箕面三中もと校長から〜教育関係者のつぶやき〜

2015年度から2018年度に大阪府の箕面三中の校長を務めました。おもに学校教育と子育てに関する情報をのせています。

「待つ」ことのできる教師

2020年01月14日 06時36分00秒 | 教育・子育てあれこれ


すべての生徒がよくしゃべるわけではありません。しゃべったかと思えば黙り込んだりする生徒もいます。

ただ、教師にとって、苦手とすることが多いのは、ほとんど多くを語らない無口な子です。

なかには何をたずねても、ジーと黙りこむ生徒もいます。

「聴く」ことが大切なのはわかっているが、話してくれないと始まらない。

なんでもよく話す生徒には、それに返していくことで、言葉のキャッチボールがしやすいのですが、黙りこむ生徒に面談した場合には、沈黙が過ぎていく。

私が以前担任していたクラスにある女子生徒がいました。生活習慣は確立していて、ある程度学習が得意な生徒でした。

何のことについて尋ねたかは忘れましたが、ジーと黙っているばかりで、こちらから質問しても「・・・・」。

無意味に時間が過ぎていきます。そして、何度か質問をしたあともジーと黙っていたので、私はついに怒鳴ってしまいました。

「黙っていたら、なにを考えているかわからないやろ。話してはじめて何を考えているのかわかるんや。なんで黙っているねん」

私が感情的になったので、相手は驚いたようでしたが、それでも沈黙でした。

気まずくなり、その時の話は、お茶を濁すように繕って終わりましたが、あとで私は反省しきりでした。

つい感情的になってしまった。考えてみれば、その生徒はずるいところなどまったくなく、礼儀正しい生徒でした。

話が続かないのなら、早く面談を終わらせ、例えばその子に礼儀正しさについて「あまり話せなかったけど、人として大切なものをもっていると思うよ」と加えればよかったのだと思います。

一昨年、15年ぶりに彼女に会い、私は謝りました。彼女は中学生の時は「自分だけがわかっていたらいい。人に言っても意味はない」と思っていたそうです。

生徒と面談して沈黙があっても、その場の雰囲気が重くなく、温かであることが大切だったのだと思います。お互いの人間関係ができてくると、沈黙があっても安心して待てるようになります。

思い出せば、当時の私は「待つ」ということができなかったのです。

温かく生徒を見守り、その生徒のよさ(自分では気がついていないかもしれないよさ)を見つけ、それを言葉にして伝え、包むような面談によって、「待つ」ことができます。

親御さんなら、わが子の性格や何を思っているかは、よくご存じでしょうが、教員は黙り込む生徒に対して「待つ」スキルを身につけるべきです。

けっきょく、おたがいの人間関係ができてくると、沈黙があっても安心して待てるようになると思います。


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