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記憶の中の野球少年

2016-02-13 07:30:00 | 編集手帳

2月4日 編集手帳

 

 夏の高校野球でPL学園が智弁和歌山に敗れた。
2000年の甲子園である。
作詞家の阿久悠さんには意外な結果だったようで、
翌日付の『スポーツニッポ ン』に書いている。

PLが負けて突然、
気づいたという。
〈全打者が清原和博であったわけではないと〉。
ここまで読まれた方は西暦の誤記かと訝(いぶか)るだろう。
1980年代に高校を卒業した人がその試合に出ているはずがない。
残像である。
なんと息の長い残像だろう。

高校球児の昔もプロ入り後も、
その姿が目に焼き付いて離れない“記憶王”タイトル保持者である。

夜はバットを抱いて眠り、
試合の途中で感極まって号泣する。
野球少年がそのまま大人になったような面影は、
もはやない。
原稿を書く手はその呼称を綴(つづ)るのを嫌がっているのだが、
清原和博容疑者(48)が覚醒剤所持の現行犯で逮捕された。
投手の内角攻めには死球を恐れぬ肉体改造で立ち向かった人が、
どうして心の内角を守れなかったか。

打席に入る時は長渕剛さんの『とんぼ』が流れた。
♪ 明日からまた冬の風が横っつらを吹き抜けて行く…。
まぶしい記憶の残像 がいまはただ哀(かな)しい。

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