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信州里山通信。自然写真家、郷土史研究家、男の料理、著書『信州の里山トレッキング東北信編』、村上春樹さんのブログも

カブトムシのオスがメスを守る際に出す奇妙な鳴き声。花と虫と万葉集(妻女山里山通信)

2016-08-03 | アウトドア・ネイチャーフォト

 ヤブラン(藪蘭)が咲き始めました(左)。キジカクシ科ヤブラン属に属する多年草で、別名はリリオペ、サマームスカリ。信州では野生種を採ってきて庭のグランドカバーなどに植えている家がたくさん見られます。クズ(葛)の花も(中)。根塊から葛粉や漢方薬(葛根湯)ができ、万葉の頃から親しまれ秋の七草ですが、里山はもちろん首都圏などでも大繁茂して大変なことになっている植物のひとつ。昔はつるで葛布を作ったり、籠を編んだり色々利用したので、またそうしてどんどん利用するといいのですが。
ま葛延(は)ふ 夏野の繁く かく恋ひば まこと我が命 常ならめやも【万葉集】
(夏に生い茂る葛の様にこんなに恋をしていたら、私の命も持ちませんわ)夏の避暑地での恋は勘違い?
 植物には、いくらなんでもこの名前は可哀想という種名がいくつかありますが、その代表格がこのヘクソカズラ(屁糞葛)でしょう(右)。古名はクソカズラ(糞葛・屎葛)で、更に屁をつけて追い打ち。別名はヤイトバナ、サオトメバナというので、余計に可哀想。確かに葉や茎を揉むと臭いですが。生薬にもなるし、万葉集にも詠われています。
かわらふじに 延ひおほとれる 屎葛 絶ゆることなく 宮仕えせむ(高宮王)【万葉集】
(カワラフジの木にいたずらに絡みつくクソカズラ。その蔓さながらに不肖私めは何時何時までも宮仕えしたいものだ)宮仕えは昔も今も大変だった様です。
ことわざに「屁糞葛も花盛り」というのがあります。(臭くてあまり好かれない屁糞葛でも、愛らしい花をつける時期があるように、不器量な娘でも年頃になればそれなりに魅力があるということ。鬼も十八番茶も出花)ま、失礼なたとえですね。

 シオカラトンボのメスのムギワラトンボ(左)。ただ未成熟のオスもこんな色なので、尾部の形を確認しないと同定はできません。やや小さいので未成熟のオスかもしれません。
 ヒメギス(姫螽蟖)が駐車場の小石の上に(中)。マメ科の植物を好むので葛の草むらから出てきました。
こほろぎ(蟋蟀)の 待ち喜ぶる秋の夜を 寝(ぬ)る験(しるし)なし 枕と我れは【万葉集】
(こおろぎが出会い待った甲斐があったと喜んで鳴いているのに、私は枕を抱いて練るしかない)という身につまされる哀歌。このこおろぎはキリギリスのことであったという説。万葉集のこうろぎはコウロギで平安時代に入れ替わったとか、ややこしい説があります。
 アマガエル(右)。三歳の頃でしたか、アマガエルを次男の手に乗せて撮った写真があり、困惑した表情の息子がいつ見ても可笑しくてたまりません。アマガエルの表皮の粘液は毒なので、触ったら必ず手をよく洗いましょう。

 樹液バーにやって来ました。カブトムシがたくさん来訪。ペアのカブトムシを発見。オスが吸汁中のメスを守っています(左)。そんなことお構いなしにアオカナブンがガンガンと頭を突っ込んできます。オスのカブトムシは角を使って追い落とします(中)。でもめげません。またやって来ます。別のカブトムシも登場(右)。

