1月5日 キャッチ!
雇用状況が改善し個人消費も堅調なアメリカ経済。
アメリカは今年3%の成長が見込まれている。
リーマンショック後の家計が抱えていた過剰な借金がようやくなくなってきていること
失業率が5%台まで下がって雇用状況が改善し賃金が上昇する兆しが出ていること
そして原油価格の下落が要因に挙げられる。
アメリカ経済は個人消費が70%を占めている。
原油価格は去年の夏から約半分に値下がりした。
ガソリンが下がったぶん他の買い物に回せるお金が増えたわけで
約10兆円の減税があったのと同じ効果があるという試算もある。
原油の下落の恩恵をいち早く受けているのが自動車産業。
去年の販売台数は2013年を上回り1,600万台に達したとみられている。
日系メーカーも軒並みフル生産の状況が続いている。
(トヨタ自動車ミシシッピ 浜口昌史社長)
「アメリカ市場の回復とともにたくさんの注文を頂いている。
通常の生産能力は17万台だが残業などを重ねて今年は19万台の見込みだ。」
アメリカ市場はさらに伸びるとみて自動車関連メーカーも新たに大規模な投資に踏み切っている。
横浜タイヤはミシシッピ州に360億円かけて新工場を建設中で
今年秋からトラック用タイヤ年間100本を生産する予定である。
(横浜タイヤ製造ミシシッピ 山本忠治社長)
「アメリカは人口が毎年増え
自動車の保有台数も増えている。
タイヤの需要も堅調だとみている。
アメリカは世界トップ市場のひとつで最重要市場だ。」
人材確保のため横浜タイヤはミシシッピ州立大学の一角に臨時のオフィスを置いた。
地域の情報を集めるとともに即戦力となる学生の採用を進めるのが狙いである。
一方大学側も企業に協力して教室を提供。
新工場の従業員のための研修がすでに始まっている。
(大学生)
「新工場への就職は絶好の機会です。
日本の技術製造を学び自身のキャリアアップにつなげたいです。」
(ミシシッピ州立大学 調査研究センター テレサ・ガミル副所長)
「工場進出はこの地域だけでなく州全体の安定につながります。
その恩恵は次の世代も含めアメリカ全体で続いていくでしょう。」
景気の拡大が続くアメリカでは日本の高度な技術を導入する動きも広がっている。
今年アメリカの3つの都市で初めて日本メーカーが開発したバスの“運賃収受システム”が導入される。
日本から送られた社員の指導のもとで現地で組み立て作業が急ピッチで行われている。
新しいシステムではICカードのほか複数のコインを同時に投入できる。
日本メーカーならではのきめ細かい工夫が評価された。
(レシップ社 杉本眞社長)
「顧客満足
お客様が何を望んでいるか
それをいかに実現していくか
日本人特有の誠実さや物事をやり抜くことが評価されたと考えている。」
現在はトラブルが多くたびたび運行が遅れる原因になっているだけに
地元の自治体も日本の新しいシステムの導入に期待を寄せている。
(交通当局 担当者)
「大きな変化です。
とても使いやすくなるでしょう。」
(ルイビル市 グレッグ・フィッシャー市長)
「日本企業は的確かつ柔軟に問題を解決してくれます。
ケンタッキー州ではより多くの日本企業の進出に期待しています。」
世界経済のけん引役となるアメリカ。
その拡大する市場を目指す動きが活発化している。
もちろんアメリカ市場には日本だけでなく世界各国が参入しようとしている。
日本ならではの技術やモノづくりのこだわりを持って顧客のニーズを丁寧にくみ取っていけば
日本企業がさらにアメリカでビジネスチャンスを切り開く可能性が大いにある。
原油安にはマイナス面もあり
テキサス州をはじめとするシェール関連産業では新たな投資を取りやめるところも出ていて
地域経済が影響を受けることは避けられない。
いまのところ個人消費を押し上げる効果の方が上回り
原油安はアメリカ経済全体にとってはプラスとみられている。
(カリフォルニア大学バークレー校 アイケングリーン教授)
「原油安は世界経済にとってプラスです。
アメリカにも好影響を与えている。
エネルギーを輸入しているヨーロッパ諸国にも良い影響が出ます。
日本や中国などの経済にも同様の理由でよい影響を与えます。
一方でロシアやベネズエラ 中東の産油国にとっては打撃です。
2015年の世界経済に何らかの影響があるでしょう。
産油国の1つで事態が悪化すれば影響はその国だけにとどまらないでしょう。
ロシアのプーチン大統領は窮地に立つと極端な行動をとる傾向があります。
国内問題から国民の目をそらすために外交で冒険的な行為に出るかもしれません。
ロシアにはリスクがあると言えるでしょう。」
アメリカ経済の今後の最大の焦点は金融政策である。
アメリカは今年半ばにゼロ金利政策をやめて金利引き上げに踏み切るという見方が強まっている。
利上げのテンポは緩やかになるという見方が一般的だが
実際に金利の引き上げに踏み切った場合
新興国からの資金がアメリカに還流する動きが加速してさらにドル高が進む可能性があるという見方もある。
アメリカの金融政策の転換が世界の金融市場にどんな影響を及ぼすのか注意深く見ていく必要がある。
来年の大統領選挙には教頭では元フロリダ州知事ジェブ・ブッシュ氏が立候補に前向きな姿勢を表明した。
しかし支持率は10%余にとどまっていてまだ混戦模様である。
一方民主党はヒラリー・クリントン元国務長官が民主党支持者の間では60%以上の支持を集めている。
ただここのところ自らが民主党支持者だとする人の割合が下がっていて
ヒラリー氏が国民全体から支持を集めることが出来るのかまだ予断を許さない。
この背景には景気回復が続く中でも豊かさが実感できないという国民の不満が根強く
オバマ政権が有効な対策を打ち出せていないことがあるとみられている。
金融危機のあと富裕層の所得は5%増えたが
中間層以下ではほとんど増えていない。
格差は一段と拡大している。
(カリフォルニア大学バークレー校 アイケングリーン教授)
「アメリカでは不平等の問題は長い時間をかけて形作られました。
アメリカの平均賃金は1980年代から上がっていません。
金融危機と高い失業率が人々にこの問題を気付かせたのです。
長年続いてきた問題の解決には長い時間をかけた対応が必要です。
教育や大学へ行かない人に対する職業訓練の内容を改善するべきです。
富裕層への増税も必要です。
ここ20年ほどの間に富裕層への税率は劇的に下がりました。
アメリカ社会としてどう対応するのか議論が必要です。」
アメリカでは白人と黒人、ヒスパニックとの格差が一段と顕著になっている。
こうした不満が警察官による黒人殺害事件に端を発した抗議行動の背景にあるという見方も出ている。
2016年の大統領選挙に向けて民主党と共和党は
中間層が豊かさを実感できるような具体的な政策を打ち出し支持を広げることが出来るかが
候補者選びのひとつのカギになる。