自己肯定観1(第146回)
先日、憲法の授業で映画「誰も知らない」を見た。親になってみて、改めて気づくことがたくさんあった。特に目をひいたのは、引っ越しの際に、子どもたちがおもちゃを片づけている場面。「母親一人の給料で、こんなにたくさんおもちゃや絵本を与えていたのか」と衝撃を受けた。母の子どもたちに対する愛情が、こういう形で描かれていたのだ。
学生が感想で、「この母親の一番の問題は、子どもを育てる能力と覚悟がなかったことじゃなくて、育てられない自分をうけとめ、まわりに助けを求められなかったことじゃないか」と書いてくれた。そう読み取ってくれたことを嬉しく思った。
この国の特性か時代状況の反映か、その立場になった瞬間から完璧を求められる傾向がどこかにある。自分に対しても完璧を求めがちだ。でも、そんなの無理だ。「できない自分」を認め、その「できない分」を頼れる他者を見つけることが「自立」にはきっと必要で、その意味で「自立と共生」はセットなのだと思う。つまり、「共生」という環境があるから、「自立」っぽく見える、という関係性だ。(続)