 もうこんなになってしまいました。するとオスは、腹を伸縮させて威嚇音を出し始めました。20〜30センチの近距離で聞くと「ギューギュー」という様に聞こえます。音はかなり大きく、2m以上離れても聞こえましたが、「シューシュー」と機関車の音の様に聞こえる音色に変わります。これは距離によって聞こえる周波数が変化するからでしょうか。しかし、それで周りの昆虫が立ち去ることはありません。虚しいです。ただこれは交尾中や興奮した時にも出すので、威嚇音というより腹から出す鳴き声といった方がいいかも知れません。
 カナブンの右に小さな羽虫が三匹います。一番上と下は同じ種類でホシアシナガヤセバエ、中がモンキアシナガヤセバエの様です。彼らも樹液を吸いに来たのです。細く小さいので見落としがちですが、よく見ると結構たくさんいます。

 そこへ今度はノコギリクワガタも登場。大きなオスは下にいるカブトムシにはちょっかいを出さなかったのですが、ノコギリクワガタは即跳ね飛ばして落としました。ノコギリクワガタが攻撃を仕掛けていったからです。下のやや小さなカブトムシは、勝てないと分かっていて攻撃はせず、なんとかおこぼれを頂戴したいという姿勢を貫いています。
 左上に小さなアブが写っていますが、ベッコウハナアブの仲間です。ベッコウハナアブの中には、オオスズメバチの巣の中に産卵するものがいます。これは、スズキベッコウハナアブかニトベベッコウハナアブかどっちでしょう。

 メスのカブトムシが、長い吸汁に疲れたのか離れました(左)。う〜ん私お腹いっぱいと休んでおります。するとオスが樹液を吸い始めました(中)。しかし大きな角が邪魔になって吸いにくそうです。前回紹介したオレンジ色のブラシの様なもので樹液を毛細管現象を利用して吸い上げるのですが、ブラシの上のクリペウスという基幹で木を削って樹液を飲むこともできるそうです。
 メスが再び戻って来ました(右)。さっそく迎え入れ保護するオス。お父さんは大変です。安易に擬人化してはいけないのですが、なんだか涙ぐましい光景です。ほらカブトムシだってこんななのに、あなたも少しは見習いなさい!なんて旦那さんに言わないでくださいね。

 それで、再びボディーガードの仕事に戻ったわけですが、今度は少々厄介なオオスズメバチがやって来ました。厄介に思うのはカブトムシではなく撮影している私なのですが…。明確に樹液バーでの序列はカブトムシが上なので全く問題ありません。以前、オオスズメバチ2匹が共同作業で、猛烈な頭突きで攻撃したことがありましたが、それこそ屁でもありませんでした。ただ、同じぐらいのオスが来たり、ミヤマクワガタが来ると壮絶な大げんかになります。通常は、強い方が下に角を入れて投げ飛ばして終わりですが、時には胸と腹部の隙間に角を入れて、瞬時に切断してしまうこともあります。

 このオオスズメバチは、なんとか樹液を吸おうと接近します(左)。カブトムシの前脚が邪魔です(中)。それでも果敢にその前脚の下から頭を突っ込んで吸汁しようと試みました(右)。カブトムシの脚は凶器ですから、これはかなり危険な行為です。しかもオオスズメバチは、吸うのではなく激しく頭を振って樹液を貪るので、上に脚があったらできません。結果、諦めてすごすごと帰って行きました。オオムラサキの口吻がカブトムシの脚の一撃で切れてしまうこともある様です。

 これは翌日。オオスズメバチが吸汁の後、樹液で汚れた顔を前脚で拭って綺麗にしているところです。レンズフードの先端からは20センチもありません。しかも周囲には4匹のオオスズメバチと2匹のコガタスズメバチがいて、この撮影中には写真の個体の左10センチのところに1匹、私の頭の左20センチのところに1匹ホバリングしていたのです。もちろん撮影してすぐしゃがみ後ずさりしましたが、緊張する瞬間でずっと息を止めていました。
 オオスズメバチの近接撮影は何度もし、追いかけられたことは数知れず、最長は100m追いかけられましたが、刺されたことはありません。アシナガバチやムモンホソアシナガバチには、子供の頃から数えきれないほど刺されています。今年も一回刺されました。友人は刺されてポイズンリムーバーで毒抜きしようとしたのですが、眉毛の中だったので抜けずお岩さんの様になり病院に駆け込みました。今回、オオスズメバチの眼の中に模様が写っていますが、これは初めて撮影出来ました。眼の構造と関係あるのでしょうか。

