杯が乾くまで

鈴木真弓(コピーライター/しずおか地酒研究会)の取材日記

身延山久遠寺&下田黒船祭取材

2012-05-19 09:58:46 | 地酒

 今週は1日おきにお出かけ取材が続いています。16日(水)は身延山久遠寺とその周辺。三門から本堂に続く高さ104メートル・287段の石Dsc00443段「菩提梯」を、まともに登り降りしたので、ビンビンの筋肉痛です。

 

 

Dsc00438
 以前訪れたとき(こちら)には修復中だった五重塔もこのとおり。金剛組、さすがにいい仕事をします!!

 新東名の新清水ICが山梨県との県境に近い宍原地区に出来たので、我が家から近い新静岡ICからだと、身延方面は本当に“近場”になりました。JR身延線も無事復旧したし、もっともっと南北の交流が活発になるといいですね。

 

 

 

 

 

 

 18日(金)は下田黒船祭の取材。黒船祭をまともに見るのは初めてです。街中に星条旗と日の丸が掲げられ、米国海軍の制服を着たガタイのよいみなさんが闊歩してました。

P1000003
 ペリー提督が降り立った上陸の地で、記念の献花式があり、ペリーの出身地ニューポート市の市長さんや市議会議員のみなさんと下田市側の行政関係者が献花しました。青空にはためく二国の国旗が清々しかった・・・!

 

 

 

 Photo
 

 取材が終わった後、地域おこしに尽力する下田にぎわい社中のみなさんと地酒『黎明』(高嶋酒造製)を呑みました。

 ご存知の方も多いと思いますが、下田市内で栽培された米で醸し、下田在住の女優有馬稲子さんが酒銘を名付けた地元限定の純米吟醸酒です。地元の酒通曰く「以前、別の蔵で造っていたころは吟醸香が立っていたが、今は純米らしいおだやかな味になった」とのこと。一緒に比べて呑めるとよかったな・・・。

 

 

 

 

 かつて、1ドル360円だった頃は、黒船祭にやってくる米国人の数はハンバじゃなかったそうで、町は大変なにぎわいだったとのこと。でも昨夜はガタイのよい米国軍人さんたちが、通りの屋台でワンコインサービスの焼き鳥や缶ビールで細々・・・といった風情で、地元の人やP1000013
日本人観光客のほうが圧倒的に多かった。この日くらい、海の外からやってきた人たちにドーンとサービスしてあげてもいいのになあと思います。

 

 私なら、地酒のブースを出して樽酒呑み放題とか、山内容堂に坂本龍馬の脱藩を許してもらうため、呑めない酒を一気飲みした勝海舟の太っ腹(こちらを参照)に敬意を表し、枡酒早飲みコンテストなんてやっちゃうのになあ(笑)。

 

 

 

P1000011
 下田黒船祭には、昨年の震災でトモダチ作戦を敢行した米軍への感謝を伝えに、岩手県山田町からも市民の参加がありました。今回は下田の物産ではなく、山田町の海鮮グルメをお土産に買って帰りました。

 

 

 

 明日(20日)は掛川へフルーツ狩りの取材、来週は広島~京都へ行ってきます。数日、ブログ更新をお休みしますが、面白いネタをいっぱい拾ってきますのでお楽しみに!


満寿一deはしご酒 開催のお知らせ

2012-05-17 16:37:45 | しずおか地酒研究会

 先週、静岡新聞夕刊に記事が出たのでご存知の方も多いと思いますが、6月2日(土)、静岡市街の居酒屋8店が協賛する『満寿一deはしご酒』が開かれます。今回は8店すべてで、満寿一をはしご呑みするというスペシャル企画です。

 

 

 街中の居酒屋を回るはしご酒ツアーや街コン企画、最近各地で活発ですね。趣旨や目的はどうあれ、あまりアルコールを飲まなくなった若い人や家呑み派が増える中、苦戦する居酒屋さんに人が集まるきっかけになるって喜ばしいことです。

 

 

