宇宙のはなしと、ときどきツーリング

モバライダー mobarider

火星からとらえたサイディング・スプリング彗星の核

2014年10月26日 | 流星群/彗星を見よう
20日に火星に接近したサイディング・スプリング彗星を撮影した画像。

この画像は、NASAの探査機“マーズ・リコナサンス・オービター”が撮影したもので、
太陽系の果てからやってきた長周期彗星の核を、はっきりととらえた史上初の画像になるんですねー


サイディング・スプリング彗星は、
地球から月までの距離の半分以下、火星から14万キロの距離を通過しました。

このとき、火星で活動中の周回機や探査車が観測を行っているんですねー

その中でもっとも高解像度で彗星の姿をとらえたのが、
“マーズ・リコナサンス・オービター”に搭載された高解像度カメラ“HiRISE”でした。
“マーズ・リコナサンス・オービター”がとらえたサイディング・スプリング彗星。

“HiRISE”カメラは、
最接近時の彗星を、1ピクセルあたり138メートルでとらえていて、
画像には彗星核が2、3ピクセルの大きさで写っています。

太陽系の果てのオールト雲から、初めて太陽系中心部にやってきた彗星の核が、
はっきりと撮影されたのは、これが初めてのことでした。

核の大きさは、およそ1キロと思われていたのですが、
実際にはその半分以下であることが、この観測から判明することになります。

“マーズ・リコナサンス・オービター”など火星上空の周回機は、
彗星から放出されたチリによるダメージを避けるため、
リスクの高い時間帯に、火星の裏側に回る軌道を取っていました。

その後、周回機は全て正常な状態であることが確認されたそうです。

系外惑星の温度分布図を作成

2014年10月25日 | 宇宙 space
ハッブル宇宙望遠鏡の観測により、
初めて太陽系外惑星の大気の詳細な温度分布図の作成が実現しました。

この図には、常に光が当たっている昼側の温度分布や、
高度による温度変化も示されているんですねー
木星サイズの太陽系外惑星“WASP-43b”の
温度変化を表したイラスト。
今回研究チームでは、
遠距離からの観測に当たって、
ハッブル宇宙望遠鏡のデータをもとに、
間接的な手法で系外惑星の正体に迫っています。

“WASP-43b”は木星の約2倍の質量で、
地球から260光年ほど離れた位置にある系外惑星。
今回作成された温度分布図は、
NASAが今後打ち上げる宇宙望遠鏡によって、恒星の近くを周回する惑星の大気から、
生命の兆候を探るための道筋を示すことになります。

今回の研究では、“WASP-43b”の大気層を観測、
生命の存在に欠かせない水の測定も行われています。

系外惑星の温度測定に成功したのは、今回が初めてではありません。
わずか数週間前にも、海王星に匹敵する惑星を観測したチームが、
大気中に水蒸気を検出したと報告しています。

でも、詳細な温度分布図を作成するためには、
“WASP-43b”が主星“WASP-43”を3周する間、休まず観測する必要がありました。

幸い“WASP-43b”は主星の近くを周回していて、
わずか20時間足らずで1年が経過するんですねー
まぁー それでもハッブル宇宙望遠鏡の焦点を、
1か所に合わせ続けるには長すぎる時間だったようです。

それは、放射線量が異常に多く、電子機器にダメージを与える恐れがある、
バン・アレン帯の南大西洋異常帯を何度も通過するからです。


精度の高いハッブル宇宙望遠鏡ですが、
“WASP-43b”をまぶしい主星と区別して観測するのは不可能なんですねー

そこで、“WASP-43b”と主星の光を組み合わせて観測することになります。

“WASP-43b”は、潮汐作用によって“固定”されているので、
地球から見る月が、いつも同じ面を向いているように、常に同じ面を主星に向けています。

しかも、両者が非常に接近しているので、
昼側の温度は摂氏1650度あたりで推移し、自ら光を放っていて、
一方、常に暗い夜側の温度は約540度で安定しています。


主星の光量は従来から分かっていたので、
単純な引き算で“WASP-43b”の光量を計算することができました。

さらに、“WASP-43b”の満ち欠けから天気図を作成。
ハッブル宇宙望遠鏡により、昼側の大気データを緯度方向に細かく取得していて、
そこからエネルギーの大きさを測定し、緯度ごとの熱量の割合が判明します。