 撮影をしていたら、私の本の熱烈な読者で中尾山-茶臼山ハイキングにも来てくれて、茶臼山から篠の城の山道を教えてくれた男性が登ってきました。彼のお陰で布施氏の歴史が紐解けたのです。色々話をしていると、私のカメラを持っている右手にシジミチョウが留まりました(左)。これでは撮影できないので、ゆっくりしゃがんでカメラを置き、右手から左手に移しました。盛んに汗を吸っています。これは珍しいことではなく、オオムラサキや色々な蝶に、撮影中に留まられたことがあります。汗は塩分もミネラルも豊富なのです。この後、二回吸いに来ました。ええ色白汗っかきなのです私。
 満足して葉で休んでいます(中)。後翅が20ミリと大きく、形も特徴的でウラギンシジミかなと思ったのですが、飛ぶとオレンジとラベンダーの色合い。同定できず仲間の蝶の研究家にメールしました。やはりウラギンシジミでメスでしょうと。今年は千曲市の空中散布が中止なので復活したのでしょう。どれだけベトナム戦争の枯れ葉剤、ラウンドアップと同じ除草剤(エコワン3フロアブル)が危険極まりないか、はっきりと分かりました。昨年はこの樹液バーには全く昆虫がいませんでした。一度だけ長野市側から来たのでしょう、攻撃的なチャイロスズメバチの集団が一時姿を見せ攻撃されましたが、本当に死の山でした。人的被害も出ています。中枢神経を犯す猛毒で、発癌性が高く、鬱病、脳の発達障害、多動性障害などを引き起こします。残留性が高く、水溶性なので山菜やキノコ、野菜の中に染み込み、洗っても落ちません。TPPはこの使用を遺伝子組み換え作物とセットで義務付けられ、伝統野菜は作れなくなります。作ると訴えられます。伝統野菜や郷土料理が完全に消滅するのです。和食文化は終わります。
 吸汁に向かうオオムラサキのオス(右)。この樹液バーには5頭のオスと2頭のメスが現れます。ネオニコチノイド系農薬の空中散布前に比べると圧倒的に減少しています。気になるのは、空中散布がなかった長野市側で発生が全く見られないということです。今年は、特に低山で蝶だけでなく昆虫全般が少ないと友人の研究家も言っています。それが気象条件によるものなのか、はたまた放射能の2016年問題に起因するものなのか、他の要因なのか不明です。
 さて、今週末は仲間と里山整備をします。オオブタクサなど帰化植物の除去がメインとなります。昼は仲間が手打ちの中華麺を作ってくるそうです。夏野菜も揃うでしょう。私もハナビラタケや金針菜、自家製のホアジャウ(花椒)が効いたラー油を持参します。何ができるのでしょう。

この8月11日は、初めての国民の祝日「山の日」となります。それに先立ち、7月の第4日曜日(今年は24日)が「信州山の日」でした。私も関連でお仕事を頂きましたが、写真を使った記事や、講座・講演なども承ります。お気軽にお問い合わせ下さい。講演、講座も承ります。
 妻女山展望台の南にある大きな駐車場の奥には、清野氏の鞍骨城への地図や、登山ノート、拙書『信州の里山トレッキング 東北信編』の見本誌とパンフレットなどが置いてあります。お問い合わせやお仕事のお申し込みは、当ブログのメッセージを送るからお願いします。

妻女山の位置と名称について」妻女山と赤坂山と斎場山について。『真田丸』で訪問者が激増中。

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