学校で生徒が友だちとふざけていて、ガラスを割ったとき。
教員が
①「誰が割ったんや。なんで割ったんや」
と言うと、子どもからは言い訳が返ってくることがよくあります。
「遊んでいて、○○くんがボールを投げそこない、ぼくがバランスを取れなくなって、ガラスにぶつかりました」
これに対して、
②「ガラスが割れてしまったけど、割れてしまったことは仕方がないね。ケガはしていないか。
それに、割れたガラスがそのままだと、ほかの子にあぶないな。片づけてくれるかな」
このように言うと、「はい」と素直に片づけてくれます。
私は教員になった頃、ガラスが割れたときには、先輩教員から②のように話すよう、教わりました。
そのときは、ただ単に生徒の安全を気にかけるのが最優先されるからだと思いました。
それは、その通りです。しかし、後になって②の話し方には、もう一つの意味があると気づいたのでした。
それは思春期の子を相手に話しているという点に着目すると、なるほどと思います。
思春期の子は、自分が責められたり、否定されたりすることに対して、敏感に反応することがあります。
すると、自分を守るために言い訳をします。指導する側にしてみれば、「素直じゃない」と感じ余計に声を荒げて「なんで割れたんや。お前が割ったんやろ!」となり、教員と生徒の間はギクシャクしたものになってしまいます。
ですから、まずは「前置き」を作るのです。つまり「割ってしまったことは仕方がない」という前置きです。
②の話し方を私が先輩教員に勧められた意味は、「前置き」を作ってしまうということだと、あとで気づいたのでした。
子どもがしてしまったことを、あれこれ言っても仕方がないという前置きを作ってから話をすると、そうならばこれからどうしていけばいいのかを考えさせることができるのです。
そして、いっしょに割れたガラスを片づけながら、「どうしていて割れたの」と聞くと、子どもは割れるにいたったストーリーを語ってくれます。
なにかの問題が生じたとき、とかく大人は「なぜ?」と、理由や原因を求めます。大人が求めるので、子どもは言い訳をするのです。
このやりとりばかりを続けると、問題が起きるたびに子どもは言い訳を繰り返すようになります。
このように考えると、言い訳ばかりする子は、じつは大人が言わせているとみることもできるのです。
人の行いには、理由や原因がわかったとしても、直せないことがたくさんあります。
「起きてしまったことは仕方がない」というスタンスで、これからどうすべきかを焦点化したほうが会話は上手くいきます。
ただし原因や理由の追究はムダではないことも確かです。再発を防止するには効果もあります。
その意味で原因・理由を探すのなら、ちょっと時間をあけてから、冷静に問いかけるべきです。
「さっきのことだけど、なんで割れたんやろね?」と原因・理由を見つけ、「だったら、これからどうしたらいい?」と解決法を見つけるといいのです。
ただし、このときも相手を責めないで問うのです。話をしたり、指導したりするのは、次からどうすべきかという見通しをもつためなのです。
以上は、ガラスが割れたという学校での指導について、例をあげ説明しましたが、ご家庭での子育てについても、あてはまります。言い訳の多い子にはぜひ実行してみてください。