ということになります。
先ほども松崎さんのお話にありましたが、この酒も酸が低くて軽いという静岡の特徴どおり、酸度1.1、アミノ酸も0.9という軽さです。アルコール添加量も上限10%のところ、6%と少なめで、非常に柔らかい仕上がりです。
今年は全部で60本仕込みまして、そのうちの44本目が『愛山』の酒でした。初めて挑戦する酒造好適米で、非常に手こずりました。
愛山の酒というのは、米の特徴よりも造りの特徴が出やすいといわれます。入手困難な貴重な米でしたが、運よく手に入りまして、50%精米で600キロ、純米吟醸として仕込みました。搾ったのはちょうど震災の頃ですね。ちょっと甘いかなというタイミングでしたが、メーターで日本酒度0、酸度1.3という仕上がりです。今日の午前中に瓶詰してきたばかりで、販売価格は未定です。
このラベルのデザインも、とりあえず貼り付けてきたもので正式発売時には変更になるかもしれません。ご了承ください。
◆青島孝さん/『喜久醉』青島酒造専務取締役・杜氏(藤枝市)
正雪さん、受賞おめでとうございました。私のほうは今朝(30日)、今期の酒造りがひと段落しました。今夜は久しぶりの外出で、社会復帰のリハビリのつもりで手ぶらで来ました。すみません(笑)。
今年は松崎さんのお話にあったように、猛暑の影響で硬く融けづらい米もありましたが、非常にいい米もありました。米の良し悪しがハッキリしましたね。こういう年だからこそ、良い米はその良さを存分に引き出し、悪い米は造りでリカバーしようと努力しました。例年になく米の特徴と造りの技能がモノを言う年だったのではないかと実感しています。いい勉強ができた年でした。
◆高橋克壽さん/創菓季薫 御菓子司 扇子家(牧之原市)
旧相良の静岡銀行裏で菓子屋を営んでいます。この会には初めて参加しました。
たまたま私の母の兄が、県の酒造組合に勤めていた故・栗田覚一郎でして、若い頃から鑑評会出品酒を内緒で飲ませてもらったりしていました。スーパーや量販店で売っている酒とは全然違う。日本酒って本当にうまいな~と実感していました。ただ覚一おじさんは自分の仕事の話をほとんどしなかったので、実際に静岡の酒がどうのこうのというのは知らずにいました。
3年ほど前、たまたま鈴木さんが当店に取材に来てくださって、その後、ブログを拝見したら地酒に詳しい方だとわかり、覚一おじさんのことをいろいろ聞きました。島田の『おんな泣かせ』のパッケージがおじさんの字だと知って、母も本当に感激していました。
静岡県からこの3月に、『ふじのくに食の都づくり仕事人200~静岡県の食材辞典』が発行され、私も紹介していただきました。毎日コツコツ作業する職人にとって、外から評価していただくというのは大変励みになります。甘辛両党遣いで頑張ります。
◆高橋俊光さん/財団法人駿府博物館副館長(静岡市葵区)
SBS静岡新聞社の社員で現在は駿府博物館に勤めています。しずおか地酒研究会にも長くお世話になっています。今日は初めてお会いする方が多く、刺激的で楽しいですね!
酒とは関係のない話で恐縮ですが、ひょんなことからホノルルマラソンに出場し、映画にも出演したんです。そのうちにドリームランナーズというマラソン仲間が出来まして、リーダーから「東京マラソン走ろう」と言われ、みんなで申し込んだらなぜか自分が2年連続で抽選に当たりました。9倍近い応募のうち、連続当選と言うのはなかなかいないみたいで、ラッキーでした(笑)。
今年の東京マラソンでは、友人の精神カウンセラーが「うつ病で自殺する人が年間3万人いる、なんとかしたい」と活動を始めたので、それを応援しようと、ブタの着ぐるみを来て、なるべく沿道を観客にハイタッチしながら5時間42分で完走しました。