この情報から大気の力学が分かり、
熱が昼側から夜側に、どの程度分配されているかを予測できたんですねー
意外なことに、昼側から夜側への熱移動は、あまりない事実が判明することになります。


さらに、“WASP-43b”に存在する水分量の測定も行われました。

惑星が主星の手前を通過する際、主星の近赤外線スペクトルから、
惑星大気が吸収する水蒸気の痕跡が検出できるんですねー

系外惑星での水の存在は、生命の可能性を示すことになります。

でも今のところ、地球に存在するような生命には適さない、
高温または巨大すぎる惑星でしか検出はできないようです。

130億光年彼方の小さな銀河

2014年10月24日 | 宇宙 space
130億光年以上彼方の宇宙に、
大きさが天の川銀河の500分の1しかない、もっとも遠く暗い部類の銀河が見つかりました。

同様に暗く、まだ見つかっていない銀河は多数存在するようで、
これら見つかっていない銀河の存在が、
誕生間もない宇宙での出来事を、解き明かすカギになるようです。


銀河が見つかったのは、
ちょうこくしつ座の方向35億光年彼方にある巨大銀河団“パンドラ銀河団”の画像なかでした。

この画像は、ハッブル宇宙望遠鏡の2種類のカメラでとらえられていて、
近赤外線像と可視光線像には、銀河団の巨大な質量で生じた強い重力レンズ効果が…

この重力レンズ効果で、さらに向こう側にある銀河が、
それぞれ本来の10倍も明るく見える、3つの像に分離したようすが写っているんですねー

“パンドラ銀河団”と、
3つに分離された遠方銀河の重力レンズ像
遠方の暗い銀河までの距離は、その色から探る方法“測光赤色偏移”と、
分離した像の離れ具合から探る方法で求められています。

すると、この銀河の距離は、
約130億光年以上彼方ということで一致することになります。
これだけ遠く暗い銀河の距離としては抜群の信頼度だそうです。

重力レンズで増幅された像でさえも、小さなしみのように見えるこの銀河は、
他に同時代に発見された10個の銀河候補に比べて、はるかに小さく暗いんですねー

その幅は、わずか850光年で、天の川銀河のおよそ500分の1なんだとか…

質量は、太陽4000万個分と見積もられています。

3年に1個という星形成率は、天の川銀河の年間1個に比べて低く思えますが、
銀河の質量が小さい割には、速く効率的に星が生み出されていることになります。

このような、かすかな未知の銀河を、さらにたくさん見つけることは、
銀河や宇宙の進化を、より理解することにつながります。

特に宇宙誕生から2億~10億年後に、
銀河の恒星からの紫外線が、水素を電離したとされる“宇宙の再電離”を起こすには、
現在観測されている銀河だけでは、とても足らないんですねー

カリフォルニア工科大学は、ハッブル宇宙望遠鏡のほか、
“スピッツァー”、“チャンドラ”といったX線天文衛星を利用して、
さらに多数の暗い初期銀河を探すプロジェクトを進めていくそうですよ。

米空軍のスペースプレーン“X-37B” 22か月のミッションを終えて帰還

2014年10月23日 | スペースプレーン
米空軍の無人宇宙往還機“X-37B”が、
10月18日に3回目のミッション(OTV-3)を終えて、
カリフォルニア州のヴァンデンバーグ空軍基地に着陸しました。

飛行期間は22か月にも及んだのですが、
宇宙空間でどのようなミッションを行っていたのかは、
謎に包まれているんですねー
“X-37B”は2012年12月12日に、
アトラスV 501ロケットに搭載され、
フロリダ州にあるケープ・カナベラル空軍ステーションから打ち上げられました。

“X-37B”は、製造をボーイング社が担当し、米空軍が運用する無人の宇宙往還機(スペース・プレーン)で、
完全な自律飛行が可能で、スペースシャトルのように再使用ができるように造られているんですねー

これまでに2機が製造され、
1号機は2010年4月22日に打ち上げられ、同年の12月3日に帰還。
また、2号機は2011年3月5日に打ち上げられ、2012年6月16日に帰還しています。
今回のミッションは、1号機の2回目の飛行だったそうです。

ただ、この3回のミッションに関して、その内容は明らかにされておらず、
軌道上で何を行っていたのかは不明なまま…
こうした宇宙往還機を飛行させること自体が主目的なんでしょうが、
おそらく背中にあるペイロード・ベイに何らかの装置や機器を搭載し、
宇宙空間で試験や実験を行っているんでしょうね。

