10月31日 おはよう日本
福岡県福津市では
年に2回
わずか1週間の間だけ
「光の道」と呼ばれる光景があらわれる。
福岡県福津市の宮地嶽神社。
2月と10月の年に2度
夕日が参道のまっすぐ先に沈み
神社から海までの道が一直線に照らされる「光の道」と呼ばれる光景。
この日は朝9時から400人が長蛇の列を作った。
午後4時半
ここから場所取りが始まる。
「光の道」がいちばんよく見えそうな場所を探すのが重要なポイントである。
中には鳥居に隠れて参道の先が見えない席も。
ベストポジションをさがして行ったり来たりするカメラマンもいる。
(村上裕志さん)
「太陽はたぶん隠れるでしょうね。
難しいですね。」
あきらめかけたその時。
しかし見えたのはほんの一瞬
夕日はすぐに雲に隠れてしまった。
(村上裕志さん)
「真っ赤になっているところを撮りたかった。
簡単には見られないですよ。
また来年2月。」
夕日に特別な思いを持つ人もいる。
神社の参道にあるカフェで働く二宮ゆみ子さんは
結婚したあと福岡市内で暮らしていたが
7年前に母の介護のため故郷の福津市に戻ってきた。
子どもと離れ介護に追われる日々に不安を抱えるなか
勇気づけられたのが参道から見える夕日だった。
(二宮ゆみ子さん)
「感謝しかないですね。
力づけてもらいましたし
ここで頑張っていったらきっと道は開ける
なんとかなるかなと。」
自分に力をくれた夕日をみんなにも見てもらいたい。
この日も気になるのは空模様である。
久々に晴れ間が広がった10月17日。
期待が高まる。
参道の真上に夕日が落ちるまであと少し。
しかし無常にも夕日は雲の中に消えてしまった。
ひかりの道は見えなかったが
今シーズン1番の光景に笑顔がこぼれた。
(訪れた人)
「惜しかった。
でも夕日はきれいに見えたので幸せになれた気がします。」
「ありがたい気持ちになりました。」
(二宮ゆみ子さん)
「私が元気をいただいたようにみんなも元気になってもらいたい。」
簡単には見ることができないからこそ多くの人をひきつける「光の道」。
次のチャンスは来年の2月である。
11月12日 編集手帳
皇后陛下に手袋のお歌がある。
〈里にいでて手袋買ひし子(こ)狐(ぎつね)の童話のあはれ雪降るゆふべ〉。
里の帽子屋で正体が狐とばれたら、
捕まって檻(おり)に入れられてしまうよ。
母狐の声を背に、
子狐は山をおりた。
新美南吉の童話『手袋を買いに』である。
心の優しい帽子屋が狐と感づきながら手袋をくれた結末は知りつつも、
いま読み返すと、
妙にはらはらする。
子供受難の時世ゆえかも知れない。
大阪府堺市の梶本樹李(たつき)ちゃん(4)は、
どこの冷たい土の上に眠っているのだろう。
逮捕された父親は「(遺体を)奈良県境の峠に捨てた」と供述している。
原発事故で福島県から横浜市に避難してきた少年が、
転校先の小学校で受けたいじめもひどい。
「賠償金をもらったろ」。
同級生らから複数回、
万円単位の金をせびり取られた。
少年は不登校という。
初冬の寒気をしのいでくれる手袋もお手上げの、
心の凍えるニュースがつづく。
母ちゃん。
人間はちっとも怖くなかったよ。
無事に帰った子狐は出来事を話して聞かせた。
物語は、
母狐の半信半疑のつぶやきで終わる。
〈ほんとうに人間はいいものかしら〉。
何と答えよう。