宇宙のはなしと、ときどきツーリング

モバライダー mobarider

小惑星ベスタの地殻の厚さは80キロ以上もある

2014年07月26日 | 小惑星探査 ドーン
地球と同じ層構造を持つ小惑星ベスタの地殻が、
これまで考えられていたものより3倍は厚いことが分かりました。
これにより、これまでの太陽系の惑星形成モデルが改められるかもしれないんですねー
ベスタは火星と木星の間にある小惑星で、
大きさは直径500キロもあり、3番目に大きい小惑星になります。
そして、地球と同様に中心から外側に向かって、
核・マントル・地殻となる層状の構造をもっています。

2007年に打ち上げられたNASAの探査機ドーンが、2011年7月から2012年7月にかけて1年間、ベスタを周回する観測を行っていました。
ベスタの地殻はこれまで深さ30キロ程度と考えられていたのが、
探査機から得られたデータの解析で、実際には80キロ以上もあることが分かります。

ドーンのデータからは、ベスタの表面にはマントルの主な成分であるオリビン(表面にカンラン石)を含む物質が、ほとんどないことが分かっています。
小惑星ベスタの内部構造。
深成岩の地殻が80キロ、オリビンを含むマントルも80キロある。
内部には鉄とニッケルを含む核を持つ。
ベスタでは過去に、南極付近に大きな隕石衝突が2回起きたことが判明していて、
衝突の際にできたクレーターは小惑星表面から80キロほどの深さに達し、
マントルに含まれる物質のかなりの量が、表面に飛び散ったと考えられていました。

隕石衝突の規模はひじょうに大きく、飛び散った岩石は隕石として地球にも飛来していて、
地球で見つかった隕石の5パーセントは、ベスタに由来するものだそうです。

ベスタ表面にオリビンが見つからず、
また南極のクレーター付近にも見つからなかったことから、
衝突した隕石はベスタの地殻を貫通し、マントルに到達しなかったと考えられます。

ベスタの層惑星形成のシミュレーションから、厚さ30キロほどと考えられていた地殻は、
厚さ80キロ以上ということが分かったんですねー

地殻は、プルトン(深成岩)が小惑星の表面に広がっていくことで厚くなります。

ベスタにオリビンの豊富なマントルが少なく、輝石(パイロキシン)の多い外殻を持つのであれば、小惑星ベスタの形成を説明するモデルは変光を迫られることになります。

地球を含む惑星形成の基本的な理論では、
「原始的な物質がクラウド状に集まり、熱せられ、溶けて結晶化して惑星を形成する」っと考えられていました。

でも、この理論を再考し、
物質の組成に加えて、軌道やサイズ、冷えるまでの時間なども考慮した、
より複雑なモデルを検討する必要がありそうですね。

“DARPA” 衛星打ち上げ用スペースプレーン開発に着手

2014年07月25日 | スペースプレーン
2014年7月15日、国防高等研究計画局“DARPA”が、
低コストで人工衛星を軌道上に投入できる、再使用型宇宙船Experimental Spaceplane(XS-1)の開発に着手すると発表しました。

XS-1は、衛星打ち上げのコスト削減と、
打ち上げ準備期間の短縮を目指して、
“DARPA”が進めてきたスペースプレーン
(再使用型宇宙船)の構想で、軍用・民間用のデュアルユースとなります。

XS-1の構想では、再使用型の第1段、超音速スペースプレーンが弾道飛行を行い、
上空で現行のロケットと同じ、使い捨て型の第2段を切り離します。

第2段は、小型衛星を地球低軌道に投入することになります。

そして、地球に帰還した第1段は、モジュール型の部品や耐熱部品を交換し、
すぐに次の打ち上げの準備を整えることが可能になります。

技術面の目標としては、10日に10回の打ち上げ、マッハ10以上の速度、
1350~2250キロのペイロードを、1回あたり5万ドル以下のコストで打ち上げることを目指しているんですねー

今回“DARPA”は、XS-1の開発フェーズ1に参加する、以下の3組の企業を選定しています。
 ・ボーイング及び、
  ブルーオリジン(アマゾンのジェフ・ベソスCEOが設立、NASAの商用有人宇宙船計画に参加)
 ・マステン・スペース・システムズ(Xプライズ NASA月着陸機チャレンジで優勝した宇宙ベンチャー)
  及び、エックスコア(再使用型宇宙船リンクスを開発中)
 ・米防衛大手ノースロップ・グラマン及び、
  ヴァージン・ギャラクティック(弾道飛行型宇宙旅行の商用運行を間もなく開始)

3組の企業には、フェーズ1の段階でXS-1の試作機開発などの課題が設定されていて、
達成度によって“DARPA”から技術的実現可能性の評価を受けることになっています。

“DARPA”は昨年、XS-1よりもさらに小型の45キロ程度の衛星を、
航空機から空中発射して軌道に投入する“ALASA”構想をスタートさせていて、
こちらはボーイングが開発企業として選定されています。

火星の火山に生命に適した湖の形跡が…

2014年07月24日 | 火星の探査
NASAの火星探査車キュリオシティとオポチュニティが、この1年でもたらした一連の発見。
これにより、「30億年以上前に大量の水が火星表面に存在した」との確信がかつてないほど強まっています。
そして水があった場所には、生命が存在したかもしれないんですねー

