「東洋経済オンライン」の「野口悠紀雄の「経済危機後の大転換・ニッポンの選択」で 「かつて世界を制覇した日本半導体産業の凋落」と言う概要次のような記事を見つけました。
90年における日本のトップ3社の半導体のシェアは世界の約3割のシェアを占めていたが、現在のトップ3社は、インテル、サムスン電子、テキサスインスツルメントだ。
半導体産業における敗北で最初に注意すべきは、(90年代に米国紙が絶賛した)日本企業の特性(短期利益に左右されない、など)80年代にはプラスに作用したその特性が、下記のように技術体系と世界経済が大きな変化をした90年代からは逆向きに作用したとしか考えようがない。
日本企業の長所は短期的利益に左右されないことだと言われた。それはその通りなのだが、実は的確な長期的視点を持っていたわけでもなかった。単に市場の条件変化に反応しないというだけのことだったのだ。
先端的製品と低価格製品の両面で敗北
80年代から90年代にかけて、ITの登場と言う大きな技術体系の変化が生じた。そして大型コンピュータからPC(パソコン)への変化であり、いま一つは電話からインターネットへの変化だ。
日本が覇権をとったDRAMは、信頼性の高い製品が求められ大型コンピュータ用のものだ。ところがPC用のDRAMの需要が増えた。大型コンピュータ用ほどの信頼性は要求されず、その代わりに、価格が安いことが求められた。
この変化が生じたとき、日本は韓国、台湾のメーカーに太刀打ちできなくなったのだ。 これらの国・地域の賃金は日本より低く、それゆえ低価格の製品を作ることができる。 サムスンは、それに加えて、巨額の設備投資によって製造単価を引き下げた。
MPU(PCで用いられる超小型演算処理装置)は、半導体のチップだが、そこに書き込まれている計算回路の設計が重要な意味を持つ。インテルは、すでに80年代にDRAMから撤退し、MPUに特化した。
日本は低価格製品が必要となったDRAMで新興国に敗れ、ソフトウエアの比重が高いMPUでアメリカに敗れた。結局、日本が強かったのは、基本的な技術が確立されている高性能製品を、効率よく生産することだったのだ。つまり日本は、ブルーカラー的製造工程には強いが、ホワイトカラー的な設計過程では弱いのである。
ところで、以上で述べたことは、半導体産業に限ったことではない。同じことが、今後自動車について起こる可能性がある。従来のガソリン車やハイブリッド車は機械的に複雑な製品であり、こうした製品の製造過程での「すり合わせ」に日本は強い。しかし、今後主流になる可能性がある電気自動車は、バッテリーなど個々の部品には先端技術が必要とされるが、機械的には単純な製品なのである。そして個々の部品に関しては、シリコンバレーなどのベンチャー企業が強い。したがって、MPUでインテルに負けたのとの同じことが、自動車でも起こる可能性がある。
他方で、新興国での需要は、低価格車が中心だ。この面では、PC用のDRAMで韓国や台湾に負けたように、中国の自動車メーカーに負ける可能性がある。
こうして、技術的にきわめて高度なものと、廉価品の大量生産という二つの分野に自動車が分離する可能性がある。そうなれば、自動車産業が半導体の二の舞になる可能性は、決して否定できない。
ソフトウエア産業に弱い日本
もう少し視野を広げてIT一般を見ると、ソフトウエア産業の比重の増加は、きわめて顕著だ。そして、この分野で日本は大きく立ち遅れた。
PCのOS(基本ソフト)に関して、マイクロソフトのウインドウズが標準的なものとして確立された。
インターネット面では、日本では、マイクロソフト、ヤフー、グーグル、アマゾンのようにソフトウエアに特化した先端的企業は、結局のところ現われなかった。こうして日本は、ITにおいて決定的な遅れをとることになったのである。
[私の意見]
・ウインドウズと言えば直ぐ日本製OSのTRONを思い出します。
TRONの構想が発表され日本政府がその積極的な推進を決めた時、日米貿易摩擦が過熱する中、米国からスーパー301条の適用の示唆され、政府とTRONN開発に参加した大手メーカーを及び腰になったそうです。
マイクロソフト社はTRON開発に対して米国政府に働きかけたと言われていましすし、Windowsの技術を一般に公開と言う戦略で世界的に独占、そのOSを利用したソフトのソフト普及で、少なくともPCではその存在を揺るぎないものにしてしまいました。
現在、電話や冷蔵庫などの家電,携帯電話で使われているTRONが、仮にPCで普及したとしても、世界でどれだけのシェア確保するかは判りませんが、少なくともTRON開発からの撤退が、日本の学者や技術者のソフト開発の意欲を減退させたことは大きいと思います。
あの時政府がもう少し頑張っていればと思うのですが。
・電気自動車の開発の報道を見て、その日本に対する影響の大きさを感じたのは私だけではないと思います。
つまり車輪周り以外は余り技術の要らない部品、運転のためのブラックボックス上のソフトが詰まった電子部品、そしてこれも電池さえ何処からか手に入れれば、特に優れた性能の要らない車なら、プラモデルのように誰でも作れるからです。
著者の指摘するように、これからの自動車メーカーはどの方向を目指して行くのか、非常に難しい決断に迫られるでしょう。
・政府の役割
著者は日本企業の半導体敗退の原因は「実は的確な長期的視点を持っていたわけでもなかった。単に市場の条件変化に反応しなかった」と言っています。
私は米国の住宅バブル崩壊のとき、日本の金融機関だけは少ない被害で済んだのに、瀬製造業は大きな被害を受け、大量のリストラを産み、大きな社会現象になったことの反省として、政府が何らかの指導があれば、製造業も幾らかは被害を押さえられたかも知れないと書きました。
一般企業は著者の指摘するように、狭く短期的な視野で道を誤ることもあるいます。
この様な問題に対しても、政府が日本社会に大きな影響を及ぼさないように、第三者的な立場で何らかに指導をすること。
その為に私が時々書く、誰でもその情報を共有できる、超党派のシンクタンクを設立を考えて貰いたいと思うのですが。
何故なら経営者は皆優秀とは限らず、中にはというか、大半は凡庸な人達が多いと思うからです。
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