goo blog サービス終了のお知らせ 

日暮しの種 

経済やら芸能やらスポーツやら
お勉強いたします

好漢、 自重せよ

2015-01-31 10:59:32 | 編集手帳

1月27日 編集手帳

 

横綱大鵬は物言いのつくきわどい一番で平幕戸田に敗れ、
連勝が「45」で途切れた。
ビデオ判定が導入される前、
1969年(昭和44年)の大阪場所である。

テレビ中継のビデオでは、
大鵬の足が土俵に残っている。
勝っていた。
「大変だ、誤審だァ」と支度部屋に押しかけた報道陣に大鵬は語ったという。
「負けは仕方ない。
 横綱が物言いのつく相撲を取ってはいけない」。
勝負審判ではなく、
あんな相撲を取った自分が悪いのだ、
と。

この初場所で大鵬の記録を超え、
史上最多33度目の優勝を果たしたのは横綱白鵬である。
賜杯をわが物にした13日目、
大関稀勢の里との大一番には物言いがついた。
軍配は白鵬に上がったが、
審判団が両者同体とみなして取り直しとなり、
仕切り直しの末に手にした大記録である。

「なぜ取り直しなのか。
 子供が見ても(自分が勝ったと)分かる。
 審判 部はもう少し緊張感を持ってほしい」。
千秋楽から一夜明けたきのう、
白鵬が記者会見で勝負審判を批判したという。
記録の上では相撲史の山頂を極めた人も、
精神はまだ遥(はる)か下、
山麓をさまよう途中らしい。

好漢、
自重せよ。

コメント

土俵の活気を背負う孤独の横綱

2015-01-31 10:58:48 | 編集手帳

1月24日 編集手帳

 

〈孤(こ)掌(しょう)、
鳴らしがたし〉という。
片方の手のひらだけで手を打ち鳴らすことはできない。
人の営みはどれも、
相手があって成り立っている。
勝負の世界も“競い合う”と いう形の共同作業にほかならない。

昭和の大横綱、大鵬の納谷幸喜さんが現役の頃、
北海道の実家に自分の写真と並べて、
ライバルである横綱柏(かしわ)戸(ど)の写真を飾っていたことは、
いまも好角家の語り草である。
大相撲の人気は自分ひとりでつくったのではない。
柏戸関がいてこそだ、
と。

大鵬の記録を塗り替えて史上最多33度目の優勝を決めた白鵬には、
共同作業の相手がいない。

往年の柏鵬(はくほう)時代と音(おん)は同じでも、
一人きりの白鵬時代である。
孤掌をおのが頬に打ち鳴らすようにして、
土俵の活気を音高く響かせてきた人の孤独を思う。
「日本人よりも日本人」と 評される平成の大横綱は日本の伝統文化を支える責任感も人一倍だが、
この3月には30歳になる。
一人で背負う荷を重く感じるときもあるだろう。
もう一つ、
手のひらがそろそろ現れていい。

〈白〇時代〉。
稀、遠、逸、照…あれこれと文字を思い浮かべながら、
空欄の埋まる日を待つ。

コメント