火星にある巨大な楯状火山アルシア山。
山頂には火山活動によってできた
カルデラが見える。
でも火星には、わずか2億1000万年前にも液体の水が存在していて、かつてアルシア山と呼ばれる火山の側面にあった氷河内部で、湖を形成していたようです。

アルシア山は、標高がエベレストの2倍近くもある、火星で3番目に高い山です。
この研究では当初、湖を探していたわけではなく、アルシア山の側面に見られる扇状の堆積物の特性を調べていたんですねー

ところが、火星探査機マーズ・リコナサンス・オービターがとらえた画像を分析してみると、堆積物の上に奇妙な盛り土のようなものがあることに気づくことになります。

ちょうど薄くて平坦なパンケーキのような形をしていたそうです。

何がアルシア山の風変わりな地形を作り出したのかは分からなかったのですが、
山の斜面が氷河で覆われていた時期、アルシア山が火山活動中だったんですねー

そこで、地球上の火山と氷の相互作用に関する論文を参考にすることになります。

氷河の下で噴火が起こると、地球でもパンケーキ状の地形が形成されることがあります。

高温の噴出物質によって必然的に氷は解けるのですが、氷河が十分に厚ければ最上部は凍ったままの状態を保つことができます。
この氷の下に溶岩が広がることで、水に囲まれた薄い層が形成され、氷河内に湖ができあがります。

ただ、火星の氷河内にあった2つの湖は、
どちらも数百年から約8000年の間に再び凍結したと見られています。

有機分子から生命が生まれるためには数百年、あるいは数千年あっても足りないので、
かつて湖に生命体が存在したとしても、そこで発生したと特定することができないことになります。

火星探査車が対象とする時期は、火星全体が現在よりもはるかに気温、 湿度ともに高かく、
その時期に生命が誕生し、惑星が干上がり始めた30億年前頃に、微生物が地表の下に逃れた可能性があります。
また、その微生物が氷河内の湖にコロニーを形成した、とも考えられるんですねー

でも、水だけではそのような現象は起こらず、
代謝には炭素やエネルギーも必要になり、どこから得られるのかは分かっていません…

とはいえ、火星がほぼ乾ききった何十億年も後に、液体の水があったという発見には、
数十年前は誰も想像しなかったような場所に、生命維持物質が存在する可能性を再認識させてくれます。

地球外生命の探索が続く中、今回の研究成果が良い知らせであることは間違いありませんね。

アヒル型の彗星“チュリュモフ・ゲラシメンコ彗星”

2014年07月23日 | 彗星探査 ロゼッタ/フィラエ
ヨーロッパ宇宙機関の彗星探査機“ロゼッタ”が、目標天体チュリュモフ・ゲラシメンコ彗星を撮影し、
2つの塊がくっついたような形状が明らかになりました。
“ロゼッタ”は8月に彗星に到着し、いよいよ探査が開始になる予定なんですねー

チュリュモフ・ゲラシメンコ彗星。
1万2000キロの距離から20分ごとに
撮影した36枚の画像から作成。
彗星は7月14日に撮影されていて、
2つの部分に分かた姿は、お風呂に浮かべるアヒルのおもちゃを思わせるものでした。

2つの塊がくっついたような“接触連星”型は、
彗星や小惑星によく見られるもので、
探査機“はやぶさ”が観測した小惑星イトカワなどでおなじみの姿です。

イトカワの場合は、2つの部分の密度が異なるという研究成果も発表されていて、
そこから「2つの天体が衝突合体したもの」という見方が有力になりました。

ただ、チュリュモフ・ゲラシメンコ彗星については、
これから詳しいことが分かってくるので、さまざまな可能性が考えられるんですねー

可能性としては、
イトカワと同様に2つの天体の合体によるもの、
もとから1つの天体だったが、大型天体の強い重力による潮汐作用で変形した、
あるいは激しい天体衝突や、物質揮発やアウトバーストなどの彗星活動がきっかけで非対称に崩れた、というものが考えられます。

8月6日のランデブーに向けて、さらに近づくと見えてくる詳しい形状データは、
まず、探査機の軌道や着陸場所の検討に役立てられます。

そして、無事観測探査が進めば、
チュリュモフ・ゲラシメンコ彗星の形成過程を知る、
多くの手がかりが得られることになるんですねー

合体する銀河が重力レンズに

2014年07月22日 | 宇宙 space
ハッブル宇宙望遠鏡によって撮影された、2つの銀河の合体(拡大部分)。
これによって、さらに遠くの銀河から発せられた光が、青い光の輪となって見えている(小さい四角の部分)画像が公開されました。


輪の中心では、2つの銀河の合体が10万光年の距離にわたって発生。

「まるで一筋の真珠の連なりが、らせん状にねじれているように見える」っと宇宙望遠鏡科学研究所から発表されました。

2つの巨大銀河の合体に伴い生じる強い重力のせいで、後方のさらに遠くの銀河から発せられる光が屈折。
レンズのような効果を発揮し、明るさがましているんですねー

見た目にも歪が生じていて、衝突し合体する2つの銀河の周囲に青い光の輪が描かれています。

このような光の歪は、“重力レンズ効果”と呼ばれ、かつてアインシュタインが予言した現象。
現在では、宇宙の果ての銀河の調査に利用されています。