この名前を覚えたのは小学校に上がった頃だったと思う、小学校の校庭入口正面に小さな築山があって二宮金次郎の像が立っていてその直ぐ横につるりとした肌と斑の皮様の模様のある木が有った、先生だったか親だったか覚えていないが「サルスベリと言う木」だと言う名前を聞いた、木の肌が硬く滑りそうなので「猿も滑る」と言う名前だと聞いてそうなのかと思ったが後で考えると猿は別に爪を立てて木に登るわけではないから別の意味なのかなと思った記憶がある、この頃はこの木に花が咲いていた記憶は無い。東京に来て働き出しても若い頃はあまり興味が無かったので印象は薄い、伊豆に潜りに良く行くようになって街道のあちこちに咲いているのを眼にして「ああ、百日紅にはいろんな色の花が有るんだな」と気が付いた、それからは意識して見ると結構東京の家にも植木として育てられている様だが色は殆どが薄いピンクだった、暑いときは殆ど海に向かう事が多かったので他の地方が良く分らないのだが伊豆地方で言うと天城峠を越えた頃から眼にし始める、どちらかと言うと下田街道を堂ヶ島に向かう街道に多かった、それは白、ピンク、薄紫と3種類合って微妙に混ざり合った木も有る事にも気が付いた、伊豆は低い丘の様な山の間を縫うように流れる小さな沢の様な川を挟んで段々田圃が連なっていてその所々に家がある、上の方は潅木があるのだが景色としては田の中に家が点在する風景だ、その家々の周りと街道筋迄出る道の脇にいろんな花木が植えられていて古そうな家の庭先に百日紅は有った、近寄ってみると花は縮れた花弁で少し離れてみると粟のように見えるのだがあまり派手ではないこの花が私にとっては(爽やかな夏)を感じさせる花のようである