7月26日 編集手帳
プロとアマはどう違うのだろう。
英文学者にして駄洒落(だじゃれ)の名手、
小田島雄(おだしまゆう)志(し)さんの説は味がある。
〈その道に苦労する人が玄人、
その道を知ろうとする人を素人という〉
一昨日のスポーツ報知でプロ野球・広島の黒田博樹投手(41)が語っていた。
「投げることが楽しいと思ったことは一度もない」と。
日米通算200勝を成し遂げての感懐である。
玄人は苦労人(くろうと)、
小田島説の通りだろう。
この人もそうである。
黒田投手快挙の翌日、
ヤクルトの登録名・由規(よしのり)(佐 藤由規)投手(26)が右肩の手術から復帰し、
5年ぶりの白星を挙げた。
仙台市出身で、
NHKの震災復興支援ソング『花は咲く』の歌唱メンバーとしてご記憶の方もあろう。
ほぼ同じ歳月を、
被災地と苦しみを分かち合うように過ごした。
6年前には日本人投手として当時最速の161キロを投げた剛腕が、
140キロ台の球に全霊をこめての勝利である。
窪田空穂(うつぼ)の歌がある。
〈われ生かす信(しん)はわれには唯一(ゆいつ)なり評する者のあらば我のみ〉。
自分を生かしている信念は一つである。
審判を下すのは誰でもない、
自分自身だ、
と。
流した涙を養分に、
花は咲く。