1月6日 キャッチ!
(31日 プーチン大統領)
「2015年には多くの課題はあるが
効率的・創造的かつ効果的に取り組めば良い年になるだろう。」
プーチン大統領はすでに経済的困難から脱するために最悪2年は必要かもしれないと
国民に忍耐を訴えている。
しかしこのまま国民の暮らしが改善する兆しが見えないとなると政権への不満が高まることも予想される。
そうなるとプーチン大統領は内閣改造や中央銀行総裁の更迭などに追い込まれかねないという観測も出ている。
ロシアが事実上の債務不履行に追い込まれた1998年当時とは違って
ロシアの外貨準備高はまだ十分にあるという見方が現時点では支配的である。
しかしロシア発の不況が他の資源国や新興国全体に広がるという恐れはぬぐいきれない。
ロシアとしては目先の対策はもちろんだが輸出の7割をエネルギーに頼るという経済の構造改革を急ぐ必要がある。
ルーブルの急落の背景にはウクライナ情勢による欧米との対立があり
EUによる経済制裁の影響で国際金融機関からの借り入れや借り換えが出来なくなった影響が大きいと言われている。
これに対しロシアはヨーロッパ産の農産物の輸入禁止といった対抗措置を取っていて
制裁合戦はヨーロッパ経済にも大きな影響を及ぼしている。
リトアニアはかつてソビエト連邦の一部だったこともありロシアと経済的に強く結びついている。
このためロシアによる輸入禁止措置の影響はとりわけ深刻で
対象となる農産物は9億2,000万ユーロ(約1,300億円)分にのぼるとみられている。
これはGDPの2,7%にあたりユーロ加盟国の中でも群を抜いている。
(青果生産者協会 シロンキエネ会長)
「出荷はますます困難になり今や本当に望みが薄れています。
来年は農地の3分の1を生産停止にする必要があります。」
ロシアに輸出される農産物の主力となっているのがニンジン。
リトアニア中部にある国内最大のニンジン生産農家では2013年の輸出の70%がロシア向けだった。
しかし突然の金融措置で国内やEU域内に売り先を変更せざるを得ない状況である。
同じ境遇のポーランドやオランダなどとの競争にさらされるなか
EUによる支援を受けてもなお価格は20%以上下落した。
新たな設備投資の計画は中断せざるを得ず
従業員の給料も支払えなく恐れが出ている。
(農業主)
「ロシア頼みだったので価格が落ちました。
輸出再開を待つしかありません。
プーチン大統領は自らの力を見せつけるために
他国を追い落とし優位に立つためウクライナ危機を利用しているのです。」
このまま対立を続けていても双方のダメージが大きくなるばかりである。
しかし双方の首脳の発言からは根強い不信感がうかがえる。
(31日 メルケル首相)
「ロシアと敵対したくはないが力の強さをいいことに国際法を無視することは容認できない。」
(18日 プーチン大統領)
「ベルリンの壁が崩壊したあと欧米はNATOを東に拡大させないと約束したがすぐにその約束を破った。
新たな壁を築いたのは彼らだ。」
ウクライナ情勢をめぐっては1月15日にロシアとウクライナ、ドイツ、フランスの4か国の首脳が会談を行う予定である。
関係改善の糸口を見いだせるか注目されている。
3年前の信用不安の引き金を引いたギリシャでは大統領が選出できず
1月15日に総選挙が行われることになっている。
ギリシャでは世論調査では緊縮財政に反対している急進左派連合が優勢となっている。
前回の信用不安を受けてEUは危機管理のためのメカニズムを整備している。
しかしギリシャの政局の混乱はヨーロッパ経済の大きな不安要素となるのは間違いない。
こうした事態を受けてECBヨーロッパ中央銀行が国債などを買い入れて市場に大量の資金を供給する
量的緩和に踏み込むのではないかという観測が広まっている。
スコットランドの独立で揺れたイギリスでは今年5月に議会選挙が行われる。
議会選挙ではイギリスとEUの関係が争点の一つとなる。
EUが加盟国の権限を抑えて巨大化していくという現状にイギリス国内から不満の声が高まっているからである。
キャメロン首相はすでに選挙に勝利すれば2年後にイギリスがEUにとどまるべきかを国民投票で問うという方針を示していたが
4日 可能であればこの投票を前倒しして行いたいと表明した。
そうしたなかで注目を集めているのがイギリスのEUからの独立を掲げるイギリス独立党(UKIP)。
豊かさを求めて大量の移民が入ってくることへのイギリス国民の反発などを背景に支持を拡大している。
(UKIPイギリス独立党 ファラージュ党首)
「ヨーロッパは好きだがEUは嫌いだ。
移民には反対しないがイギリス政府がコントロールできるようにすべきだ。」
UKIPの獲得議席数によってはイギリスとEUの関係
ひいてはEUの将来に影響を及ぼしかねない。
イギリス国民の選択にEUの内外の目が注がれている。
今年は第二次世界大戦が終わってから70年。
ヨーロッパに二度と戦火を起こさないという強い決意で始まったヨーロッパ統合だが
今年はこれまでの統合の成果とその将来をあらためて考える年になりそうである。
隣り合わせの中東では「イスラム国」をどう食い止めるかが課題となりそうである。
1年前にはシリアの内戦でアサド政権と戦う反政府勢力の中の過激派グループに過ぎないとみられていた「イスラム国」。
6月にイラク第2の都市を突然制圧した後勢力を急速に拡大した。
インターネットを駆使した巧みな広報戦略で戦闘員を募り
イラクとシリアに渡った外国人戦闘員は80か国以上 1万5,000人にのぼるとみられる。
一時 イラクの首都バグダッドに迫る勢いを見せ
危機感を抱いたアメリカは有志連合を呼びかけてイラクとシリアへ相次いで空爆に乗り出した。
これまでの空爆でナンバー2とされる指導者など複数の幹部を殺害し
イラク軍が支配地域を一部を奪還するなど勢力の拡大は食い止めている。
しかしイスラム国の戦闘員は市民に紛れて活動しているため空爆の効果には限界があるうえ
アメリカをはじめとする有志連合も地上部隊の派遣には及び腰である。
さらにシリアではアサド専権、反政府勢力、イスラム国の三つ巴の戦いとなっていて
イスラム国に結束して立ち向かえない状況である。
こうしたなかイスラム国の過激な思想に影響を受けたとみられるテロが
有志連合に加わっているカナダやオーストラリアなどで相次ぎ
国際社会にとって大きな脅威となっている。
国際社会は戦闘員や資金の流れを断つなどしてイスラム国に対する包囲網の構築を目指しているが
60以上の国と地域からなる有志連合の間では足並みの乱れが表面化することも多く
その壊滅には程遠い状況である。
イスラム国にはヨーロッパ各国からも社会から疎外された多くの若者が参加している。
また空爆に参加しているヨーロッパの国でもテロの懸念も高まっている。
イギリスとフランスによって第一次世界大戦後にひかれた今の中東の国境を認めないイスラム国を
アメリカと協力しながらいかに封じ込めるか。
ヨーロッパが引き続き模索する年となりそうである。