波風立男氏の生活と意見

老人暮らしのトキドキ絵日記

『豆腐屋の四季』を読む

2025年01月20日 | 読書

いつか読みたいと思っていた『豆腐屋の四季』(松下竜一著:講談社)読み終わる。家業豆腐屋の後継者として厳しい労働に従事しながら、新聞投稿の短歌を軸に1968年自費出版(1969年に講談社刊)した日々の暮らしと思いを綴った歌文集。1969~1970年にTVドラマになり、波風氏の母親が何度も涙したと言っていたが見ていない。加藤健一が主役だとずうっと思っていたが今回緒形拳だと知った。
少し前に本好きの知人が「青春の神話」みたいにこの本のことを話していた。1937年生まれ(享年67歳)の松下氏と彼が同級生ぐらいなんだと思った。

 

生きるために働くのは何と過酷なんだろう、その中で短歌を作り、家族の面倒を見て、恋愛を成就させる感性と努力と運を掴む強さに驚く。この本の書かれた時代が、波風氏の中学から高校時代と重なり、自分の学生時代がそれなりに色々あっても気楽だったと思った。松下氏が「自分が断念せざるを得なかった大学生などに負けてなるものか」という気持ちを痛いほど思った。
心惹かれたのは、高校卒業を待って結婚した若妻のこと。よくまあ嫁ぐことになったものだ。それなのに、時代の制約だろうが家父長的な束縛が気になった。今なら間違いなく出ていかれるね。それと自分を妙に卑下したり自信一杯になるのは若さかな。読んでいて面倒だったのは和歌。画文集は気にならないが歌文集は読書リズムを乱す。

読んでよかったと、なぜ思うのか。ずうっと後になっても共感と反発が残るのが未熟でまっすぐな『青春』だと思うが、久しぶりに荒削りの青春文学に出あった感じ。映画『PERFECT  DAYS』がほぼ共感(笑)の世界なのは主人公が自ら選んだ暮らし方で、豆腐屋家業はそれと真逆。外から見ている者の心の置きどころというか安心感が違う。だが、両者とも人生とは何かを落ち着いて考えさせるなあ。清潔感が共通しているからかなあ。


この本は絶版で古本は高価。試しに図書館で聞いたら「大きな活字で読みやすい本」の書棚に。嬉しかった 今年初の読書交流会『ほんのおつきあい』を1月26日(日)14:00~波風宅で。参加費200円、参加希望はメールでお知らせください➜namikaztateo@gmail.com

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