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本の“続きを生きる”

2015-01-17 08:15:00 | 編集手帳

1月15日 編集手帳

 

活字中毒者を自任する人は世間に多いが、
読書嫌いを公言する人はあまりいない。
“傑物”と称される成功者には、
なおのこと稀(まれ)である。
ホンダの創業者、
本田宗一郎さんはめずらしい一人であったろう。

〈僕は、 
 本を読むのが嫌いだ。
 本というものは過去のものしか書いていない〉。
ソニーを創業した井深大さんが著書『わが友 本田宗一郎』(ゴマブックス刊)に収めた本田語録にある。

日頃「活字文化」の旗を振っている小欄には少々困ったお説 だが、
『本』がお題の歌会始の儀を報じる記事を読んでいて、
ハタと気づいた。
終生衰えることのなかった溌剌(はつらつ)たる精神が言わせた言葉であったか、
と。

〈この本に全てがつまつてるわけぢやないだから私が続きを生きる〉。
今年の入選者では最年少、
小林理央(りお)さ ん(15)(神奈川県)の一首である。
書物に書かれてあることの“続きを生きる”生涯青春を貫いた独創と情熱の企業家は、
「わが意を得たり」と泉下でほほ笑んでいよう。

欧州経済に濃い霧のかかるなか、
多くの企業が手探りで船出をした年の初めである。
その人、
いま世にありせば、
の思いを深くする。

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