4月19日 キャッチ!
摩天楼がそびえたつアジアの金融センター 香港。
ところが中心部から40分ほど車を走らせると
たくさんの水牛や牛を見ることができる。
どの農家にも属さない野良牛である。
牛は約1,100頭
水牛は約120頭いると言われる。
これらの野良牛たちはかつては畑を耕すための家畜だったが
農家が土地を手放した後
自然の中に放置されたのである。
繁殖のペースを抑えるため一部は政府によて去勢されているが
駆除はされていない。
人の生活空間にも頻繁に姿を現すようになっている。
野良牛が増加した背景の1つが
着々と進む香港と中国本土との一体化である。
19年前の返還以降
中国本土から巨額の投資マネーが不動産業界に流入。
農地は次々に買収され高層ビルが建てられている。
その結果
返還後から農地は60%余減少。
それに伴い13%あった香港の野菜の自給率は
2%を切るまでに低下した。
今では市場で出回る野菜は9割が中国産である。
その中に香港政府の基準を上回る農薬や重金属が含まれていることが
時折報道されている。
(市民)
「有害な野菜はできるだけ避け
食べる前に1時間ほど水につけて農薬を落とします。」
「安全は気になりますが
できることは野菜を水につけるだけです。」
こうした香港に急激な変化に疑問を持ち
自然との共存を図ろうと
地道に活動を続けている人々もいる。
香港の農業を守ろうと活動する農家の 区唏旻さん。
区さんの村は土地の8割以上が不動産企業に買収され
そこに高層アパートが立ち並んでいる。
区さんは一昨年
政府の開発計画は農業をないがしろにしているとして
抗議集会に参加した。
さらに香港の将来を担う世代に農業の大切さを知ってほしいと
地元の中高生を招いた農業体験を
ほぼ毎週末に行っている。
(農家 区さん)
「都会で出た生ゴミを土に戻して堆肥にします。
それを使って野菜を作り
都会に提供し
循環させるわけです。」
土に触れることがほとんどない都会の子どもたち。
区さんは人と自然との営みを実感してほしいと言う。
(参加した生徒)
「香港の農業を活性化させたいと思います。
香港で作られた野菜があれば
みんなにとって良いと思います。」
(農家 区さん)
「いま手元に届く野菜が有害な野菜かどうかも確認できません。
農業はお金にはなりませんが
お金よりも大切なものがあるはずです。」
一方 NGOの女性は
野良牛が生まれた原因は人間の側にあるとして
牛たちを森に避難させるための専用道路の設置を呼びかけている。
(NGO 主席 譚詩詠さん)
「昔いたところには高層ビルが建っているので
牛はよそへ逃げるしかないんです。」
水牛の保護に取り組むのは別のNGOの 何来さん。
水牛が湿地を動き回ることで水が循環し
地域の生態系保護の手助けになると言う。
開いたのは水牛の保護の大切さを伝える市民向けのワークショップ。
10年前にこうした活動を始めたころは見向きもされなかったが
ここ数年 市民の意識に変化が見られると言う。
(参加した市民)
「香港は近代化が進み過ぎました。
自然と触れ合える環境が必要です。」
「経済発展を遂げたからという理由で
牛を見捨てるべきではありません。」
中国経済との一体化によって急激な変化を遂げる香港。
豊かな暮らしとは何か
立ち止まって考える市民が増えている。
(NGO 主席 譚詩詠さん)
「香港が直面する環境汚染から回復し
持続可能な社会にしていくために
どのような生活をしていくべきなのか
考え直す必要があります。」