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信州里山通信。自然写真家、郷土史研究家、男の料理、著書『信州の里山トレッキング東北信編』、村上春樹さんのブログも

妻女山は昆虫の季節。ウスバシロチョウ・ミナミヒメヒラタアブ・コジャノメ・トラフシジミ・コミスジ(妻女山里山通信)

2022-05-27 | アウトドア・ネイチャーフォト
 妻女山山系は昆虫の季節到来。色々な昆虫たちが現れていました。希少な昆虫もいれば、ちょっと危険な昆虫もいます。春とは違う花も咲きます。雨上がりには粘菌も出てきます。里山は一年中ありとあらゆることを観ることで、その全貌が分かるのです。相互連関、共生関係を知ることも大事です。そこそこの知識に加えて好奇心と観察が一番の肝。なので同じ場所に何度も通うことが非常に重要なのです。

 ニガナで吸蜜するウスバシロチョウ。食草のシロヤブケマンの群生地が増えたため、妻女山山系のあちこちで見られるようになりました。この時期、彼らの天敵はジョロウグモなど。蜘蛛の巣に引っかかって絶命する個体も少なくありません。

 ウスバシロチョウを撮影していたら、隣にドクガの幼虫が。この時期、山仕事や山菜採りなどをする時は、暑くても必ず長袖を着て手袋をします。ドクガの見えない毒毛に触れたら、2,3週間は痛みが続きます。ヤブ蚊もそろそろ出てきます。クロメマトイも五月蝿いですね。しかし、それ以上に森の中にいると癒やされるのです。自然対自分ではなく、自分も自然の一部なのだと思えるようになります。

 翅を閉じて吸蜜中のウスバシロチョウ。右は別の個体ですが、羽を閉じている時は簡単につかめます。見るとスフラギス(交尾後付属物)がついているメスでした。オスは交尾をすると、そのメスにスフラギスという貞操帯の様なものをつけます。他のオスと交尾ができないようにするためです。

 タチツボとかヒナとか上になにもつかないスミレ(菫)。妻女山では最後に咲くスミレです。

 ヤブジラミの花で吸蜜中のミナミヒメヒラタアブ。撮影よりも見つけるのが非常に困難な昆虫です。体長が10ミリに満たないサイズなので、その気になって探さないと目に入りません。毎年出現する生息地を知っているので撮影できるのです。こんな小さな命も宇宙船地球号の大事な乗組員なのです。

 コジャノメ。人の気配に敏感なのでなかなか撮影させてくれません。そっと後から忍び寄って撮影。日陰を好む蝶です。地上付近をヒョイヒョイと飛び回ります。

 ガマズミの花には色々な昆虫が吸蜜に集まっています。トラフシジミにシロテンハナムグリ(白点花潜)とシラホシハナムグリ(白星花潜)かな。この二つは見分けが難しい。もっと近づきたいのですが、手前に深い溝があるので不可能です。残念。しかし、改めて見ると大きさからこれはコアオハナムグリですね。

 ジョウカイボン(浄海坊)。この時期あちこちで見られます。甲虫なので飛ぶのが下手で、近くなら飛んでいるのを手で捕まえられそうです。花の蜜や小昆虫を餌にします。時には自分より大きな蛾も捕らえます。

 雨上がりなので粘菌(変形菌)のマメホコリも見られました。右はまもなく胞子を飛ばし始めるかもしれません。
妻女山は貝母だけではないのです。雨上がりには粘菌が出現。かの南方熊楠が夢中になり、中国の歴代皇帝が求めた不老不死の薬?(妻女山里山通信):粘菌リンクもご覧ください。

 ミスジシリアゲ。シリアゲムシ目シリアゲムシ科。死んだ昆虫の体液などを吸います。2億5000万年前のベルム期から生息していたシリアゲムシ目に属する非常に起源の古い昆虫なのです。

 コミスジ(小三條)。これも人の気配に非常に敏感でなかなか撮影せてくれません。幼虫の食草はクズ、ヤマフジ、ニセアカシアなどのマメ科の植物です。作年の5月には交尾中を撮影しました。

 キツネアザミ(狐薊)。アザミとつきますが、アザミではなくキク科キツネアザミ属の2年草です。消炎などの薬草です。週末は、妻女山SDPの作業で貝母の球根の移植と有害帰化植物の除去作業をしますが、虫対策と暑さ対策をしっかりしないといけません。

 妻女山展望台から陣場平山の眺め。中腹に集落が見えます。手前は茶臼山から北に続く尾根。手前は篠ノ井の市街地。千曲川では、台風19号で堆積した土砂の運び出し作業が続いています。非常にいい土質なのでいい値段で売れるのです。もっともこの上流で大量の農地とかの土砂が失われた結果なのですが。治山治水はお金も手間もかかるのです。全国の里山保全も多くがボランティアの手で行われているのが現状です。ちなみにボランティアというのは無償奉仕と思われていますが間違いです。世界では有償ボランティアも普通です。そもそもボランティアは無償奉仕という意味ではありません。デモクラシー。実は民主政治という政治手法なのに、民主主義と誤訳(わざと?)したことと同じぐらい酷いものです。空気が湿り気を帯びてきました。午後にはポツポツと。豪雨にならなければいいなと思いながら下山しました。

 『信州の里山トレッキング 東北信編』川辺書林(税込1728円)が好評発売中です。郷土史研究家でもあるので、その山の歴史も記しています。地形図掲載は本書だけ。立ち寄り温泉も。詳細は、『信州の里山トレッキング 東北信編』は、こんな楽しい本です(妻女山里山通信)をご覧ください。Amazonでも買えます。でも、できれば地元の書店さんを元気にして欲しいです。パノラマ写真、マクロ写真など668点の豊富な写真と自然、歴史、雑学がテンコ盛り。分かりやすいと評判のガイドマップも自作です。『真田丸』関連の山もたくさん収録。

本の概要は、こちらの記事を御覧ください

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