1月27日 編集手帳
横綱大鵬は物言いのつくきわどい一番で平幕戸田に敗れ、
連勝が「45」で途切れた。
ビデオ判定が導入される前、
1969年(昭和44年)の大阪場所である。
テレビ中継のビデオでは、
大鵬の足が土俵に残っている。
勝っていた。
「大変だ、誤審だァ」と支度部屋に押しかけた報道陣に大鵬は語ったという。
「負けは仕方ない。
横綱が物言いのつく相撲を取ってはいけない」。
勝負審判ではなく、
あんな相撲を取った自分が悪いのだ、
と。
この初場所で大鵬の記録を超え、
史上最多33度目の優勝を果たしたのは横綱白鵬である。
賜杯をわが物にした13日目、
大関稀勢の里との大一番には物言いがついた。
軍配は白鵬に上がったが、
審判団が両者同体とみなして取り直しとなり、
仕切り直しの末に手にした大記録である。
「なぜ取り直しなのか。
子供が見ても(自分が勝ったと)分かる。
審判 部はもう少し緊張感を持ってほしい」。
千秋楽から一夜明けたきのう、
白鵬が記者会見で勝負審判を批判したという。
記録の上では相撲史の山頂を極めた人も、
精神はまだ遥(はる)か下、
山麓をさまよう途中らしい。
好漢、
自重せよ。