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英EU離脱 他者への憎悪

2016-07-01 07:15:00 | 編集手帳

6月25日 編集手帳

 

 日米開戦の前夜、
元首相の米内光政(よないみつまさ)が述べた言葉は知られている。
「ジリ貧を避けようとしてドカ貧にならぬよう、
 ご注意願いたい」。途方もない楽観を頼りにした短慮を戒めた発言である。

ジリ貧の閉塞感を根気強く押し返していく主張よりも、
威勢のいい掛け声でちゃぶ台をひっくり返すドカ貧派の言動に庶民感情はときに刺激を受けやすい。
英国の国民投票で欧州連合(EU)からの離脱派が勝利した。

「移民に職を奪われる」不満が表れた結果というが、
経済の負う痛手は小さくない。
職の奪い手が「移民」から「不況」に代わるだけで終わらないか。
欧州全体はもちろん英国自身にとっても賢明な選択とは思えない。

英国の国民投票を左右した二つの感情「わが身が大事」と「昔は良かった」は、
米国の大統領選を席巻した“トランプ旋風”にも通じる。
ともに名だたる民主主義国で「ドカ貧」に傾く民意の底に、
他者への憎悪が感じられるのが不気味でならない。

〈人間が人間を理解するあの微笑がなくては歴史はつくられぬ〉(小関茂、『昭和萬葉集』巻五)。
呪文のようにその歌を口ずさんでみる。



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