7月7日 キャッチ!
イスラム諸国でラマダン断食月の終わりを祝う祭りは“イード”と呼ばれている。
パキスタンの首都イスラマバード近郊のラワルピンディ。
イスラマバードのベッドタウンのこの街はいつも活気にあふれている。
その一角の忙しそうにしている食品工場。
日本のソーメンのようなものが所狭しと吊るされている。
これはパキスタンで“セヴィヤン”と呼ばれる小麦粉を使った麺。
ラマダンが終わりに近づくと特に需要が高まる。
イスラム諸国では日中の飲食を絶つ断食月ラマダンが終わり
1年で最もにぎやかな“イード”を迎える。
パキスタンでイードに祝い料理として欠かせないのがセヴィヤン。
砂糖を溶かした牛乳で麺を煮たものである。
ほどよい甘さでチーズケーキのようななめらかな舌触り。
セヴィヤン工場の経営者 エサヌラさん。
まだ20代の若さながら
祖父の代から続く工場を切り盛りしている。
(エサヌラさん)
「ラマダンの時期は生産が2倍になる。
毎日2トンぐらい作っているよ。」
セヴィヤン作りはまず小麦粉を練ることから始まる。
生地を機械で細く押し出し形を整えていく。
次に竹竿に吊るして陰干し。
ここでしっかり乾燥させるのがポイントである。
仕上げは焼きである。
窯に炭火を起こしじわじわと温度を上げていく。
温度計は使わない。
窯が十分に熱くなっているか自分の感が頼りである。
この窯にセヴィヤンを入れ
1日かけて焼き上げる。
真夏は50度近くなるパキスタンでは焼きはとても過酷な作業である。
(エサヌラさん)
「品質が大事だから暑いなんて言ってられないよ。」
エサヌラさんが丹精込めたセヴィヤン。
店先は出来上がりを待つ常連さんでいっぱいである。
(来店客)
「この店のセヴィヤンはとてもおいしいよ。
この辺では1番のお店さ。」
「ドバイやカナダにいる親戚にもこの店のセヴィヤンを送っているんだ。」
慌ただしかったラマダンが終わり
エサヌラさんの家族もイードを迎えた。
パキスタンのイードは“スイート・イード”とも呼ばれ
家族で甘い料理を味わうのがならわしになっている。
エサヌラさんの食卓でも主役は甘いセヴィヤン。
ココナッツと干しブドウを添えて出来上がりである。
テーブルに置いた3種類のセヴィヤンを食べながら
ラマダンを終えたことを祝う。
(エサヌラさん)
「ラマダン中は忙しくて家族との時間はほとんどなかったよ。
きょうは家族そろって食事をして楽しく過ごすんだ。」
イスラム教徒に取って大切なイード。
パキスタンの家庭では
今年もセヴィヤンを味わいながらおだやかなひとときを過ごしている。
このセヴィヤンは
16世紀~19世紀にかけて栄えたインド史上最大のイスラム王朝
ムガル帝国によって現地にもたらされたと言われている。
イードの朝はまずモスクで礼拝をして
帰宅後に家族と最初にセヴィヤンを食べ
昼食や夕食には肉料理などのごちそうを楽しみ
そしてまたセヴィヤンをデザートとして味わう。