2月10日 キャッチ!
ブリュッセル中心部の繁華街にほど近いモレンベーク地区。
1960年代から労働力として迎えられたモロッコやトルコなどからの移民が暮らすようになり
今ではここに住む10万人の半数以上を占めている。
この街が注目を集めるようになったきっかけは
去年11月にフランスのパリで起きた同時テロ事件である。
事件の首謀者とされる男や実行犯を含め
3人のモロッコ系の容疑者が暮らしていたのがこのモレンベークだった。
この町からは少なくとも30人の若者たちがシリアなどに渡って
イスラム過激派組織の戦闘員になったことも確認されている。
モレンベークがテロリストを生み出した背景として考えられるのは
この地区の低い進学率や高い失業率である。
移民の若者の失業率は50%を超えている。
(休職中の男性)
「短期の仕事はあっても安定した仕事は見つからない。
3年も仕事に就いていません。」
安定した職に就きにくい状況の中で
モレンベークの若者たちはイスラム系の移民の出身であることで
差別や偏見を受けているという不満を強めている。
こうした状況に地域の対応が十分ではなかったと
地元の議員は指摘する。
(青少年政策担当議員 サラ・トゥリンさん)
「私たちは長い間
帰属意識の問題を放置していました。
差別されていると感じる人に発言の機会を与えることが大切です。」
そうしたなか若い世代を社会に取り込んでいく地域の活動が少しずつ進められている。
モレンベークを拠点とするこのNGOは
ほぼ毎日小学生から高校生までの子どもを集め
学習指導や様々なレクリエーションを通じて社会性を育てる取り組みを行っている。
モレンベークの子どもたちが抱える問題の1つが言葉の問題である。
アラビア語しか話せない子どもが少なくなく
学校の授業について行けず
社会になじめないまま成長し
ついには非行に走るという悪循環が起きているのである。
このためNGOでは
公用語のフランス語やオランダ語でのコミュニケーション
様々なことに興味や関心を引き出すことに重点を置いている。
NGOでボランティアをしている高校生のイリアス・ファティティさん。
モロッコ出身のイリアスさんは
言語や文化の違いから周囲に溶け込めずひきこもりがちだった。
しかしNGOに参加するようになってからは仲間が増え
人と積極的にかかわりたいと考えるようになった。
(イリアスさん)
「ここでは自分も子どもたちと過ごして人との接し方を学んでいます。
このNGOがなかたら何をしていたかわかりません。
麻薬を使ったり悪いことをしていた可能性があります。」
誰かのために努力したり
人とかかわることの大切さに気付いたというイリアスさん。
今後も地域の子どもたちにその思いを伝えていきたいと考えている。
(イリアスさん)
「この地区には様々な国籍の人がいますが
出身が違っても私たちは共に生きていかなければなりません。」
NGOでは若者が自分の殻を破って社会に広がる可能性に挑戦するよう支えていく方針である。
(NGO所長 ロレダーナ・マルキさん)
「私たちのねらいは若者や子どもたちに自信を持たせ
若者たちには希望を持ち続けるメッセージが必要です。
社会の中に自分の居場所を見つけられるよう支援していくことです。」