 そんな中で、「地酒を呑む」という一点に特化し、参加各店に蔵元を配置し、地道に回数を重ねてきた静岡deはしご酒。年々参加者が増え、清水、藤枝、沼津と開催地も広がってきました。私が改まって言うまでもなく、これはひとえに、主催者の山口登志郎さん(「湧登」オーナー)の、造り手と呑み手をつなごうという真摯な思いの賜物ですね。

 

 

 

 今回は、公式サイト(こちら)にも書かれているように、今年、蔵元の急死によって酒造りの歴史を閉じることになった『満寿一』を、ゆかりのある人々や地元ファンの総力で、“記憶に残そう”と企画されました。同志でありライバルでもある國香&喜久醉の蔵元も、満寿一を語るためにわざわざ時間を作って参加します。他の業界では出来ないことだろうし、ただでさえ人気があって各試飲イベントにひっぱりだこの2人が、自社以外の酒を消費者に紹介するって、この2人にしっかりとした考えや思いがなければ実現し得ないことです。

 

 造り手同士の深い絆、造り手を大切にしようとする売り手や呑み手の思い・・・長年、「造り手・売り手・飲み手の和(輪)」を標榜して活動してきた身としては、一部であれ静岡酒の環境が着実に好転していることをしみじみ実感できます。

 

 

 満寿一さんとお付き合いの長いしずおか地酒研究会が、なぜ満寿一さんを偲ぶイベントをやらないんですか?と訊かれたこともありますが、山口さんはじめ多くの伝道師が活躍する今、ある意味、会の使命は達成されたのかもしれないし、役割が一つ終わった・・・と思っています。真の銘醸地ならば、“造り手・売り手・飲み手の和を創らなければならない会”が存在しているって変だし、そんな会がなくても、自然に、地元の店には必ず地酒があって、地元の人に愛される・・・そんな地域が理想なんですよね。

 

 

 6月2日の『満寿一deはしご酒』、午後5時半から、静岡市街中心部の以下の8店で、それぞれの店の酒肴と満寿一を味わってください。費用は1店舗1000円。

 

◆参加飲食店/大作(静岡アスティー東館)

           かくれ家(昭和町)

           たがた(常磐町)

           狸の穴(七間町)

           のっち(七間町)

           華音(両替町)

           湧登(南町)

           MANDO(呉服町) 

 

 

 この8軒のどこかに、満寿一蔵元夫人の増井智恵子さん、松尾傳一郎さん(國香)、青島傳三郎さん(喜久醉)がそれぞれ待機していますので、満寿一という酒の思い出、若くして逝かれた蔵元増井浩二(傳次郎)さんのことを思う存分語り合ってください。私も某店でお手伝いする予定です。


茶の品評会と酒の鑑評会

2012-05-15 09:37:34 | 地酒

 13日(日)は川根本町おろくぼ地区の茶農家へ茶摘みに取材に行きました。静岡を代表する日本茶インストラクターとして活躍中の土屋裕子さんのご実家・つちや農園で、全国茶品評会へ出品する茶を町民60人余で摘み取る姿をカメラに収めました。

 

 

Dsc00361
 川根本町では、全国へ出品する茶農家が10軒割り当てられていて(・・・茶の世界では、オリンピックみたいに過去の実績によって出品数が地区別に割り当てられるそう)、この10軒は町の顔であり誇りである、という思いで、町産業課が音頭を取り、町民が率先して茶摘みにはせ参じるそうです。出品茶はすべて手摘みなので、とにかく人手が要るんですね。・・・出品茶農家にとってはプレッシャーになるだろうし、選抜10軒だけ優遇するのかと反対意見も出てきそうだけど、こういう応援のしくみ、素晴らしいと思いました。

 

 実際、つちや農園は平成20年と23年に大臣賞を見事受賞。単独農家が数年のうちに複数回大臣賞を獲るというのは、この世界ではとてつもない偉業だそうで、その土屋さんに加え、2位・3位には、川根本町選抜10軒の高田さん・丹野さんが入り、いわば“表彰台独占”に。この町の茶の生産技術が日本随一であることを証明してみせました。

 

 

 

 

