杯が乾くまで

鈴木真弓(コピーライター/しずおか地酒研究会)の取材日記

松崎晴雄さんのしずおか地酒サロンその4

2011-04-04 09:44:06 | しずおか地酒研究会

 3月30日開催の『しずおか地酒サロン~松崎晴雄さんの静岡県清酒鑑評会2011うらなばし』、参加者の紹介コメントのつづきです。

 

◆萩原和子さん/日本酒学師・篠田酒店ドリームプラザ店(静岡市清水区)

 今日はナンバーワンのお酒を試飲させていただいて、本当に感激しています。それにしても、日本のお米と水だけが原料なのに、どうしてこんなに違うのかなあって改めて不思議に思います。

 同じお酒でも、今日呑むのと明日呑むのと4日ぐらい後に呑むのでは違う顔を見せてくれますね。お店では、「こんにちは」「今日はどう?」なんてお酒に語りかけながら過ごしています。

 

 よくお客さんから「開けたらすぐに呑まないと劣化しますか?」なんて聞かれるんですね。そんなときは「やさしく語りかけてください」ってお返事しています。お酒は生き物です。もっともっと、命あるものだと感じ、その子が一番嬉しい形で飲んでほしいなあと。蔵元さんも酒販店も一生懸命育てていますので、呑み手のみなさんも愛情を持って接していただきたい。「なんだこの酒は」なんて否定しないでくださいね。

 

 

◆佐藤隆司さん/東海メディアミックス社長(浜松市中区)

 浜松で広告代理店の仕事をしておりますが、そろそろ引退の域に入っており、飲む機会ばかり多くて、浜松では私は「酒」だと思われています(苦笑)。浜松でも地酒の伝道活動を頑張らせてもらっていますが、そのきっかけはしずおか地酒研究会です。発会当初から参加し、いろいろな刺激をもらい、酒縁というのは本当にすごいと実感しています。

 昨年も、いつもメールをくれる東京の酒通に誘われていった酒の会に、獺祭、まんさくの花、天狗舞等などの蔵元衆や、内閣参事官とか日本で何本指に入るITの社長さんなんかが集っていました。みんな「酒縁」だけでつながっているんですね。これからも末長く酒縁をつなげていきたいと思っています。

 

 

◆米山庸さん(静岡市駿河区)

 4月で満75歳になります。45年間、経営してきた米山塗装(富士市)を娘夫婦に渡し、昨年末に生まれ故郷の静岡市に引っ越してきました。90歳になっても日本酒を味わえる人生を送りたいと切に願っています。後期高齢になって、周囲には世の中の流れについていけない人ばかりなんですが(苦笑)、日本酒を飲み続ければ大丈夫、と言い聞かせています。

 今日着てきた着物は、5年間介護し、亡くなった主人の着物と長じゅばんをリフォームしたものです。今日は夫に背を押されて来ました。着物と日本酒、これからも大切にしていきたいと思っています。私で用が足りなくてもどうか気軽に呼んでくださいね。

 

 

◆野田愛美さん/訪問理容オレンジドリーム(静岡市清水区)

 いろいろなお酒の会にしょっちゅう顔を出すので、顔見知りの方も多いのですが、このような会でまともに名乗らせてもらうのは初めてです。よろしくお願いします。

 

 私は清水区で訪問介護をしながら理容師として髪の手入れをさせてもらっています。今日はこういう時期なので、阪神淡路大震災のボランティア経験をお話します。

 1995年1月17日の震災当日、すぐに市役所へ行ったのですが、「消防に行ってくれ」「警察で聞いてくれ」とあちこちたらいまわしにされました。当時はボランティアが入る隙間がまったくなかったんですね。

 

 私の親方が熱心な方で、いろいろ動いてくれて、車で現地に入るには通行許可証が必要だとわかりました。現地の知り合いには「すぐに行くよ」と約束したのになかなか許可証がもらえず、結局、現地入りできたのは1ヶ月後でした。何度も何度も同じ顔が市役所、消防、警察署を回ってお願い連呼したので、お役所も根負けしてハンコを押してくれたんです。

 

