箕面三中もと校長から〜教育関係者のつぶやき〜

2015年度から2018年度に大阪府の箕面三中の校長を務めました。おもに学校教育と子育てに関する情報をのせています。

自然と人間の調和

2020年07月21日 08時28分00秒 | 教育・子育てあれこれ
今年の梅雨は、大雨で日本各地に洪水、土砂崩れ、家屋への土砂流入など、深刻な被害をもたらしました。




かつてなかったほどの雨が降ると言われましたが、その予報が毎年のように出されるようになりました。

川の増水による被害が伝えられますが、日本各地にある農業用水蓄えるため池も、増水で溢れたり、決壊するリスクを抱えています。

四国・香川県に満濃池(まんのういけ)というため池があります。

池といっても湖のように広く、周囲は約20kmもあります。釣りの場所としても、昭和の頃から有名です。

わたしは、小学校の頃、ここがへラブナ釣りのスポットと聞き、行きたいと思った記憶があります。

このため池は、西暦700年ころに作られたそうです。その後、洪水により堤防の決壊・改修が繰り返されたそうです。

この改修に派遣されたのが空海でした。彼は池のふちを曲線で弧を描いたアーチ形(R状曲線)にしました。

じつは空海は、自然の中で修業をした人であり、雨が降りそうなのを自然の予兆から動物的に感じとる力を体得していました。

物理的なことは知らなくとも、曲線を使うことが土木工事で水の力を分配するというか、水圧と堤の強さが調和を保つのに有効であることを知っていたのでしょう。

それから1200年以上たったいま、私たちは大規模な洪水に毎年悩まされています。

じつは、温暖化になり、雨の降り方が変わったという気象条件の変化はあります。

しかし、日本は古来から、洪水、地震、台風、津波、ききんなど、さまざまな自然災害に悩まされてきているのです。

だから、科学がいくら発達したにしても、大自然の力に、人間は太刀打ちできません。

科学は人びとの生活を便利にしてくれます。だけど、科学の力で自然災害をコントロールなどできないのです。

そもそも、私自身は、大阪府内の自然環境豊かな地域で生まれ、ずっと暮らしてきました。

だから、感じるのですが、「人と自然の共存」を打ち出し、人間は自然に依存しようとするのですが、自然は人間に依存などしていません。

いつもキリッとしていて、「おまえたちがいなくても、わたしは存在しているよ」というメッセージを暗に発しています。

なのに、人間はガーデニングや科学(化学)農業を使い、自然をコントロールしているように錯覚しているのです。

おそらく、環境問題にしても、「自然にやさしい」というとりくみも、それは人間が生きていく視点で言っているだけで、自然はそのようなものが必要ですとは言っていないのです。

このように考えたとき、自然との「共存」というのはおこがましくさえ、私には思えるのです。

ですから、人間は自然に対して、「申し訳ないですが、私たちも生きなければなりません。せめて、調和しながらいっしょにおつきあいしてください」という謙虚な気持ちになることです。

災害対策には、空海のように「自然と調和していく」という視点が欠かせないのです。

学校教育の一つの分野に「環境教育」があります。「環境にやさしく」をテーマに行います。

その際でも、人間が安心して安全に暮らしていくために、児童生徒は学習します。

また、「防災教育」もあります。
そのとき、日本はそもそも自然災害を避けて通ることはできない。
自然災害が起きれば、災害を最小限に留めるためにどうするかを学習するのです。

自然というものに敬意を払い、畏敬の気持ちをもちたいのです。


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