Dsc00339
 川根本町(旧中川根&旧本川根)地区は、山間部の斜面を切り開いて茶畑が点在しています。土屋さんの農園は標高600メートルにある、“天空の茶産地”。平地より寒いし、霜の被害も多いし、鹿児島あたりに比べて新茶の時期も遅い。川勝知事は八十八夜新茶をブランド化しようとさかんに呼び掛けていますが、ここは八十八夜(5月1~2日あたり)にギリギリ間に合うといった環境。鹿児島茶が数量で台頭してくると、新茶の時期にはどうしても不利になります。

 

 

 

 

 

 量では難しいのであれば、品質で勝負するしかないし、数値で判断できない“品質”を、誰もがわかるように証明するには品評会で上位入賞するしかない。町としても、他に基幹産業がなく、農産物の中でもお茶しかないということであれば、お茶を集中して支援しやすいだろうし、その中でも出品茶を作る意思と技術のある10軒に特化して支援Dsc00370_2
する・・・。おそろいのTシャツを身にまとい、10軒の出品農家の茶摘みには産業課スタッフ全員ではせ参じ、摘んだ茶は町で手配した保冷車で町農林業センターにある製茶研修工場へ運び、町、県、JA、機械メーカーの技術者が特命チームをつくって朝から深夜までつきっきりで製茶加工するのです。この体制はすごい・・・!と実感しました。

 

 

 

 

 今、酒の世界でも全国新酒鑑評会の審査真っ只中で、まもなく結果が発表されます。今年は全国鑑評会が100回目という節目の年。先月、松崎晴雄さんがしずおか地酒サロンで講演してくださったように(こちらを参照)、世界のアルコール業界の中でも、(人気コンテストではない)極めて専門性の高い技術審査会として100年という歴史を持つのは日本酒だけ。来週、東広島で開かれる一般公開には久しぶりに足を運ぼうと思っていますが、お茶の品評会のしくみと出品者のモチベーションには改めて違いがあるんだなあと実感しました。

 

 

 

 

 酒の世界では、もはや、鑑評会で受賞することが、絶対的な品質証明ではなくなった感があります。こうして今、改めて、茶農家の品評会に対する真摯な取り組みやそれをバックアップする地域の姿を目の当たりにして、20数年前、私が酒の取材を始めた頃の、県内各蔵の出品酒に対する“熱”を思い起こし、ちょっぴりほろ苦い気持ちになりました。

 

 どっちがいい悪いの話ではありません。茶は、静岡では「顔」になる産業であり、上位入賞がいわば義務付けられている。酒という産業が「顔」になっている県では、今でも同じように入賞必須の思いで取り組んでいるのでしょう。

 

 100年目の全国新酒鑑評会、どんな結果になるでしょうか・・・。

 


日帰りドライブ to あしかがフラワーパーク

2012-05-13 09:34:00 | 日記・エッセイ・コラム

 いつも仲良くさせていただいているNPO法人活き生きネットワークの杉本彰子さんから「テレビであしかがフラワーパークの大藤が紹介されていたから、(園長の塚本)こなみさんに電話したら、10日前後がベストだって」と電話をもらい、急きょ、5月12日(土)に観に行くことになりました。活き生きネットワークの男性スタッフに運転をお願いし、朝6時に静岡を出発。新東名→東名→新首都高→東北道をスムーズに通り抜け、4時間ちょっとで足利に到着しました。

 

 塚本こなみ園長は、残念ながら、仕事で浜松に居られたため、お会いできませんでしたが、代わりに、こなみさんの大藤が、見事な姿で出迎えてくれました!

 

 

Dsc00305

Dsc00302

Dsc00311

Dsc00298
Dsc00308

 600畳敷きの大藤棚3本、八重藤の大棚、長さ80メートルの白藤トンネル&きばな藤トンネル、そして数々の季節の花々。藤の見ごろはいつもGW中だったのが、天候不順のために1週間ずれたようです。

 

 この時期にしては空気が冷たく、乾燥気味でしたが、絶好のお天気でお花見には最適でした。大渋滞&大混雑を覚悟したものの、臨時駐車場があちこちに用意され、導入もスムーズ。園内は、以前に比べて食事処やショップがかなり充実し、ほとんどストレスを感じることはありませんでした。

 

 

 

 

 いい歳の大人が花見をしながらソフトクリームや団子まんじゅうに舌鼓を打ち、帰りは高速道路のサービスエリアを3か所もはしごして、それでも18時には静岡へ戻ってくることができました。あしかがフラワーパークがいつにも増して身近な存在に感じられた一日でした!


