最初、「両方のステップが同時に動くんだから、ネジは一本で留めてあるんだろうか、カブってのはとことん単純に作ってあるんだな」、と思った。
でも、それはいくら何でも能天気過ぎる捉え方だろう、とちょっと恥ずかしくなった。
普通、シートに腰かけているんだから全体重は常にシートに掛かっている、と見える。
けど、乗っている者なら分かる。二輪でバランスを取りながら走っているんだから、車体にしっかりと固定されたステップに、ほんの少し(時には大きく)体重を掛けることの大事さを。ほとんど無意識のうちにそれをすることで、車体を傾け、カーブを無駄なく走り抜けることができるのを。
ネジ一本で留めてあったりしたら両足同時に踏ん張ることができなくなって、バイクはバランスを崩し、乗っている者は瞬時に道路に叩きつけられる。
そして現に、鏡で見たらネジは4箇所。
さて。今日、4月2日は昼過ぎに歯の治療。
前日の4月1日、バイク店に電話を入れていた。翌日(つまり、今日)の昼過ぎに問題のネジは届くということだった。
だったら、歯科医院に行く時カブで行ってバイク店に預け、そのまま百メートルほど歩いて医院に行こう。帰りは乗って帰れる。
カブのステップのぐらつきは一昨日と同じ。当たり前か。ガレージに入れてから一日触ってない。
けど、その後がいけなかった。ぐらつきの程度を確認するつもりが、少し動かした分だけ、また緩んだらしい。
気づかずエンジンをかけ、走り始めた。
ステップに足を置く。置いた拍子に両足に力を入れ、無意識に左右の足を前後に踏ん張る。今までで一番大きく、ステップが動く。感覚の許容範囲を超えている。ドキッとする。
ぐらつきが桁違いに大きくなっている。ちょっとでも力を入れたらステップが脱落しそうな危うさを感じる。クルマだったら、「あれ?ハンドル、あそびが大きくなった?わっ!ハンドル、抜けた!!」みたいな。
それでも車なら直進する。慌ててブレーキを掛けても、取り敢えず真っすぐ進んで停まる。
バイクは乗っている者がじたばたすればするほど、暴れ馬もびっくりな蛇行が始まり、次の瞬間、ものの見事に放り出され、あとからバイクが降って来る。
ステップに足を置かなければ、ギヤシフトがしづらくなる。
ステップに足を置かなければ、リアブレーキが掛けづらくなる。
ステップに足を置けば、間違いなく、もっとネジが緩む。バイク店までの数百メートルを走り切らずに轟沈・・・やだやだ。
ステップに足を置かずにバイクに乗る、というのがこんなに大変だ、とは思わなかった。
こんなに用心してバイクに乗ったのは、初めてバイクに乗った三十数年前以来かもしれない。
店に着いた時は、本当に今にも脱落するのではと思うくらい頼りない踏みごたえになっていた。
一時間ほど後。病院の帰り。
チェーン調整をしてもらい、まだ早いけど、エンジンオイルの交換も併せてしてもらってカブはめでたく退院。
明日はおそらく時期的には今年最後になるだろう花見に行こうと思っていた。SRで行くつもりだったが、試運転も兼ねて、カブで行くか。
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