5月14日 編集手帳
家に家紋があるように、
神社には神紋(しんもん)がある。
いただいたお守り袋に「スリーダイヤ」入りの神紋が描かれていたのを覚えている。
大阪市西区に土佐稲荷神社を訪ねたのは十数年前である。
三菱グルー プの守護神社として知られる。
1993年(平成5年)の春にはちょっとした話題になった。
グループ企業の首脳45人が打ち揃(そろ)って参詣し、
新社殿の完成を祝うとともに景気の回復を祈願したときである。
これほど結束の固い企業集団はほかにない。
その誇り高き「スリーダイヤ」の絆をもってしても、
グループ内の助力だけでは支えきれぬ深い傷なのだろう。
日産自動車の救済を仰ぎ、
事実上その傘下に入って再建を図るという。
軽自動車の燃費偽装で経営の悪化した三菱自動車である。
ウソと隠し事が持病のようになった会社の作るクルマに、
消費者が安心して大切な命を預けてくれるのはいつの日だろ う。
前途には悪路が待っている。
お稲荷さんの使いは神聖なキツネである。
加護を授けてきた企業が“狐狸(こり)”顔負けの悪だくみで世間を化かすとは、
守り神も思わなかったろう。
キツネ様の憂い顔が目に浮かぶ。