5月12日 キャッチ!
パリの行列の絶えないレストラン。
客のお目当ては名物の“肩ロースのステーキ フライドポテト添え”。
その理由は
「ソースです。」
「ソースですよ。」
「やっぱりソースが最高。」
「フランスのソースがこんなにおいしいなんて!」
3世代にわたって受け継がれてきた秘伝のレシピ。
それがおいしさの秘密である。
卵のソースや魚のソース。
フランス料理の名声を高めてきたのはソースである。
しかし70年代からソースは重いとされ
料理から少しずつ姿を消していった。
ヘルシー志向の新たなフランス料理が流行したのである。
その後ソースへの評価はなかなか復活せず
代わりにブイヨンを使うレストランが増えた。
主に野菜料理を出すレストラン。
(レストラン「ルモ二」 イブ・アンスレールさん)
「調理した野菜がソースに埋もれてしまうと
大切な風味が損なわれます。
ソースはあくまでも素材の味を引き立てるものであるべきです。
良くできた料理ならソースを使う必要はありません。
全く不要です。」
ここではサラダの味付けには野菜のブイヨンとレモン。
温かい料理には煮汁だけを使う。
忙しく働く人たちにも合う軽食である。
(客)
「体調を管理したいんです。
ソースを摂りすぎると疲れやすくなります。」
「油っぽいソースより
素材の味がわかる軽いソースが好きです。」
体調管理のためソースを避けるべきなのか。
それはソースの加熱方法によると言われる。
(栄養士 フロランス・フーコーさん)
「例えばベシャメルソースのレシピですが
小麦粉を牛乳で伸ばしてから最後にバターを加えて作ります。
そうすることでバターに火が通らず
ソースをとてもヘルシーに仕上げることができます。」
有名シェフの中にはソースの復権に取り組んでいるシェフもいる。
三ツ星シェフのヤニック・アレノさんもその1人である。
(レストラン「パヴィヨン・ルドワイヤン」 ヤニック・アレノさん)
「フランス料理を文章とするなら
ソースは食材の主張を可能にする動詞です。
ソースなしでは文は完結しないのです。」
時には健康志向から離れることも必要です。
(レストラン「パヴィヨン・ルドワイヤン」 ヤニック・アレノさん)
「例えばソースに少しバターを加えるだけで味が安定します。
脂肪を安易に悪ものにしてはいけません。」
アレノさんはソースにただ脂肪分を加えるだけではない。
ソースを軽くするために
冷却・凝縮という手法を使う。
その結果
脂肪分は無くなり
素材のエッセンスのみが生かされる。
伝統と革新を両立させるアイデアこそ
ソースをめぐる議論に終止符を打つカギになるのかもしれない。
5月9日 おはよう日本
書店の特設コーナーにずらりと並んだ大人向けの塗り絵。
そのタイトルは130タイトルを超える。
4月に開催された塗り絵の講習会は
募集開始まもなく定員に達する人気である。
いま流行りは細かな模様のような斬新なデザイン。
お手本もなく
自分なりの自由な色付けで楽しめることも人気の秘密。
「頭使って細かい作業して集中して
どれくらい時間がたったのか分かってない感じ。
楽しいです。」
「子どもにやらせようかなと思ったら
自分もはまっちゃって。」
塗り初めて30分ほどで変化が訪れる。
雑念が消えて塗ることだけに意識を集中するようになる。
(THUTAYA 塗り絵担当 佐藤百恵さん)
「ずっと塗り絵をやっていると
禅だったり写経だったりという心境になる。
無の境地ですね。」
気が付けばあっという間に2時間が経っていた。
「好きな色を塗っているだけでーティスティックなものができる達成感。
その満足感がはまるんです。」
この塗り絵は過去にも何度がブームがあり
それぞれに時代の一面を映し出してきた。
東京荒川区にあるぬりえ美術館。
昭和20年代に訪れた塗り絵ブーム。
その中心となったのか画家の蔦谷喜一が描いた「きいちのぬりえ」。
アクセサリー、髪型、洋服
塗り絵に描かれていたのは
まさしく当時の女の子のあこがれの世界だった。
(ぬりえ美術館 金子マサ館長)
「戦争があってきれいなものとか無かったですから
飢えていたから
女の子たちも“きれい”と。」
続いて訪れた塗り絵ブームは昭和50年代。
今度の主役は
カラーテレビの普及とともに人気となったアニメのヒーローだった。
塗り絵は子どもの遊びとして広がっていった。
この流れに変化が生まれたのは
いまから10年ほど前に訪れた塗り絵ブームである。
中心となったのは高齢者たち。
手先を動かす塗り絵は脳を活性化させると言われ
介護施設などで積極的に取り入れられた。
ブームに火をつけた河出書房新社 竹下純子さん。
介護施設に勤める友人の話をきっかけに
子ども向けではない塗り絵を思いついた。
(河出書房新社 竹下純子さん)
「子ども用のキャラクターのものでは
“こんなのこの歳になって塗りたくない”と怒られたというので
確かにそのとおりだと思った。
花とか風景とか
大人にふさわしい塗り絵があってもいい。」
それから10年
いま再び盛り上がる塗り絵ブームはどんな時代を映し出しているのか。
横浜市で1人暮らしをしている間瀬さつきさん。
アロマやリラクゼーションのセラピストとして働く間瀬さん。
塗り絵と出会ったのは去年のことだった。
(間瀬さつきさん)
「本当に気軽で気楽で
時間も自分で作れるし
持ち運びもできるし
場所も時間も制限がないからすごくいい。」
この日はカフェで塗り絵を楽しむ間瀬さん。
塗り絵のもう1つの楽しみは
同じ趣味を持つ人との交流だという。
4時間かけて完成させた塗り絵。
間瀬さんはスマートフォンで撮影しSNSのサイトに投稿する。
作品を見た人たちからは
「ナチュラルで優しいですね」
「可愛らしい図柄ですね」
などなど多くの反応が帰ってくる。
間瀬さんも知り合いの作品を見て感想を送る。
(間瀬さつきさん)
「全然違う塗り方をしていておもしろい。
お互いの情報交換したり共有したり
つながりも増えて非常におもしろいです。」
ひとりの時間を大切にしながらも多くの人と同じ趣味を楽しみたい。
いま塗り絵は人々をつなげるきっかけになっていた。