1月30日 経済フロントライン
日本GDP国内総生産の7割を占めるのがサービス業。
その生産性を上げることは日本経済回復の大きなカギのひとつである。
生産性とは
従業員1人当たりが一定の期間にどれだけの商品やサービスを生み出せるか
金額で表したもの。
生産性が高いほど同じ人数でより多くの客に質の高いサービスを提供できるということになる。
日本のサービス業の場合 1人あたり年間で729万円
製造業は1人あたり904万円。
サービス業の生産性革命は本格的に始まりつつある。
江戸時代創業の箱根の老舗旅館。
この旅館では生産性を高めるため
これまで当たり前だったサービスが本当に必要か
一から見直しした。
例えば下足番を廃止。
宿泊客には自分で靴をげた箱に入れてもらう。
客室の案内係も廃止した。
布団も自分で敷いてもらう。
提供するサービスを絞ることで
宿泊費を箱根の老舗旅館としては安い9千円に抑えた。
(宿泊客)
「いいと思う。
自分たちでこうやってやるけど不便はないので
その分 安いならいいなって思う。」
スタッフの業務シフトも見直した。
フロント係の坂本さん。
チェックインのピークが過ぎて向かった先は食堂。
坂本さんは夕食の配膳係も兼務している。
「フロントにいればレストランに来たお客さんの顔もわかる。
より良いサービスがしやすい。」
こうした積み重ねで
1人当たりの生産性は3,5倍に。
従業員は働きやすくなり
それが客の満足度にもつながっているという。
(一の湯 小川晴也社長)
「生産性が良くなるということは実は非常に気持ちよく作業ができる。
ついてはお客様の印象も良くなるという循環。」
こうした動きは旅館業界全体に広がり始めている。
日本旅館協会は全国からモデルとすべき8つの宿を選定。
企業コンサルタントを派遣して効率化できる業務を検討している。
「台車もこんなところに置いていると動線をふさぐことになる。
効率下がる。」
この日は厨房や配膳室での作業の無駄を細かく洗い出した。
「食器を探す手間はたいへん無駄。
それをまず無くす。」
食器の置き場所が一目でわかるよう写真を張ってはどうかという指摘もあった。
日本旅館協会ではこうした改善点を会員の旅館と共有し
役立ててもらいたいとしている。
(日本旅館協会 針谷了会長)
「実態に合った生産性向上のノウハウを積み重ねて
それを全国に波及していきたいのがひとつ。
旅館を成長産業に変えていきたい。」
飲食業界ではオートメーション化で生産性を上げる取り組みが始まっている。
全国に展開する外食チェーン。
「野菜たっぷりが好きなんで。」
「それなりの値段でそれなりにおいしく食べられる。」
この外食チェーンでは短時間で調理できるシステムを導入。
具材とスープを鍋に入れたらオートメーション化されたIHヒーターに。
一番右のヒーターで26秒加熱すると
鍋がとなりの2つ目のヒーターに移動する。
このタイミングで麺を投入し再び26秒加熱。
その間に次を用意。
鍋は3つ目のヒーターに移動しさらに26秒煮込めば完成。
次から次へとチャンポンが出来上がる仕組みである。
調理時間は盛り付けを合わせてもこれまでの8分から2分に短縮。
わずか4分の1になった。
力と技が必要な中華鍋での調理と違い
誰もが簡単に作れる。
これまで半年かかっていたスタッフの研修も1週間で済むようになった。
(シンガーハットジャパン 山岡雄二部長)
「しっかり教育すればおいしいちゃんぽんが短時間でできるようになる。
いい効果が出ている。
ピークタイムも20分30分かかることもなくなりましたので
お客様には喜んでいただいている。」
アパレル業界ではITを使った商品管理で大きな効果を生んでいる企業もある。
衣料品や小物などを販売しているセレクトショップ。
店頭で働くスタッフは接客だけでなく1万点に及ぶ商品の管理に追われている。
そこで導入したのがICタグ。
これまではバーコードを1枚ずつ読み取っていたため
1角を確認するだけで約1時間かかっていた。
ICタグの読み込みは専用の機械を向けるだけ。
タグが電波を発信するので離れた場所からでも作業ができる。
この日 スタッフは初めて体験。
かかった時間はわずか35秒。
「ちょっと早すぎますね。
言葉出ないです。
今までが何だったのかなという感じです。」
作業にかかる時間は店舗全体で30時間から3時間に短縮。
スタッフはより接客に時間をかけられるようになり
それが販売力強化につながっているという。
(ビームス ロジスティクス本部 竹川誠課長)
「アパレルの仕事は付帯業務が多くなりがち。
本来販売員としてやりたい仕事が削られてしまう。
接客による効果で売り上げが上がっていることを体感している。」