「宮崎正弘の国際情勢解題」
令和六年(2024年)6月28日(金曜日)
通巻第8308号
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李尚福前国防相と魏鳳和元国防相の党籍を剥奪。上将の階級も取り消し
軍に闇のシステム、習近平がいかに綱紀粛正を呼びかけようが。。。
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中国共産党第20期中央委員会第3回総会(3中総会)は7月15日から四日間、北京で開催される。直前となる6月27日の中央政治局会議で、李尚福前国防相と魏鳳和元国防相の党籍を剥奪する処分を決定した。
また両氏は軍から除名され、それぞれの「上将」(大将)階級も取り消しとなった。国防相経験者が一度に2人も処分されるのは異例である。処分理由はいわずとしれた軍の汚職体質、というより軍の上納システムという悪弊にある。
軍の汚職、腐敗は歴史的伝統であり、日清戦争で李鴻章が最新鋭軍艦を視察し武器庫を点検したところ、砲弾がなかった。横流しで売り払ったあとだった。
人民解放軍となっても部署の交替で賄賂が流れ、また装備部などでは軍服やら長靴や装備末端にいたるまで業者から賄賂をとる。
糧食も同じで業者から賄賂、当然おこる数量の誤魔化し、手抜き、質の低下があり、これらが中国製武器の性能の劣悪さに直結する。空母? 四日間くらいしか動かず、すぐ修理。
潜水艦? 先々週だったか台湾のイカ釣り漁船近くに中国の潜水艦が突如浮上し、やがて護衛艦に守られて中国方面へ去った「事件」があった。潜水艦って、ふつう90日間は潜り続ける。
少尉から中尉に出世するには前任者への『上納金』が必要とされ、たとえば上将への上納金は一億円が相場といわれる。ま、日本では退職金とその後の天下りがあるが、中国には軍に闇のシステムが存在し、習近平がいかに綱紀粛正を呼びかけたところで、この体質は治らない。失脚したふたりは「見せしめ」でしかない。
☆◎☆◎ミ○☆◎☆◎ヤ◎☆◎○☆ザ◎☆○☆◎キ◎◎○☆□
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そういえば。
昔読んだ朽木寒三の「馬賊戦記」に、軍閥が割拠していた頃の刑務所(監獄)の話が出ていた。監獄の門前には何軒も骨董品の店があるんだそうだ。
流行っているようにも見えないのに店はずっと営業していて、立派な骨董品が並んでいる。
奇妙なことに或る日、骨董品が店先から消えるのに、数日後には同じものがまた店頭に並んでいる。そういうことが繰り返される。
実は大金を持って買いに来る者がいる。届け先は向かいの刑務所長。
骨董品を受け取った所長はそれを骨董品店に買い取ってもらう。つまり所長に多額の金=賄賂が入る。結果、収監されている大物の扱いが激変する、と。
表面だけ見ると「とかくこの世は金次第」となるが、購入者―店主-所長―収監者は「避諱」の信念で固く結びついている。
この「文華」は中華思想がなくならない限り消すことは出来ないのかもしれない。