 で、1ヶ月後にやっと現地に入ったら、ボランティアはもう要らないと言われました。私たちは避難所で散髪サービスをさせていただきましたが、現地では「外から来る人は特殊な技能を持つプロならウエルカムだが、素人は不要」というスタンスでした。最終的には被災者が自立しなければいけないので、被災者自身でボランティアをするんですね。

 避難所は1ヶ月経っても大変な状況でした。泥棒がすごいんです。救援物資が届きましたよ~と言いながら、自分で持って行っちゃう。宅配便を装いながら持って行っちゃう。あくどい商売をする人もいて、ちっちゃなブルーシートを2000円ぐらいで売りつけたりするんです。

 

 水や電気がない場所は、悲惨な衛生状態でした。トイレはものすごい数の新聞紙の上に用を足してゴミとしてまとめるしかない。食中毒や感染症対策に追われる保健所の方々は本当に大変でした。今回は現地の寒さ対策が問題になっていますが、ご遺体が置かれた状況や避難所の衛生面を考えたら、猛暑の時期よりはマシかな・・・と実感しています。

 

 ある避難所にはお菓子ばかり大量に来ていて、「よかったら持ちかえってくれ」と言われました。さすがにボランティアで来た身でそれは出来ないとお断りし、「なぜお菓子を断れないの?」と聞いたら、「断ったら二度と物資が来ないかもしれないので、とりあえず何でも受け入れる」とのことでした。お菓子の段ボールの山に子どもは喜んでいたけど、ご高齢の方は本当にお気の毒でした。

 

 今回は阪神淡路のときよりも状況が深刻で、求められるボランティアの量や質も異なると思いますが、阪神淡路の教訓はぜひとも生かして被災者支援に有効に結びつけてほしいと願っています。

 

 我々にできることといったら、まずは経済を止めないということですね。静岡まつり、桜えびまつり、安倍川花火をみ~んな中止にするってどうなんでしょうか。節電や節水を心掛けつつ、我々はふだんと変わらない生活をして、経済をしっかり回していくべきではないかと思います。

 

 

 

◆平野斗紀子さん/フリー編集者・tamara press(静岡市葵区)

 栗田覚一郎さんのお名前が出て懐かしく思い出しました。この会に参加するのは本当に久しぶりで、しずおか地酒研究会を立ち上げた時(1996年)以来ですね。あの頃は真弓さんもピリピリしていて、「静岡の酒を静岡県民全員に呑ませなきゃ」なんて意気込んでましたね。

 昨年まで夜勤の仕事(静岡新聞社編集局整理部)をしており、牢獄暮らしのような日々を送っていたのですが、やっと脱獄・脱藩しまして(笑)、日が昇ったら起きて働き、日が沈んだら酒を飲むというのが、極めてまっとうな人間の暮らしだと実感しています。

 編集の仕事は生涯の仕事だと思って続けていこうと思います。タマラ・プレスとは東京五輪に出ていたソ連の女性砲丸投げの選手で、テレビで、ジャポシンスキーというものすごい大男とタマラ・プレスを見た時、ものすごいカルチャーショックを受けまして、この世代の人なら共通の話題になるかなと思い、プレスをpress(報道)に引っ掛けて使っています。“最後は力技でねじ伏せる”という意味も込めて(笑)。

 

 

◆内田一也さん/創作珈琲工房くれあーる(静岡市駿河区)

 初めて参加します。お酒とコーヒーって関係ないような気もしますが、ともに農産物を原料とし、共通項があると思っています。違いといえば、日本酒は醸造発酵飲料で身近なところで原料調達できますが、コーヒーの場合は地球の裏側まで行かないと原料が手に入らないということ。収穫してからコーヒーになるまで延べ200人ぐらいの人の手を要しますが、多くの人の手を要するという意味では日本酒も同じだと思います。

 

 食べ物というのは原材料の農産物から製品化されるまで多様なルートを通ります。原料を粗雑に扱い、価格を値切って値切って、原料から消費者がどんどん遠くなる世界と、逆に原料と消費者がうんと近づく世界があります。地酒がまさにそうですね。その意味で、この会に参加できて本当に良かったと思っています。

 

 コーヒーの世界にも国際審査会『カップ・オブ・エクセレンス』があり、私も毎年行くんですが、今日は昨年第2位になったホンジュラス産コーヒーをお持ちしましたのでチャリティーに寄付させていただきます。