日暮しの種 

経済やら芸能やらスポーツやら
お勉強いたします

そして祈りは果たされた

2013-06-15 12:42:12 | 編集手帳
6月5日 よみうり寸評

MF本田圭佑の左足に日本全国のファンの目が集まった。
祈る思いが込められていた。
入れてくれ!

サッカーの2014年ワールドカップ(W杯)ブラジル大会出場のキップをかけてPKをける瞬間だ。
左足を思い切り振ってゴールのど真ん中にけり込んだ。
本田のその度胸に驚嘆する。

サッカーは〈宗教儀式〉で、
その試合は祭礼、
スタジアムは神殿、
フィールドの選手は若き神々という例えがある。
オーバーだと思うが、
本田の足に祈りを込めたときは、
うなずけた。
そして祈りは果たされた。

4日夜のオーストラリア戦、
埼玉スタジアムは沸きに沸いた。
1点ビハインドの試合終了間際で感動もひとしお。
同点引き分けに持ち込みW杯出場が決まった。

20年前の予選敗退が〈ドーハの悲劇〉なら、
今度は〈さいたまの歓喜〉だ。
歓喜は全国に広がった。
試合が祭礼ならお祭り騒ぎのファンはさしずめ氏子だろう。

「みなさんは12番目の選手。
 フェアプレーで」と東京・渋谷で交通整理のお巡りさん。
これもよかった。
コメント

やさしい梅雨であれ

2013-06-15 08:03:52 | 編集手帳
5月31日 編集手帳

<国道沿いの二階の部屋では 目覚めるときに天気がわかる…>。
南こうせつさんが歌った『今日は雨』(詞・喜多條忠、曲・南こうせつ)である。
<今日は雨 アスファルトに流れる雨を大きな車が轢ひいて走る>
と続く。

窓に吹きつける音ではなく、屋根を叩たたく音でもない。
平年よりも10日早く梅雨入りした関東地方ではきのう、
歌のように、
アスファルトとタイヤと雨が織りなす静かな合奏で夜が明けた。

落雷や集中豪雨をともなう“暴れ梅雨”になることもめずらしくない昨今である。
しおらしく登場しても、
油断はならない。

昔の人は雨音を耳の法楽にしたという。
平安京の清涼殿は、檜皮葺ひわだぶきの庇ひさしとは別に、
雨音を響かせるための板庇いたびさしを設けていたと聞く。
古人の風流を現代に受け継いでいるのは幼い子供たちのようで、
傘を〈雨の音がよく聞こえる機械〉と表現した詩を読んだことがある。
楽しい機械に耳をすますことのできるような、
災害と無縁の梅雨であればいいのだが、今年はどうだろう。

震災以降、眉根まゆねを寄せずには聞けない話題が身辺を離れず、
誰の耳も疲れていよう。鼓膜にやさしい梅雨であれ。
コメント