軌道上の衛星を観測することを趣味にしている愛好家らによれば、
飛行中に何度か軌道変更をしていることが確認されています。

またカタログスペックでは、
“X-37B”の軌道上での滞在可能期間は270日とされているのですが、
前回のミッションでは469日。
そして今回はさらに上回る674日間、約22か月間にも及んでいます。

米空軍によれば、2015年に4回目となるミッションを行う予定で、
おそらく2号機の2回目の飛行にあたると思われます。

また、今月8日にNASAが発表したところによれば、
退役したスペースシャトルが使用していた格納庫を、
“X-37B”向けに改装する計画があるようです。

なので米空軍としては、
今後も長きにわたって“X-37B”計画を進めるようですね。

土星の衛星“ミマス”の地下には海がある?

2014年10月22日 | 土星の探査
最新の研究によれば、
クレーターで覆い尽くされた土星の衛星“ミマス”の地下には、
液体の水の海が存在するそうです。

エンケラドスやタイタンのように、
いずれは、地下海の可能性が指摘されている衛星の仲間入りを、
果たすかもしれないんですねー
NASAの土星探査機“カッシーニ”が
撮影した土星の衛星“ミマス”。
巨大なクレーター“ハーシェル”は、
“ミマス”の直径の3分の1に及ぶ。
土星の主要衛星の中では最も小さい“ミマス”は、密度が低く、大部分は氷と岩石で構成されていると考えられています。

約23時間の周期で土星を公転しているのですが、その周回中にリズミカルな揺れが検出されているんですねー

地下に海があるという仮説は、
このリズミカルな揺れという現象からきているのですが、
“ミマス”のコアが球体でないという点も、有力な原因として考えられています。

“ミマス”は氷で覆われた外層は球体なのですが、岩石のコアは、ラグビーボールのような楕円体のようです。


どのような理由であれ、
土星探査機カッシーニの画像を丹念に調べて発見した揺れは、
研究チームにとって予想外でした。

地球の衛星の月を含め多くの衛星は、
公転中にわずかに揺れているので、その事自体は珍しくありません。

でも、その幅は、直径400キロ程度の衛星にしてはかなり大きく、
1回の公転で3キロ程度と予想していたのが、実際にはその2倍もあったんですねー


今回の研究では、
さまざまなシナリオのコンピュータシミュレーションを使って、
揺れの原因を探っています。

揺れの原因のアイデアに、巨大な衝突クレーターの下に、
小惑星の残骸が埋もれているというものがあります。

高密度の残骸があれば、“ミマス”の片側がもう一方より重くなり、
土星の強力な重力に引かれてバランスが崩れ、揺れが生じるというものです。

でも、そのような不均衡が存在する場合、
“ミマス”の向きに影響を与え、クレーターがいつも土星の正面に来るはずなんですねー
実際には、そうなっていないため、このアイデアは却下されることになります。


岩石のコアが楕円体なら、“ミマス”の方向に影響を与えずに、
同様の揺れが生じるという仮説も成り立ちます。

さらに、岩石コアが通常の球体だった場合、
厚さ20~30キロの氷の外殻の間に地下海が存在しても、
同様の結果を招く可能性があるようです。

生卵と固ゆで卵を同時に回転させた場合、ゆで卵の方が速く回ります。

ようすは多少異なるのですが、
“ミマス”の揺れは内部の部分的な液体に関連しているとも考えられます。

ただ、実際に地下の海が存在しても、太陽系では珍しい話ではありません。

木星の衛星“エウロパ”、“ガニメデ”、“カリスト”や、
土星の衛星“エンケラドス”ではすでに確認済みで、“タイタン”にも同様の可能性が指摘されています。


今回の研究では、“ミマス”の地下海を実際に証明したわけではありません。

でも、“ミマス”の予想外の動きを示し、説得力のある説明はいくつか出ていて、
“ミマス”の地下海を満たしているのは、液体の水と想定しています。

生命維持に不可欠な要素の1つですが、その存在は確定していません。

でも、“エウロパ”や“エンケラドス”の地下海と同様に、少なくとも可能性は生じます。
ひょっとすると氷の下には、太陽系最大の海が広がっているのかもしれませんね。