長い間読書から遠ざかっていた私は荻原浩の名はもちろん、直木賞作家だということも全く知らなかった。
書店でこの本を手にしたのは、君の名は。で何度も泣いてしまった直後だったので「8回泣けます」っていう手書きポップに誘われたから。私と同世代の男女そして家族の今、過去を描いた短編8作。むさぼるように本を読んでいた20代前半にはわかるはずのない中年男女の人生の機微。泣くこともなく読み終わったので「XXXX堂の嘘つき!」と思ったが(笑)、自分の人生が二重写しになった場面がいくつかあって、しばし頁を閉じてあの時を想った。