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フランス 日本へのまなざし③ “対日”キーマンが語る 大統領訪日のねらい

2013-06-06 08:25:25 | 海外ネットワーク
6月2日 NHK海外ネットワーク

成長を実現するためには経済や社会の構造改革が欠かせないという点で
フランスと日本は共通の課題を抱えているというのがオランド政権の認識である。
加えて前のサルコジ政権が中国との関係にばかり熱心だったという印象があるため
今回の大統領の日本訪問は日仏関係の重要性をアピールする絶好の機会だととらえている。
大統領は日本との間でどのような関係を築こうとしているのか。
フランス政府きっての知日派 フランス外相特別代表 ルイ・シュバイツァー氏(70)。
大叔父はアフリカで医療奉仕しノーベル平和賞を受賞したシュバイツァー博士。
哲学者のサルトルも遠い親戚である。
フランスの対日関係の推進役を務めるシュバイツァー氏は
フランスの厳しい現状を打開するヒントが日本にあると考えている。
(フランス外相特別代表 ルイ・シュバイツァー氏)
「日本でも実施された政策を参考にすべきだ。
 それは構造改革の着実な実施だ。
 オランド大統領は日本をとても重視している。
 今こそ日本とフランスは戦略的パートナーシップを確立すべきだ。」
フランスの自動車メーカー ルノーの会長を13年間務めたシュバイツァー氏。
日産自動車と資本提携を進めた経験があり日本経済を熟知している。
(ルイ・シュバイツァー氏)
「アベノミクスの成功は世界経済にとって重要だ。
 日本政府が再び経済を成長させることができれば
 日本は世界における役割や存在感を増していくことになる。」
4月にブリュッセルで行われた
日本とEUヨーロッパ連合との自由貿易自由化を目指すEPA経済連携協定に向けた交渉。
フランスはEUの中核を担う立場から食品の安全基準などの非関税障壁などについて
日本に柔軟な対応を求めている。
(ルイ・シュバイツァー氏)
「貿易の自由化だけが目的ではない。
 お互いの長期的な成長と雇用の増加につなげていくことも目指している。
 双方の貿易を強化し成長につなげるため非関税障壁を撤廃しなければならない。
 『非関税障壁は撤廃されつつある』と日本が主張するのであれば
 実際にEUから日本への貿易が増えていることを示す必要がある。」
福島第一原発の廃炉に向けた作業が続く日本。
電力の80%近くを原子力でまかなう原発大国フランス。
日本とフランスはともに原子力発電の将来に責任を負っていると指摘している。
(ルイ・シュバイツァー氏)
「安倍首相もオランド大統領も少なくとも今後数10年間は
 原子力エネルギーが経済発展のために欠かせないと認識している。
 首脳会談では原子力が安全で安心であることをどうやって実現するのか
 その実現に向けた協力について取り上げられるはずだ。」
東アジアで中国を重視してきた前のサルコジ政権。
オランド大統領は“中国から日本へ”と軸足を移そうとしていると言われている。
シュバイツァー氏は民主主義や人権といった価値観を共有する日本とフランスが協力すれば
アジア太平洋地域の安定にも貢献できると考えている。
(ルイ・シュバイツァー氏)
「日本とフランスには共通の価値観がある。
 これは極めて重要なことだ。
 もはや中国を無視することは誰にもできないが
 我々の価値観を中国が受け入れるようにすべての国が協力していくべきだ。
 アジア太平洋地域の安定は日本の国益であるばかりでなく世界中の国の利益でもある。
 日本とフランスはこの地域の安定にともに努力していくべきだ。」

フランス人の日本人に対する親しみの念がかつてないほど強まってきている。
20年前は日本食や日本文化は一部の知識人やエリート層だけが好むものだったが
いまや一般の人に日常生活に食い込んでいる。
20年前の日本人のイメージは“お金儲けはうまいが休みもとらずに働くアリ”
といういささか侮蔑的なステレオタイプが支配的だった。
それが東日本大震災で人々が示した他人を思いやる心や規律のとれた行動が
多くのフランス人に深い感銘を与えた。
フランスでは利害に基づいた国同士の友好関係を“理性による結婚”とたとえるが
国民同士の草の根のレベルを見るかぎり
フランスと日本のあいだは“愛情による結婚”が可能になるという土台が整いつつある。
オランド政権の幹部が日本との関係をパートナーシップというが
経済はもとより政治や安全保障あるいは文化といった幅広い分野でともに手をたずさえて行こう
という意味合いが込められている。
とかく経済面だけがクローズアップされがちな中国と最も違う点である。
日本とはお互いに補い合う関係を目指していく
たとえば今回の首脳会談でも取り上げられるテロ対策。
テロが頻発するアフリカや中東地域
日本が比較的弱いとされている地域の情報について
フランスが伝統的に強いとされる地域で情報を提供する代わりに
アジアで活動するフランス人やフランス企業の安全を確保するために
日本の助けが必要という意味合いである。
オランド政権は今回の大統領訪日を
包括的なパートナーシップを築くための重要な一歩としたいと位置付けている。
日本とフランスとの関係は
日中や日米、米中との関係に比べても差し迫った懸案があるわけではないが
そのぶん共通の価値観を土台に
世界の将来を見据えた成熟した協力関係を築いていける余地があるはずである。
そのためにも経済の再生を通して国際社会での存在感をとり戻すことが
日仏どちらにとっても大きな課題となっている。

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