ENJOY JAPANESE KOKUSHU

2012-05-12 04:57:52 | 地酒

 長年、酒の世界に関わっていると、実名ブログで発信する情報にはそれなりの配慮が必要になります。本当にいろんな人の目に留まるんですよね。ウエブでの情報発信に慣れない頃は、自分の日記なんだから思ったことを素直に書こうと、振り返るとずいぶんオトナげないことを書いてせっかくの酒縁を台無しにしてしまったことも・・・。

 

 酒について書くのは、あくまでも仕事として、第三者の校正の眼が入る媒体のみにすべきかも・・・と思ったこともありましたが、やっぱりブログのおかげで、遠い世界の人から、思いがけないアクセスをいただき、別の酒縁が広がったりするので、どうにもやめられません・・・。

 

 

 

 

 

 

 今年に入って、そんな新たな酒縁をくださったSさん。酒に関しては、私とは全く別の立場で深いかかわりがある方で、以前、静岡県内に勤務されていて、地酒イベントで名刺交換をしたことがありましたが、ご本人いわく「國香さんが県知事賞を取った年だった」とおっしゃるので、かなり前の話・・・。

 

 Sさんはその後、東京に異動され、その後は互いに音信不通でしたが、昨年末、このブログで、東京のある新酒イベントを紹介したところ、思いがけず、Sさんから「スズキさんの情報のおかげで参加できました!」とメール。「自分も都内で酒の会をやっているので機会があったらぜひ」とお誘いを受け、今年2月に参加させていただきました(こちらの記事)。

 

 

 

 

 

 その後、Sさんからは、静岡のローカルライターでは、すぐにはゲットできないレアな酒情報を定期的にいただけるようになりました。

 

 

 昨日(11日)、いただいたメールによると、今、政府の国家戦略室に、日本酒を政府一丸で世界へ輸出促進するプロジェクトが立ちあがり、有識者6人による“ENJOY  JAPANESE  KOKUSHU推進協議会”という会がスタートしたようです。そういうプロジェクトが水面下で動いているという話は、それとなくうかがっていましたが、昨日(11日)午前の古川大臣の定例会見で明らかになったので、ここでも書かせていただくこととしました。

 

 

 

 

 国家レベルのプロジェクトなんて、私には遠い遠い世界の話なんですが、ここ1~2年、『吟醸王国しずおか』を海外にも発信できる映像作品に、という気持ちで仕切り直しをしているだけに、流れとしては間違っていなかったのかなと感じます。

 土俵が大きくなればなるほど、地方の限定された存在や情報が持つ価値も変わってくるでしょう。世界の中の静岡酒、という視点にも、それなりの意味が出てくると思います。静岡のポジションを俯瞰でとらえる視点は、静岡の中だけで縮こまっていたら持てませんが、自分は幸運にも県の広報の仕事に長年関わっているおかげで、多少は養われたかもしれません。

 

 

 

 

 たまたまですが、今、知り合いのアーティストを蔵元につなげ、新たなマーケット層に訴求できる地酒のブランドデザインが出来ないか提案しているところです。私にできることといえば、ローカルの中で、いろんな分野のプロフェショナルに種を蒔いて、酒に内在する潜在能力を引き出してもらう・・・そんな縁結びみたいなことしかありませんが、私の存在を煙たがらず、受け入れてくれる蔵元がいる限り、力を尽くしたいと思っています。

 

 

 

 ブログでの酒情報発信に躊躇していた頃に比べると、そんなふうに能動的に行動する機会を与えてくれたのは、まぎれもなく、ブログを通して酒縁が復活できたSさんのような存在です。そういう酒縁を心からありがたく、大切にしていかねば・・・。

 

 

 

 なお、ENJOY JAPANESE KOKUSHUプロジェクトに関する公表物は国家戦略室ホームページにアップされています(こちら)。ブルームバーグのウェブニュースにも紹介されています(こちら)。ぜひご参考に。