5月12日 編集手帳
誰の考案か、
そういう言葉があるらしい。
北原保雄編著『辞書に載らない日本語』(大修館書店)で知った。
【ちいげさ=小袈裟】(深刻な出来事をささいな ことであるかのように語ること)
どれほど大袈裟に語ろうとも語りすぎることのない事柄が、
このところ愚かにも“小袈裟”に語られている。
「核」である。
米大統領選の暴言候補は日本の核保有を容認すると言う。
核兵器はお手軽な防犯装置ではない。
北朝鮮の三代目は核で国際社会を威嚇する。
核兵器はチンピラの刺青(いれずみ)ではない。
“小袈裟”の誤りを正す場所があるとすれば被爆地の広島であり、
長崎だろう。
米国の現職大統領として初めて、
オバマ氏が広島を訪問する。
多くの被爆者が望むのは謝罪の言葉ではあるまい。
見て、
聴いて、
同じ惨禍が地球上で繰り返されることのないよう、
悲しみを共有してくれることだろう。
田村節子さんに『原爆資料館』という詩がある。
〈原爆資料館――ここは鳥籠
人類の呪わしい知恵を
閉じこめておくここは鳥籠
よみがえるなはばたくな〉。
大統領の訪問が、
傷みの目立つ鳥籠の補修につながるといい。