1月11日 NHK海外ネットワーク
いつもの年明けと同じように華やいだ雰囲気に包まれたモスクワの町。
しかし今のロシア政府にはお祝いムードに浸る余裕はない。
去年から原油価格の下落が続いているためである。
(12月25日 政府閣僚会議 ロシア プーチン大統領)
「今年に限っては政府関係者は長期間の休みを取る余裕はないはずだ。」
プーチン大統領は閣僚たちに新年の休暇を返上してでも対応にあたるよう異例の指示。
原油価格の浮揚にまさにロシアの国の命運がかかっているからである。
2000年に就任以来 急速な経済成長を背景に権力基盤を固めていったプーチン大統領。
その経済成長を支えてきたのが安定した原油価格だった。
原油の輸出はロシアの国の歳入の4割をも占めている。
しかし去年7月以降 その原油価格は大幅に下落。
原油に支えられてきたルーブルの価値が下がりロシア経済にも影響を及ぼしている。
食料品や家電製品も輸入に頼っているためロシアでは去年1年間で物価は11%余上昇したとみられている。
(市民)
「年金では暮らせないのではと心配。」
「政府には知恵を絞ってもらい生活に困らないようにしてほしい。」
原油安は中小企業を中心に人々の雇用にも打撃を与えている。
中でも観光業では倒産が相次ぎロシア全土で4,000人が失業したと推定されている。
(旅行会社社長)
「倒産の順番を待っているようなものだ。
この先どうなるかわからない。
状況を見守るしかない。」
こうした状況にプーチン大統領は地場産業を育てるなどして
原油の輸出に依存してきたロシアの経済構造を改革するとしている。
(ロシア プーチン大統領)
「経済の多角化を必ず実現させ
現在の経済的な苦境を切り抜ける。」
しかしウクライナ情勢をめぐって欧米から経済制裁を受けているいま
こうした改革を進めるのは容易なことではないと専門家は指摘する。
(経済アナリスト)
「構造改革まで行うとすればロシアに混乱をもたらすことになる。
いまロシア経済にたくさんの課題を抱えさせるのは大きなリスクとなる。」
ロシアとは対照的に原油安が人々の購買意欲をかき立て経済にとって追い風になるとみられているのがアメリカ。
アメリカではガソリンの価格が大幅に値下がりしていることを受けて大型の車の販売が特に好調である。
マイカーに使うガソリンの値段が下がったぶん資金に余裕が出来た人たちが次々に新車の購入に販売店を訪れている。
(新車を買った男性)
「退職者には1ドルでも安いと助かる。
買う決断を後押ししてくれた。」
アメリカの新車の販売は10か月連続で前の年を上回っている。
GDPの70%以上を占めるとも言われる個人消費。
原油安が消費拡大をけん引して好調な景気につながっているのである。
(エネルギー分野に詳しい経済アナリスト)
「原油安はアメリカにとってプラスでGDPを押し上げる可能性がある。
消費者はガソリンにかけていたお金で他の物を買うことが出き好循環となる。」