9月も中旬となりお彼岸が近付いてくると、そろそろ秋の気配がしてくる。今回はひさびさに仕事中に聴くBGMの話題である。以前のブログでも書いたが僕は季節によって聞く音楽が変わる。今年の夏は60年代のジャズをよく聞いた。最近集中して聞いていたのはテナーサックスのソニー・ロリンズ。けっこう夏の暑さに合っていた。暑さが和らぎ秋めいて来ると、やはり自然とクラシック音楽が聴きたくなってくる。今年もおそらくこれから冬にかけてクラシックを聴いて行くことになるだろう。
これも以前に書いたが季節を問わず朝一番にかけるのはモーツァルトと決めている。モーツァルトの長調のアップテンポの曲を聴くと寝ぼけた頭脳のセンサーがカチャカチャと音をたてて動き出すような気がするのだ。交響曲、ピアノ協奏曲、ヴァイオリン協奏曲、室内楽、ピアノソナタ…いろんな種類のCDをほとんど聴いてみたが2年程前、突然、歌曲が聴きたくなった。初めのうちは代表的な歌劇の『魔笛』や『フィガロの結婚』を聴いていたのだが、「歌もの」と言えばやはり女性ソプラノを中心に聴いて見たくなった。いろいろとネット検索しているうちに出会ったアーティストが今回ご紹介するバーバラ・ボニー女史(Barbara Bonney)である。最初に聴いてみたのは、やはりモーツァルトで『MORZALT LIEDER Barbara Bonney』というアルバムで日本語のタイトルが「春への憧れ~モーツァルト:歌曲集」という一枚。ピアノの伴奏だけで古典的でロマン的な歌曲を伸びやかで明澄な声により歌いこんでいる。これですっかりファンになってしまった。
その後、モーツアルト以外のCDも聴いてみた。ロマン派は得意なようで、シューベルトの歌曲集、メンデルスゾーンの歌曲集、R・シュトラウスの歌曲集、それからモーツアルトの末子、フランツ・クサファー・モーツァルトの歌曲集はいずれもピアノの伴奏のみでボニーの美声をしっとりと聴くことができる。その他で変わったところではウィリアム・バードなどイギリスの古典的な歌曲とアリアを集めたアルバムで古楽器をバックとした歌唱や、最近お気に入りのウィーンのオペレッタのアリア集は明るく可憐でユーモアもありとても聴き易かった。これは思い出しては繰り返し聴いている。そしてオーケストラ共演のものでは小澤征爾指揮、ボストン交響楽団とのフォーレの『レクイエム』も良いが、ボニーの声を中心に聴くという意味では印象が弱くなってしまうのは否めない。
ボニー自身、アメリカでオペラの歌い手としてデビューし活躍したのだが90年代のあるインタビューで「もうオペラは充分です。これからは歌曲に専念します」と宣言したという。やはりこの人の繊細で透明感のある歌声はピアノや室内楽的な小編成の伴奏により生かされてくるのだと思う。
今月に入って僕の工房での制作も水彩やペンによる細密なドローイング作品が多くなってきた。長時間の集中力と持続力が必要となってくる。明日も早朝から歌姫の美声によるBGMからスタートすることにしよう。画像はトップがモーツァルトの歌曲集のCDジャケット。下が最近お気に入りのオペレッタのアリア集のCDジャケットとボニーのいろいろなCD。